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77 マーガレットの気持ち そしてルイーズは·····

「ザルダ様、どうしてローラさんの事をルーク様に話されたのですか?これでは私ではなくローラさんに心が動いてしまいます!ローラさんがルーク様に治療した事をお知りになったら、いくら私が尽くしても、目を向けてくれなくなるではないですか!」



マーガレットは涙を浮かべながらザルダに言い募る。


「なぁ、マーガレットよ。いずれ知れる事だろう。逆に話していないことの方が驚きだな。確かにルーク殿はあまり女性に興味がないようだったからなぁ。お前が少しでもルーク殿のお眼鏡にかなえばと思っておったが。あまりに積極的になりすぎると、鬱陶しがられるぞ。」

「ルーク様はお優しいから受け入れてくれます。」


「必死だな·····。まぁいい。それよりわしがここに来たのは、ルーク殿の様子を見るためとそなたを連れていくためだ。」

「連れていく?どこへです?」

「辺境伯様がお呼びだ。」

「辺境伯様が?」

「心当たりがあるだろう?ルイーズという神殿預かりの女の事だ。」

「ルイーズさんですか?どうなさったのですか?」

「勝手に領外へ出た件についてだ。何か知っているのだろう?」

「知っているというか·····私が至らなかったばかりに防ぐことが出来ませんでした。」

「ハッハッハッ、そうか、そう言うか。フィル·スペンサーから聞いた話と違うな。」

「スペンサー様が何を?」

「フィル·スペンサーとルイーズを引き合わせたのがお前だという話だ。密会にも手を貸し、あまつさえ、領外へ出る手引きをした。」

「な·····そんな·····。」

「おかしいと思っておった。フィル·スペンサーはあれで辺境伯様の片腕として忙しい男だ。そうルイーズの事にかまけていられない。ルイーズの側付きメイドのエマの行動を把握し、上手く立ち回るなど、他の男性神官には出来ないこと。手を貸す代わりに、何か取引を持ち掛けられたのか?」


『マーガレットさん、私が邪魔なのでしょう?私なら喜んで追い出されますわ。その為には、ある程度権力を持っている男性と、そうね····私をここから連れ出してくれそうな騎士····いえ、商人がいいかしら。どなたか紹介して下さる?』


マーガレットの頭に、当時のルイーズの言葉が甦る。


「私は·····。」

「辺境伯様が詳しい話を聞かれたいそうだ。残念だなぁ、マーガレット。これではそなたのルーク殿への恋心を応援してやれぬぞ。」


ルーク様·····。

初めてお声掛け頂いた時からずっと傍に居たいと思っていた。

ルイーズを監視する役目を受けて、何とかやり遂げようと思ったけれど、あの女の力は何?

確かにルイーズはとても美しい。

だけどそれだけで、あんなに男性が皆、彼女に惹かれるだなんて。

だけど、ルーク様は違った。

男性神官に、ルイーズに会わせろと詰め寄られたり、暴力を振るわれそうになった時も助けて下さった。

それに神官や騎士達を見ていて分かったが、どうやら心から大事に想っている女性がいる人達は、彼女の魅力に惑わされないらしい。

という事は、ルーク様がルイーズに惹かれないのは、もしかして私の事を·····。

そう思うに至ると、ルイーズの存在が更に恐ろしくなった。

もしかしたら、そのうちルーク様もルイーズに心を奪われるかもしれない·····。

だから私·····。


ザルダの言葉に、マーガレットは何も返せず、ただその場に立ち尽くすしかなかった。


「まぁ、いい。とにかく辺境伯様の所へ行くぞ。わしから言えることは、知っていることを全て正直に話すことだな。」


マーガレットは小さく頷くと、黙ってザルダの後をついて行った。


◇◇◇


「エマ、今月も月のものが重いの。薬をくれるかしら。」

「承知しました。ルイーズ様、手足が冷えておいでではないですか?痛み止めの薬と身体を暖める飲み物をお持ちしましょう。毛布も借りてまいります。」

「エマ、有難う。」


ルイーズは王都に来て暫くすると、体調を崩すことが多くなっていた。

以前に比べ月のものが重くなり、ベッドから起き上がることも容易ではなかった。


「一度お医者様に診て頂いた方がいいのかしら?」

「そうですね。しかし王都に来られて、ジョセフ·トルーソー元伯爵令息と落ち合い、共に行動されていますので、あまり目立たぬようにせねばなりませんね。トルーソー伯爵家は、おそらくジョセフ様に監視をつけているでしょうから。今後はいかがするおつもりですか?」

「ジョセフと落ち合うことになったのは、実はグリフォニア領の神殿にいる時に、商人を通じて手紙を受け取ったの。」

「ルイーズ様と外部の接触は禁じていたはずですが?」

「マーガレットさんがね、商人との仲を密かに取り持ってくれていたの。」

「マーガレットさんですか····。」

「そう、彼女は私にグリフォニア領から出ていってもらいたそうだったわ。まぁ、それで私と接触したがっていたジョセフと連絡が取れたのだけど。その手紙では、王立学園を退学処分になった他のみんなと新しい組織を作ったと言うの。そして私をそこで保護したいと書いてあったの。だからこうして王都に来たのよ。」

