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037 コボルト洞窟②

 『コボルト洞窟』中層の一角に、ようやくスペースを確保できた僕たちは、ここでコボルトの討伐を試みることにした。ルイーゼたちにとって、初めてのレベル2相当ダンジョンのモンスターとの対戦だ。


 僕が指名できる【勇者】の数は2人。ルイーゼの他にもう1人指名できる。正直、過剰戦力だと思うけど、もう1人【勇者】に指名しておこうということになった。話し合いの結果、2人目の【勇者】に選ばれたのは……。


「うっ…!? これは…!?」


 ラインハルトだ。ラインハルトが戸惑いの声を上げて己の両手を見ている。そして両の拳を握り、僕を見た。


「これが、【勇者】の力なんですね?」


 ラインハルトが、まるで何かを決意したような真剣な顔で僕を見る。そんな顔で見られると、僕にそっちの気は無いけど、ちょっとムズムズする。


 それにしても、ラインハルトは勇者になるのは二度目のはずなのに、まるで初めてのような反応をする。ラインハルトって意外と役者だなぁ。


「そうだよ。今、君を【勇者】に指名した」

「たいへんな力なのだろうと予想していましたが……まさか、これほどとは…!」


 感嘆の表情を浮かべるラインハルトに、なぜかルイーゼが得意げに言う。


「すごいでしょ?」

「すごいなんてものではありません。この無限にも感じられる力は……あぁ、危険です……私が私でなくなってしまいそうなほどの……圧倒的全能感ッ…!」

「すごいよねー。お腹の奥からどんどん力が溢れてくる感じで。お腹の奥をずっと消えない炎が舐めてるみたいに気持ちが良いの」


 そう言って下腹部を撫でるルイーゼの顔にはサッと朱が走り、まだ幼さの残る顔には不釣り合いなほどの艶があった。思わず見惚れてしまうと、ルイーゼと目が合う。ルイーゼは僕と目が合うと、バチコーンとウィンクを決めてみせた。


「えへへ……」


 恥ずかしそうに()()()()ルイーゼかわいい!


「【勇者】ねー。あーしも興味はあるかなー」

「そうね。そこまで言われると、どんなものなのか興味深いわね」

「私、も…!」


 マルギット、イザベル、リリーも【勇者】の力に興味があるらしい。今回は直接モンスターと殴り合う前衛陣を強化した方が良いだろうとルイーゼとラインハルトを【勇者】にしたけど、彼女たちにも【勇者】になれるチャンスがあってもいいと思う。


「ふぅー、ふぅー、はぁー…。では、狩りを始めましょうか」

「そうね」


 荒い息を吐くラインハルトの言葉にルイーゼが頷く。


「じゃあ、始めるわよ!」

「「「「「おー!」」」」」


 まぁ、そんなに気合を入れなくても楽勝だと思うけどね。



 ◇



「つまんなーい!」


 果たして、僕の予想は的中した。ルイーゼとラインハルトの2人は、一太刀でコボルトを次々と仕留め、周囲のコボルトを殲滅した。今はコボルトのリポップ待ちだ。


「たしかに、手応えがありませんでしたね」

「私なんてまだ1回も魔法を使ってないわよ」

「ルイルイとハルハル強すぎっしょ」

「強、い…!」


 やっぱり【勇者】が2人もなんて、こんな低レベルダンジョンには過剰な戦力だったね。


「さて、どうしましょうか? このまま待っているのも手ですが……」


 通常は、周辺のモンスターを殲滅したら次の狩場へと移動する。でも、今回はダンジョンに人が多過ぎる。おそらく、次の狩場にも人が居るだろう。また狩場を探す苦労を思えば、一度確保できた狩場を手放すのは愚行かもしれない。このまま敵がリポップするのを待つ選択肢は、十分に現実的だ。


「このまま下層に行ってしまうという手もあります」

「へぇー」


 いつも慎重なラインハルトには珍しく、強気な発言だった。今日の冒険の目的は、ここ『コボルト洞窟』の中層でコボルトを狩ることだ。自分たちの力がレベル2相当ダンジョンで通用するかどうか確認するためである。そういう意味では、今回はもう冒険の目標は達成している。焦る必要は無い。


「ようやくこの体にも慣れてきました。今の私たちなら下層でも通用すると思います」


 そう言ってグッとこぶしを握ってみせるラインハルト。


「いいじゃない! やってみましょ! 元々そのつもりだったんだし!」


 そう言って強気な笑顔を見せるルイーゼ。かわいい。


 そんなルイーゼに僕たちは頷いて返す。中層で余裕があるなら下層にも挑戦してみるのも予定通りだ。そのために今日は『コボルト洞窟』に来たと言っても過言ではない。上層から下層まで、レベル1からレベル3まで選んで挑戦できる数少ないレベル可変ダンジョンの1つ。自分たちの実力を試すにはうってつけのダンジョンだ。『コボルト洞窟』がこんなにも人気なのは、ちゃんと訳があるのである。

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パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
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