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62 アウロラ vs ルイーズ

私は目を疑った。

どうしてルイーズがここにいるの?

彼女は王都を追放され、グリフォニア辺境伯領の監視下の中で生活をおくっているはず。


「ふふ、こうしてまともに面と向かってお話しするのは初めてですわね、アウロラ·ホーヴェット様。どうして私がここにいるのか不思議に思っていらっしゃる様ですわね。どうかご心配なく。グリフォニア辺境伯様から許可証を頂ければ、私は自由にグリフォニア領を出ることが可能なんですのよ。ほら、ここに実際許可証もありますし。」


ルイーズはそう言うと、1枚の証明書の様な紙を取り出す。

本物かどうかはアウロラには分からない。


「どうして王都にいらっしゃるのですか?グリフォニア領は今、他国からの侵攻に備えて領内が緊張している状態だと聞いていますが。」

「そうね、だから私を守る為にこの様に許可証を発行して、王都に避難させてくれたの。私がグリフォニア領でどれ程大切にされているかよく分かるでしょう?」


ベールのせいで表情は見えないが、声色から挑戦的なのが分かる。


「それでルイーズさんとカメリアさんはどの様なご関係で?」

「まぁ、何?十分な挨拶も無しにいきなり本題なの?」

「ルイーズさんが話しに割り込んで来られたので。」

「そうね。カメリアさんとは偶然お会いしただけ。とても悩んでいらっしゃったから、ちょっとお手伝いをしようと思ったの。話を聞くと、あなたの名前が出たから。ゆっくりアウロラさんと話したいなら、ルーク様のお名前を出せば会えると助言して差し上げたの。間違いないでしょう?」


カメリアはルイーズの登場に安堵の表情を見せた。おそらくこの場所にルイーズが顔を出すのは、予定されていた事だったのだろう。


「私はね、アウロラさん、カメリアさんの一途に相手を想うその心にとても感動したの。不運な境遇の彼女に幸せを掴んでもらいたいと思ったわ。」

「私と話した所で幸せを掴めるとは思いませんが。」

「アウロラさん、あなた学園であんなに目立たない様に振る舞っていたのに、本当はこんなにはっきり物を言う方だったのね。」

「必要な事ですので。」

「さすがは陛下より褒章を授与されただけあるわ。」

「褒章?」


カメリアはその言葉に驚いている。


「そうなの。アウロラさんは王立の研究棟の研究員で、褒章を受けた凄い方なのよ。」

「そうなのですか·····。」

「彼女の実家のホーヴェット家も国に多大な貢献をしているし、子爵家と言えど、カメリアさんの愛しのアシェル様の隣に立つには充分な資格のある方なのよ。」

「何をおっしゃりたいのですか?」

「アウロラさん、カメリアさんの話を聞いて、何とも思われなかったの?愛しい方の側にいようと、彼女は必死だわ。あなたも理解出来るのではなくて?愛しい方の側に立てない苦しさを。」

「その状況を作ったのはあなただと思いますが。」

「私が意図した事ではないわ。現に私は辺境に追放されるし。もうご存知なのでしょう?私がルーク様と婚約しなかった事を。 内心とても喜んでいるのでしょう?今すぐグリフォニア領に飛んでいきたいのではなくて?」

「王家の命です。私とルーク様がどうこうなる事はありません。」


「そうね·····そうだわ。カメリアさんがあなたに渡した紙の通り、ルーク様の情報を1つ教えて差し上げるわ。」


「······。」


「現当主のワイアット·グリフォニア辺境伯様はルーク様に縁談を勧めているそうよ。辺境伯様に続き、ルーク様も未婚というのは避けたいらしいわ。まだ何も決まっていない様だから、今がチャンスではないかしら。」


「······。」


「ねぇ、アウロラさん。アウロラさんはグリフォニア領に行って、ルーク様と再び関係を築けばいいのよ。そしてカメリアさんは·····そうだわ、ホーヴェット子爵家の養女にして差し上げたら?そうしたらカメリアさんも心置きなくアシェル様と仲を繋げるはずよ。」


「私が子爵家の養女に·····?」


「そうよ、カメリアさん。今平民のあなたに必要なのは、まず貴族の身分を取り戻す事。10歳まで教育を受けていたんですもの。大丈夫よ。そうなさったらいいわ。」

「そうですね!アウロラ様、私をホーヴェット家の養女にして下さい!」


カメリアは水を得た魚のように生き生きとしてアウロラに懇願する。


「ルイーズさん、いい加減な事を言わないで下さい。私はカメリアさんのそういった事については関与致しません。」

「どうして?カメリアさんが幸せに近づけるのよ?」

「ルイーズさんは言葉を控えて下さい。それとカメリアさん、アシェル様はあなたを側に置くことを望んでいらっしゃるのですか?」


カメリアの表情が強ばる。


「アシェル様は公爵家の方です。カメリアさんを側に置きたいと思われるなら、ご自身の力で動かれるはずです。アシェル様がどうお思いなのか、どうカメリアさんと向き合っていかれるか、何も分からない状況で、勝手に周りが動くのは如何なものかと。」


