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85 拐われたアウロラ ①

神厩舎から王宮へ戻る途中、王太子妃の宮殿から煙が上がっているのが見えた。

陛下へ伝言を走らせると共に、自身は宮殿へ駆けつける。

宮殿の前は騎士達で騒然としていたが、既に事は決着していたのであろう、侵入者と思われる者の遺体が運び出されていた。

そして王太子の姿を確認すると、慌てることなく、1人の騎士が報告に近づいてきた。


「ご報告致します。3名が侵入しておりました。戦闘になり、無事捕縛しましたが、自決しました。煙に関しては撹乱の為だと思われますが、特に何かが消失する等の被害は確認出来ておりません。」

「妃は無事か?」

「はい、宮殿内の居室におられます。ただ侵入者の1人は王太子妃殿下がご存知の者だったようで、我々がその者を捕らえようとするのを阻まれていらっしゃいます。王太子妃殿下は、王太子殿下を呼んで欲しいと申されておられます。」


王太子はアリーチェの居室に向かう。

扉の外には複数の騎士が臨戦態勢で中を窺っていた。


「アリーチェ、入るぞ。」


躊躇なく部屋に入る王太子に周りは焦りを見せるが、お構い無しだった。


「やはりお前か。」


ため息混じりにそう話す王太子の前には王太子妃であるアリーチェが、ロダンを背に庇うような形で立っていた。


「取り敢えず座るんだ。君は身籠っているだろう。お子に何かあってはいけない。」


王太子はそう言うと、騎士に指示を出し、椅子を用意させる。


「それでどういう事だ?」


王太子は厳しい口調で問いただす。


「オーウェン····違うのです····。」


いつもは気の強いアリーチェだったが、今回の事は言い逃れるのは難しいと思ってか、声が震えていた。


「先程の死体とロダン、君の服装は第3騎士団の隊服だね。何処から調達したのか知らないが。それにしても、いとも簡単に侵入を許すなど、お前達は何をしていた?」


警備にあたっていた騎士達に、冷たい言葉で問う。


「王太子殿下、こちらを。」


1人の騎士が進み出て、王太子に何かを差し出す。

見るとそれはトルーソー家の紋章が入った金板だった。

そのトルーソー家の紋章の上には王家の印が型押しされている。これにより王城の出入りが許される許可証の役割を果たす。


「なるほど。これで怪しまれず入城したか。お前達が持っているという事は偽造された物だろう?良くできているな。見本が手元にないとこれだけ精巧に作ることは出来ないだろう。という事は予め本物が手元にある時に作らせておいたか。そんな事をするのはジョセフぐらいだろう。それでロダン、侵入したのはお前達だけではないのだろう?他の仲間は何処にいる?」

「····私をここに連れてきたのはジョセフ·トルーソーと名乗る人物とルイーズという女。他にも仲間がいましたが、名前は知りません。手練れの者達は『狩人』と呼ばれている組織の者達で、雇ったと言っていました。彼等の狙いはアリーチェ王女殿下の救出とトカゲの古代種の捕獲だと話していました。」

「なるほどね。やはり古代種が狙われているというのは本当だったか。それで、何故君は加担したのかな?」

「アリーチェ王女殿下が薬を盛られ体調を崩していると。またお子を出産した後は殺されると聞き、自分の目で確認しようと思いました。」

「そう。私達を信用していなかったという事だね。さぁ、困ったよ。アリーチェ、ロダンをどう処分しようか?」

「オーウェン王太子殿下、ここに来て、彼の侵入者達を倒したのは、このロダンなのです。彼は間違えなかった。どうかお慈悲を。」


アリーチェは泣きそうになりながら訴える。


「事情は分かったが、処遇についてはこちらの決定に従ってもらう。アリーチェは私の宮殿に。ロダン·スターナは一旦牢へ連れていけ。」

「オーウェンお願い!ロダンに酷いことしないで!」

「落ち着けアリーチェ。まだ残りの侵入者達が捕まっていない。話はその後だ。 全ての者に伝えよ!トルーソー家の金板を使用した者は全て捕らえよ!また全ての城門を閉鎖する。急げ!」


