表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/84

042 友だち

 イザベル、リリーから求婚?されて、僕は舞い上がっていた。2人とも思わず振り返ってしまうほどの美少女だ。そんな美少女たちから求婚される日がくるなんて……。僕に興味を持ってもらえてるだけで、仲間として認めてもらえたことだけでも嬉しいのに……。


 でも、2人と会うのは今日で2回目だ。いくらなんでも、さすがに気が早いということで、まずはお友だちからということになった。そして、お友だちなら私たちともなりなさいよということで、ルイーゼ、マルギット、ラインハルトとともお友だちになった。


 なんだか改まってお友だちになろうなんて、少し心がムズムズする恥ずかしさがあった。まぁ、元々命を預け合うパーティメンバーなんだから、既にお友だち以上の関係と言えるのかもしれないけど、それはだけではなんだかビジネスパートナーという感じがして心が通ってない気がする。僕はルイーゼたちのお友だちの輪の中に入れてもらえて、素直にとても嬉しかった。


 僕に、また友だちと呼べる存在ができるなんて、思いもしなかったな。僕はアンナたちの影響か、いつの間にか自分は人に劣る存在であると思い込んでいた。こんな僕に友だちなんてできるわけがないとどこかで諦めていたところがあった。そんな僕の知らないうちに、無意識にできてしまった心の殻を壊してくれたルイーゼたちには、どう感謝したらいいのか分からないくらいだ。


「ここが下層? あんまり変わり映えしないわねー」


 ルイーゼの呟きに、僕は幸せな気分から現実へと引き戻される。松明に照らされた剝き出しの土壁、湿り気を帯びた冷たい地下の土臭い空気。そうだった。今はダンジョンの攻略中だった。ここが安地だからって、気の抜き過ぎはよくないよね。


 無数の冒険者たちによって踏み均されたスロープのような下り坂を下りると、『コボルト洞窟』の下層へとたどり着く。ここから先は、レベル3相当。ここからがレベル3ダンジョン『コボルト洞窟』の本番だ。たぶん大丈夫だと思うけど、気を引き締めないといけない。


「まずは空いている安地を探しましょうか」

「たぶん、その必要は無いよ」


 僕はラインハルトの言葉をやんわりと否定する。


「それはなぜでしょう?上層と中層はモンスターの取り合いをしているほど、どこもかしこも混んでいましたが……」

「下層はモンスターを倒すよりダンジョンボスを倒す方が人気なんだよ」


 『コボルト洞窟』のダンジョンボスであるコボルトキングは、実はそんなに強くない。下層で狩りができる実力のあるパーティなら難無く倒せてしまう。


 むしろ、一度にたくさんのモンスターに襲われる“リンク”の危険がある下層での狩りの方が、よほどリスクが高いくらいだ。


 そんなちょっと残念な感じが漂うコボルトキングだけど、人気な理由はただ弱いからだけじゃない。


「コボルトキングは本当に極稀にだけど、金鉱石をドロップするんだ」

「金!?」


 ルイーゼが目をまん丸にして大げさに驚く。かわいい。けっこう有名な話なんだけど、ルイーゼは知らなかったみたいだ。


「でも、昨日集めた情報にそんなの無かったわよ?」


 昨日、一緒に情報収集したルイーゼが、首をコテンと傾けて疑問の声を上げる。たしかに、昨日集めた情報の中には無かったけど、昨日一日だけではなく、長い間情報収集をしていた僕は知っている。


「たしかに、そのようなお話があると聞いた覚えがあります。ですが、金鉱石をドロップするという話自体、可能性の低い話でしたから。それに、話自体がガセだという情報もありましたし、ダンジョンの攻略には直接関係無い情報でしたので、無駄に期待させることはないと黙っていました」


 どうやらラインハルトは知っていたらしい。さすが、『百華繚乱(仮)』の情報収集担当だ。


「言ってよ! そういうワクワクする話は!」

「そーだ! そーだ!」

「ダンジョンの攻略には関係無いですし、起きる可能性の低い不確かな情報ですよ?」

「そこにロマンがあるんじゃない!」


 ルイーゼとマルギットに詰め寄られ、ラインハルトは処置無しとばかりに肩を竦めてみせる。ルイーゼとマルギットはロマンを求め、ラインハルトは現実主義、あとの2人も呆れた顔をしているから現実主義っぽいね。


「一応補足しておくと、金鉱石をドロップするのは本当だよ」

「やっぱり!」

「いーじゃん!」


 僕の言葉にルイーゼとマルギットが目を輝かせる。


「そうなんですか? 私が情報収集したところ、どうやらガセの方が有力でしたが……」

「ガセネタってことにしたい人たちが居るんだよ。たぶん、今日も居るんじゃないかな?」


 ダンジョンのボスであるコボルトキングが、金鉱石をドロップするという情報をガセネタにしたい人たち。それは、実際にコボルトキングを狩って金鉱石を狙っている人たちだ。


 ダンジョンのボスは、普通のモンスターとは違い、一度倒すとリポップまでに長い時間がかかるのが一般的だ。その結果、コボルトキングのようなドロップアイテムの良いダンジョンでは、ダンジョンボスの奪い合いが起きることになる。冒険者に譲り合いの心とか、順番に並ぶなんて行儀の良いマネを期待してはいけない。


 ただ、冒険者にも最低限のルール、暗黙の了解が存在する。それが、一番最初に攻撃を当てた者が自分の獲物にできるというファーストアタック呼ばれるルールだ。つまりは早い者勝ちである。なんともシンプルで分かりやすいね。

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけ簡単です。

どうか作者を応援してやってください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓こちらが新作連載小説になります。よろしくお願いします。↓
パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