やはりアシェル様に今日の事を報告した方がいいかもしれない。


「でも······。」

「私としてはアシェル様のお心が第一です。それにもし、カメリアさんの様な方が次々現れたら、その都度協力して子爵家の養女にしなければならないのですか?普通その様な事はしませんよね?ルイーズさんは簡単におっしゃいますが、物事には順序があります。私は今日この事をアシェル様にご報告させて頂きます。アシェル様もカメリアさんと同じお気持ちなら、公爵家で上手く対応されるはずです。」

「待って!駄目よ、報告なんて·····そんな····。」

「どうしてですか?実際本当のお気持ちをアシェル様にお伝え出来ていないのでしょう?」

「もし違ったら、公爵家から追い出されてしまう·····。もうお側にいられなくなるわ。」

「カメリアさん、もう一度冷静に状況を考えて行動された方がいいと思います。」

「アウロラさんって冷たいのね。協力してあげればいいのに。」

「ルイーズさん、あまり調子のいい事ばかり吹き込むのはやめて下さい。あなたが無責任にけしかける事で、その人が身を滅ぼしかねませんよ。もう実体験済みではないですか。ルイーズさんの事も含め各箇所に報告させて頂きます。」

「許可証があるのに信用しないの?」

「大丈夫なら報告しても構わないのではないですか?」

「······。」


暫し、沈黙が落ちる。



「ルイーズ様、こちらでしたか。」


3人で対峙していると、1人の女性が声を掛けてきた。


「エマ·····。よく私だと分かったわね。どうしてここに?」

「別の用件でグリフォニア領の神殿を離れておりましたのを、戻って来てみれば、勝手に領外に出て行ったと伺いまして。」

「勝手ではないわ。丁度グリフォニア領が危険だと心配されて、連れ出されたのよ。ほらここに許可証もあるわ。」

「私はグリフォニア辺境伯様から、あなたを連れ戻す様に言われたのですが。まぁ、いいでしょう。あなたの御身は私が見守る様に仰せつかっていますので、同行させて頂きます。」

「直ぐに連れ戻されるのではないの?」

「いずれはお戻り頂きますが、こちらに赴いたのは、どなたかに会うためなのでは?」

「そうなの。ではエマ、ついて来て。暫くは王都に滞在するから。」

「承知しました。」

「では皆さん、私は参りますわね。ごきげんよう。」


ルイーズは何もなかったかの様にその場を後にした。

残されたカメリアは不安そうにルイーズの背中を見送った。


「カメリアさん、私もこれで失礼しますね。それから、もうルイーズさんとは会わない事をお勧めします。彼女はこちらで問題を起こして、王都を追放になっている身です。あまり関係を持つと巻き込まれますよ。お気をつけ下さい。ではこれで。」

「あっ、待って!私の事、アシェル様に話すの?」

「·····。カメリアさん、10年前の思い出にすがる事が、今のあなたにとっての唯一の道なのか、もう一度よく考えてみて下さい。あなたの手の届く所にも、きっと幸せがあるはずです。」

「······。」


そう言い、アウロラはカメリアを残したまま、神殿を後にした。

これ以上カメリアと関わるつもりはなかった。


そして神殿を少し離れた場所にあるカフェでエリナ達と合流する。


「アウロラ、大丈夫?でも近くで話を聞いていて、格好良かったわよ。」

「でも驚きましたわ。ルイーズが現れるなんて。」

「トーマスがこの事を報告するって言って、何処かに行ってしまったのだけど。」

「学園ではないですか?生徒と再び接触されても困りますし。」

「アウロラは今日の事をアシェル様に報告するの?」

「·····取り敢えず、アシェル様の側近の方にカメリアさんの事を話そうかと。その方もカメリアさんがアシェル様の婚約者だった頃をご存知みたいだから。」

「ルイーズの登場でややこしくなった気がするわ。」

「本当に。」

「今日はみんな有難う。側にいてくれると分かっていたから、少し強気になれたかも。」

「気にしないで。私達はアウロラの味方だから。また何かあったら声を掛けてね。」

「有難う····。」


アウロラはエリナ達と共に寮に戻り、早速ジョッシュに手紙を書くのだった。


◇◇◇


「ルイーズが現れただって?」

「はい、王太子殿下。エマ殿も追い付いた様でその後現れたので、これからの動向は報告が上がってくるかと。おそらく行方不明になっているトルーソー伯爵家の元子息のジョセフ達との接触が考えられます。ルイーズとエマ殿を尾行するのに1人つけておりますので、分かり次第またご報告に上がります。」

「ああ、宜しく頼むよ、トーマス。あと、アウロラ嬢達には君の素性は知られない様に。」

「承知しました。」

「長年王家に仕えてくれている君達一族に感謝するよ。引き続き情報を宜しくね。」

「有り難きお言葉。では失礼します。」


そう言うとトーマスは、テラスの陰から消えた。


「ここにきてカメリアとルイーズが繋がるとは。これはグリフォニア領に送り返すだけでは済まないかもね。」



読んで下さり有難うございます。

ブックマークをして下さっている皆様、何時も有難うございます。

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