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045 要注意

「なんだか拍子抜けね。もっと高圧的にくるのかと思ったけど……」


 ルイーゼが去り行く男たちを見ながら首を傾げる。


「ほんとにあいつらが人殺しなの?」

「あくまで僕がそう感じたのと、そういう噂があるってだけだよ」

「ふーん……」


 僕はボス部屋の反対側にある白いぼんやりとした明かりを眺める。松明の明かりじゃないね。何の明かりだろう?


 その明かりに照らされている人影は2つ。先程来た2人の他に2人居るようだ。全部で4人のパーティかな。人数の上ではこちらが有利だけど、仕掛けてくるかな?


「なににしても注意は必要ですね。この場合、ファーストアタックを決めた方が占有権を得るという判断でよいのでしょうか?」

「それでいいと思うよ」


 まぁどっちの方が早かったって、言い争いになる場合が多いんだけどね。


「つまり早い者勝ちね! 分かりやすくていいわ!」

「釣りはあーしにお任せってね!」


 ルイーゼとマルギットはやる気満々だ。目をキラキラさせて獲物を探している。冒険者の中にはこういう競争事を好む人が多いと聞いたことがあるけど、2人もそうなのかもしれない。どことなく楽しそうなワクワクしてる感じがする。


 ただ、今回は相手に黒い噂が付きまとっている。十分に警戒しないと。


「相手は全員クロスボウ、最低でも弓は持ってると思う」


 順当にファーストアタックを狙うなら、遠距離攻撃手段が欲しい。魔法では遅い。弓かクロスボウがいいけど……弓だとずっと弓を引いて構えているのは大変だ。やっぱりクロスボウが適任だと思う。


 相手は見た目30くらいのベテラン冒険者に見えた。釣り勝つのに必要なことくらい熟知しているだろう。おそらく4人全員が遠距離攻撃手段を持っているはずだ。それらがコボルトキングに向けられるならいいけど……。


「相手が近くに居ないからって油断しないようにね。いつ矢が飛んでくるか分からないから」



 ◇



「そろそろか……」


 時計を見て、知らず知らずのうちに口から零ぼす。そろそろだ。ようやくコボルトキングがポップする時間になる。広いボス部屋の反対にはオレンジの明かりに照らされた人影が見える。


 結局、あの後も客は帰らなかった。また面倒事になったな。


 あの金髪の女の自信に満ちた顔を思い出すとイライラとしてくる。よほど自分のギフトに自信があるのだろう。あの若さでレベル3ダンジョンの最深部まで来たんだ。実力もあるのだろう。クズギフトを貰ってレベル3ダンジョンを攻略するのがやっとのオレたちとは違う。あいつらはきっともっと上に行ける奴らだ。そんなに実力があるなら、わざわざここに来なくても、他に稼げる場所なんていくらでもあるだろうに。なぜオレたちの縄張りを荒らすんだ。お互い不幸にしかならないってのに。クソが。


「早く湧かねぇかなぁ。もう待ちきれねぇぜ」


 ハンスが涎を垂らさんばかりに口を歪めて言う。こいつが待っているのはコボルトキングではなく、女を犯す瞬間だろう。たまにこいつの単純さが羨ましくなるな。


「そんなにイイ女だったのか?」

「おう! もうこんなだぜ? こんな!」


 ハンスが自分の胸の前で大きく丸を描く。こいつの性癖など知りたくもなかったが、ハンスは巨乳好きだな。しかも、泣き叫ぶ女を犯すのが好きなサディスト。こいつに抱かれた後の女は、抱く気が失せるのが難点だ。散々顔を殴るからな。どんな美人も肉塊に変えちまう。あのドレスを着た滅多に見ないレベルの美人を勿体無いと思うが、犯した後はどうせ殺すのだからあんまり変わらんか。


「いいねぇ。オレも早く犯してぇ」

「オレは小さい方がいい……」

「安心しろって。小せぇのも居たからよ」


 ゲラゲラ品の無い仲間たちの猥談には呆れてくるな。だが、まぁたしかに戦闘後のご褒美があると思えばやる気も上がるか。


「そろそろ構えとけよ」

「うぃーす」


 ハンスたちがクロスボウを構える。


「いつものでいくのか?」

「ああ」


 ハンスの問いに頷いて返してやる。いつもの。敢えてライバルパーティにコボルトキングを譲り、奴らがコボルトキングとの戦闘中にクロスボウで奇襲する必勝パターン。奴らはコボルトキングとオレたち、両方をいっぺんに相手しないといけなくなる。


 あのパーティもここまで来たってことは、それなりに腕は立つはずだ。ここはレベル3ダンジョンの最深部。マグレやラッキーで来れるほど甘い場所じゃない。もしかしたら、正面からぶつかったらオレたちより強いかもしれない。だから頭を使う。


 弱いと評判のコボルトキングだが、腐ってもレベル3ダンジョンのボスだ。道中のコボルトよりは強い。奴らも倒すのに時間がかかるはずだ。コボルトキングとオレたちで奴らを挟み撃ちにできれば、普通に戦うより楽に倒せる。


「とりあえず男は殺して、女は生け捕りでいいだろ?」

「4人も生け捕りできるかよ。あのドレス着た女は殺せ」

「あの女はオレのだぜ!?」


 ハンス、お前のじゃねぇよ。


「ありゃマジックキャスターだ。生かしといたら危ねぇだろ?」

「んなもん、口を押さえちまえばいいだけだろ?」


 ハンスの言う通り、マジックキャスターなんて口を塞いじまえば、ただの非力な女だ。下手な前衛よりもよっぽど楽な相手だ。しかし……。


「マジックキャスターなんて怖くて生かしておけるかよ。絶対に殺せ」


 無いとは思うが、無詠唱ができる凄腕かもしれないからな。ここは慎重に行動した方がいいだろう。


「そんなぁー…」


 ハンスが情けない声を出すが当然無視する。


「あと黒い格好した男が居る。そいつも確実に殺せ」


 あのドレスを着た女と黒い恰好の男、あの2人は要注意だ。


「ありゃポーターだろ? 男を殺すのはいいけどよぉ……はぁ……もったいねぇ……」


 ハンスのボヤキなど心底どうでもいい。大事なのは確実に仕留めることだ。こいつらは感覚がマヒしてるかもしれないが、危ない橋を渡っていることに変わりはない。慎重すぎるくらいで丁度良い。


 その後、誰が誰を狙うか決めた。狙いが被ったら意味が無いからな。ハンスたちには男2人とドレスを着た女を撃たせる。オレは、ボスとの戦闘中に動きが良い奴を仕留める。これで4対6の人数不利から4対2の優勢になる。残った女2人は生け捕りにしてお楽しみ用だ。


「外すなよ」

「誰にもの言ってやがる」

「てめぇこそ、しくじんなよ」

「……当てる」

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パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
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