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81/112

81 西の国境にて ①

1台の馬車がラトゥナ王国との国境を目指して走っている。

狭い馬車の中では、ジョセフにルイーズがもたれ掛かる様にして座っていた。


「それは本当の話なの?」


ルイーズはジョセフを見上げそう問いかける。


「ああ、私が宰相である父の手伝いで宮廷の執務室に出入りしていたことは知っているだろう?主に書類の仕分けといった簡単な作業だったが、その書類の中で気になるものがあったんだ。」

「気になるもの?」

「ああ、アリーチェ王女に関するものだ。それは王太子妃になる王女の予算と月のスケジュール管理の書類だ。アリーチェ王女は身体が弱く、入宮した後も体調を崩され寝込んでいた。だから定期的に医師の診察を受けている事が記載されていたんだが、内容を見るに、処方された薬の費用が月初にまとめて、毎月同額計上されていた。」

「月初にまとめて?」

「ああ、通常薬なんて、患者の体調を鑑みて、その都度適切な量を処方するものだろう?毎月定額なんて不自然じゃないか。」

「まぁ、そうね。持病でもあるのかしら。」

「そしてその額が驚きだ。まぁ、一月ある程度の大きさの屋敷の使用人を雇って、生活するのに十分な金額だ。」

「そんなに。それでそれはどういう事なの?」

「そのままの意味さ。アリーチェ王女に割り当てられた予算の中から計上されているとするなら、アリーチェ王女に関係した人物が保護されてる可能性が高いという事だ。」

「秘密裏に匿われているという事?何かお金の事以外で根拠はあるの?」

「偶然目に入ったその書類が気になってね。その時調べたんだ。王家から定期的に使者が送られていないかをね。」

「使者?」

「それなりの金額だからね。秘密裏に行動するにしても信頼の置ける者に護衛も付けて向かわせるはずだ。それもある程度決まった日に。調べたら、騎士が数名、月始めにラトゥナ王国に向かっていた。」

「ラトゥナ王国へ?」

「いや、ラトゥナ方向だ。おそらく場所はローヴェル王国国内。ラトゥナとの国境付近に1部王家が所有している土地がある。今はほとんど使われていないが、その場所は王家の狩り場があって、滞在するための離宮もある。おそらくそこに間違いない。」

「誰がいるのかしら?」

「私の見解だが、アリーチェ王女の愛人だろう。」

「愛人ですって?」

「ああ、元々アリーチェ王女にはラトゥナ王国にいた時から、長年仕えている護衛騎士がいるはずなんだ。しかし、ローヴェルの王宮にはその騎士の姿はない。連れて来ていないはずがない。となれば何処にいるのか。」

「愛人だという証拠はあるの?」

「前女王には後継となる子供がなく、代わりに次期女王として、妹の子供であるアリーチェ王女を養子にしたんだ。しかしその翌年、女王は亡くなり、女王の王配が国内で有力貴族のモデルダ侯爵家から王妃を迎えた。その王妃が王子を産んだんだが、どうしても王太子にしたかったらしい。王位継承権のあるアリーチェ王女が邪魔になり、追い出すためにローヴェル王国に嫁がせたんだ。」

「王位継承権を持つ者を追い出すなんて、他の貴族がよく許したわね。」

「モデルダ侯爵家がそれほど力を持っているという事だろう。そんな王女をずっと守ってきた騎士だ。傍にいないはずがない。傍にいないという事は、何か理由があるはずだ。最も考えられるのが、王宮で王女がその男と不適切な関係を持つ事。今、ローヴェル王国に必要なのは、オーウェン王太子とアリーチェ王女が次代の後継を作ること。わざわざ離さねばならない程、王女とその男の関係が深いという事だろう。」

「仮にそこでアリーチェ王女の愛人が匿われていたと分かって、それからどうするの?」

「ラトゥナ側に情報を売るのもいいし、アリーチェ王女との交渉材料に使ってもいい。ルイーズ、トカゲの古代種が欲しいのだろう?その愛人を人質にすれば、十分使えるはずだ。」

「ジョセフ、凄いわ。」


そう言って、ルイーズはジョセフに抱きつく。


「元々この情報は使うつもりでいたからね。既に数名現地に入って、離宮の動向を調べさせている。私達も合流するぞ。」

「ええ、私にも手伝わせてね。」


ルイーズはそう言って、ジョセフに口付けた。


◇◇◇


その日ロダンは、日課となっているラトゥナ王国との国境付近を、2名の護衛騎士と共に視察していた。


「ロダン殿、そろそろ戻りましょう。雨が降りそうです。」

「そうですね。急ぎ戻りましょう。」


最近、この国境付近では、ラトゥナ王国から非公式の使者が頻繁に出入りしていた。

その使者の行き先は、国境付近の有力貴族達。

ロダンが偶然見掛けたのは、王妃の弟であるクリストファー·ソドゥリーの側近の1人だった。

現当主のソドゥリー公爵とは異なり、息子のクリストファーは貴族院のメンバーではあるが、要職にはついていない。

もっぱら王妃の裏の仕事をしていると噂されている人物だ。

そして王位継承権を持っているアリーチェ王女をローヴェル王国に嫁がせるよう、裏で働きかけていた事を知っている。

前女王と血の繋がりの薄い王子を王太子にし、更に王にするには、他国へ嫁いだとは言え、アリーチェ王女は邪魔な存在だ。

おそらくこのローヴェル王国で暗殺を目論むだろう。

もしくは何らかの方法で罪を着せ、処刑させる。

いずれにしろ、ローヴェル王国内で王女が死ねば、その責を負うのはローヴェル王国側だ。

そして私はアリーチェ王女にとっての弱味でしかない。

行動は慎重を期さねば。


ロダンは王家所有の離宮にある、騎士専用の宿泊棟に滞在している。

そこに帰還する途中、1台の馬車が立ち往生しているのを見つけた。

ロダンの護衛についている騎士が先に状況確認に向かう。

馬車の中から出てきた男と二言三言言葉を交わした後、ロダン達の方を振り向き、大丈夫であることを告げる。

ロダンは馬を降り馬車に向かう。

御者は馬車の車輪を確認している。


「いかがされた?」


馬車から降りてきた男に問いかける。


「はい、車輪と馬車を繋ぐ部分に不備があるようです。このまま走ると外れてしまう恐れがあるので取り敢えず御者に応急措置をさせているのですが·····。」


そう語る男は、平民ではない、貴族の風格を持っていた。


「もし宜しければどこか休む場所を教えて頂けないだろうか?連れが体調を崩しています。」


そう言われ、ロダン達は馬車を覗く。


馬車の中にはフード付きのマントを着た女性が座っていた。

彼女はロダン達に気がつくとフードを外し、どこかぎこちない笑みを浮かべる。


ロダン達は彼女のあまりの美しさに一瞬言葉を失う。

それを見ていた男がロダン達に畳み掛ける。


「もしこの辺りに宿がないようでしたら、どうか一晩お助け頂けないでしょうか?」

「すみません、私が体調が悪いばかりに。どうか宜しくお願いします。」


男の言葉を受けて、女性もロダン達に懇願する。


ロダン達の頭の名には、不思議と断るという選択肢が頭の中から消えていた。

連載を始めてから約1年が経ちました。

読んで下さり有難うございます。

これから物語は佳境に入ります。

これからも宜しくお願いします。

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