「グリフォニア辺境伯様から帰還の命を受けていますが?」

「折角王都に来たのよ。それにグリフォニア領に戻ったら、どうせ閉じ込められるでしょう?そんなの嫌よ。」

「戻らねば、罪人として追われる身になります。それは殿下の本意ではないかと。」

「殿下、殿下って····。サミュエル様には直接会えないの?」

「はい、サミュエル殿下とルイーズ様は接近禁止が命ぜられております。会えば再び罪に問われるだけです。それにサミュエル殿下はもうルイーズ様を保護されるお力を持っておられません。」

「そんな····。」


「どうしたんだ?廊下に声が漏れてるぞ。」


そう言い、ルイーズ達が滞在している部屋に1人の男が入ってきた。


「ジョセフ、サミュエル様はもう私達の力になっては下さらないの?」

「ああ····。」

「ディラン様は?ディラン様ならあの時処分されていないはずよ。」

「処分はされているよ。王位継承権は保留扱いにされている。今、我々との接触が知られたなら、ディラン殿下に更に処分が追加されるだけだ。」

「そんな····折角王都に戻って来たのに。」

「大丈夫だ、ルイーズ。我々が君を保護するから。」

「ジョセフに何が出来ると言うの?」

「詳しくは話せないが、我々は元々貴族で、後継者として育てられた者が多い。それなりにその家の情報を持っている。それを利用するんだ。」

「家の情報って、家族を売るの?」

「ああ、もはや縁を切っているし、どちらが大切かと言えば、俺達を捨てた家族よりも、ルイーズ、君を幸せにしたい。皆その想いだ。その為ならどんなことも利用するし、障害となるものは、全て排除する。」

「まぁ、ジョセフ、私のために。嬉しいわ。」

「だからルイーズ、早く身体を治してくれ。」

「ええ。」


「それと気になっていたんだが、エマといったか。君と何処かで会った気がするのだが。」

「サミュエル様が送ってくれた侍女だから王宮ではないの?」

「王宮····そうなんだが····サミュエル殿下の側ではなく····。」

「王宮でお茶会も多くございましたから、その時ではないかと。」


エマはそう答える。


「ああ、そうだな·····。」


ジョセフはそのまま黙ってエマを見つめる。

少しの間があり·····。


「待てよ····まさか····!ルイーズ!その女から離れろ!」


突然ジョセフは何かを思い出したのか、いきなり横になっていたルイーズの手を掴み、ベッドから引き寄せる。


「ジョセフ、どうしたの?」


戸惑うルイーズを自身の背後にやり、ジョセフはエマと対峙する。


「お前、王妃付きの侍女ではなかったか?サミュエル殿下ではなく、王妃の差し金か?そうなると我々の味方ではないだろう。」

「えっ、でも殿下の意向って····殿下って、サミュエル殿下ではないの?」

「殿下の意向····そうか、王妃殿下というよりも寧ろ····オーウェン王太子殿下の差し金か!」

「エマ、あなた騙していたのね····監視していたの?味方でないなら、すぐに出ていって!」


「承知しました。丁度私の役割も果たせましたので。」

「役割って何よ!」

「そうですね、もう教えても問題ないでしょう。ルイーズ様、あなたは今後、もうお子は成せません。」

「え?子を成せない?」

「はい、辺境伯領へ来て間も無く命が下り、少しずつ薬を盛っておりました。そして今のルイーズ様の症状を診るに、もうこれから妊娠することはないでしょう。」

「なんですって·····嘘よ····。」

「いいえ、嘘ではございません。今の今まで多くの男性とまぐわっても、妊娠していないでしょう?」

「酷い····何て事を····。」

「サミュエル殿下でさえ去勢されているのですよ。あなたに何もしないはずがないでしょう?」


ルイーズは顔面蒼白になり、怒りで身体が震えていた。


「黙れ!他の男と関係を持っていただと?嘘をつくな!我らを惑わす気か?この王家の犬が!」


ジョセフはルイーズの男性関係を聞き、更に逆上し、エマに掴みかかった。

しかしエマは冷静にそれを躱すと、素早くジョセフの後ろに回り体勢を崩させ、そのまま首を締め上げた。


「ぐふっ!」

「少し大人しくして下さいませ。間も無く憲兵が参りますから。」


女性とは思えない力でジョセフを取り押さえ、更に手足を拘束しようとポケットから細い縄を取り出す。


その時だった。


「ドスッ」


エマの背中に衝撃が走る。


「くっ····。」


手の力を緩めず後ろを振り返る。


そこには、血のついたナイフを持ったルイーズが立っていた。


数ある作品の中から見つけて、読んで下さり有難うございます。

また、ブックマークをして下さっている皆様、何時も有難うございます。

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