王太子の掛け声で騎士が一斉に動き出す。

王太子はそのまま報告の為、陛下の執務室に向かおうとした。


その時····


胸に突然痛みが走り、思わず立ち止まる。


「?!」


「王太子殿下、如何されましたか?」


胸を押さえ、立ち止まった王太子に、護衛の騎士は心配して声を掛ける。


「·····いや。ディランに古代種を保護するように指示を出したが、どうなっているのか確認しろ。それから研究棟の者達は無事かも確認してくれ。急げ!」


数名の騎士が確認へ向かう。


「嫌な予感がするな·····。」


何かを感じてか、王太子の顔色は悪い。




「王太子よ。」


聞き慣れない、男性の美声が頭上から聞こえた。

見上げると白いカラスの様な鳥が舞い降りようとしている。

護衛の騎士が身構えるが、王太子はそれを制し、同時に腕を差し出す。

鳥はその腕に留まる。


「君は『ムク様』だね。部下に保護するよう指示したはずだが、どうしてここに?」

「温室で襲われた。テンセイバの元に逃げたが、そこも戦闘中だった故、おそらくアウロラ達は今隠れているであろう。急ぎ救出せよ。歴史を繰り返すな。」


「歴史か····承知した。」


そう応えた王太子の目は険しかった。


◇◇◇


「ア、アウロラさん!しっかりして下さい!」


ルイーズに胸を刺され倒れたアウロラの元にマシューが駆け寄る。


「ルイーズ、何て事を·····。」


ジョセフもルイーズの突然の行動に戸惑いを見せる。


「ふふふ。さぁ、出てきてトカゲさん。あなたのご主人様が死んでしまいますわよ。」


血の付いた刃物を手に持ち、微笑むルイーズの姿は異様だ。


「ルイーズ····こんな事をするのは、ルイーズじゃない!人を殺すなんて····こんなこと無理だ!」


フードを被っているもう1人が震える声でそう叫ぶ。


「マイケル落ち着いて。直ぐ終わるから。」


ルイーズが宥めるように言葉をかける。

マシューはアウロラの胸の衣服の破れに、取り出したハンカチを押し当て止血を試みる。


「アウロラさん、しっかり!」


動揺でマシューの身体が震える。

ルイーズは何か面白いものを見ているかの様に、笑みを浮かべたままだ。


その時、アウロラの身体に手を掛ける様にした体勢で、突然ナナちゃんが姿を現した。

そしてマシューの手を押し退け、自身の長い舌で傷口をなめる。


「ふふ、ほらね。見て、ジョセフ、マイケル。やっぱり姿を現したわ。」


ルイーズははしゃぎながら、再び刃物を構えアウロラ達に近づく。


「やめなさい!」「ルイーズ、もうやめろ!」


マシューはアウロラ達を庇うように身体に覆い被さり、ジョセフはルイーズを止めようと手を伸ばす。

ジョセフの手はルイーズを掴めず、空をきる。

ルイーズの振り上げた刃物はマシューの肩を斬りつけた。


「ギャアアアアアアアアアアアア!!」


それは耳をつんざく様な叫び声だった。

音の振動で思わず身体が後ずさる。

見ると目の前のナナちゃんの身体が膨らんだ様に見えた。


「「「なっっ?!」」」


目の前で何が起こっているか分からず、皆動けずにいる。


ナナちゃん····ナナイロオオトカゲの身体は膨らみ続け巨大化していく。

気づけば足の短い馬ほどの大きさになっていた。

元々あって隠れていたのか、耳が立ち上がり、翼が生えていた。


「これは·····竜····竜だ!」


怒りを表しているのか、鱗は真っ赤に染まっていた。

今まで余裕の笑みを浮かべていたルイーズも、恐怖を感じ逃げようとする。

しかしそれを阻止しようと振り回した尻尾に

身体があたり、ルイーズの身体は遠くに飛ばされた。

竜は尚もとどめを差すためか、ルイーズを追いかけて行った。


「ルイーズ!ああ、もう駄目だ····。ジョセフ、逃げよう!」


マイケルはそう言うと、一目散に逃げ出した。


「くそっ!『狩人』ルイーズを救出しろ!撤退だ!」


ジョセフは離れた神厩舎で激闘を繰り広げている『狩人』達に声をかけると、マシューを蹴やり、アウロラを肩に担ぎ逃げ出した。


「待て!アウロラさん!」


マシューも阻止すべく掴みかかるが、斬られた肩の出血のせいか、思うように力が入らずジョセフに振りきられてしまった。


その時、今度は神厩舎から破壊音が響く。

見ると、テンセイバの青い巨体が、すさまじいオーラを纏い飛び出してきた。

近くにいた『狩人』達が襲いかかる。

しかしテンセイバは応戦し、蹴散らしながら倒していく。

その隙にジョセフは隠していた馬にアウロラを乗せ、その場を立ち去った。



読んで下さり有難うございます。

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