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38 ジネヴラの見る夢 ①

200年前の回想です。

「ジネヴラ、アスラン王と一度も床を共にしていないとはどういう事だ?」

「陛下は目下、北部からの侵攻の対処と制圧で頭が一杯なご様子。」

「で、どうするつもりなのだ?入宮してしまえば、アスラン王の寵愛を得るのは容易いと大口をたたいていたではないか?」

「まだ亡くなられた妃達の喪が続いているのです。一人派手に動く事など出来ませんわ。それに、戦争好きな年老いた王よりも、この先を担う王子達と懇意にする方が得られるものも多いかと。」

「ふん、不貞を働くつもりか?」

「私から求めるのではなく、王子達が私を求める様に図れば良いのです。」

「まぁ、いい。王子の妃になる事は反対が多く実現出来なかったからな。お前の力量で、その座を掴むがよい。くれぐれも我々の関与は悟られるなよ。」

「承知しております。」


◇◇◇


ジネヴラはさほど裕福ではない、商家の娘だった。

父も母も欲深くなく、今の家族の生活に満足している心優しい人達であったが、ジネヴラは不満だった。


また平民に生まれ変わったわ。

平民から始まるのは、強制力か何かなの?

私はこんなに美しいのに、このままでこの生を終わるつもりはないわ。

いつもの様に、貴族が通う神殿に頻繁に出入りしていたら、きっと何処かの貴族に目をつけられるはず。


ジネヴラの予想通り、神殿に積極的に通う内に、ある子爵に目をつけられ、養女にならないかと誘いを受けた。

養女になるならば、実家とは縁を切るよう言われた。

ジネヴラは喜んで快諾した。

両親は最後まで反対していたが、ジネヴラは呆気なく両親を捨てた。


希望通り、貴族の仲間入りをしたジネヴラは、圧倒的支配者であるアスラン王の御代にあって、何とかその中で権力を我がものにしたいという勢力の手足となった。

ジネヴラ自身も王族との関係を望んでいたので、それは願ってもない事だった。


◇◇◇


内向きの事にはあまり関心が無いように見えたアスラン王だったが、8人の王子達が、この先仲違いすることなく国を支える事を望んでいた。

その為、交流させるべく、毎月王太子主催で王子達の食事会の場を設ける事を命じていた。


入宮時、妃の一人が亡くなった為、ジネヴラのお披露目の機会が設けられることはなかった。

それを利用し、この王子達の食事会の場に挨拶と称して参加することによって、王子達との接触を図った。

丁度アスラン王が北部制圧の為、自ら遠征していた事も幸いし、また王子達も社交界で美女として有名なジネヴラに興味があったのだろう。参加は難なく許された。


「私は子供が欲しいのです。王位継承などは興味はありません。ただ静かにこの王宮で親子が穏やかに過ごす、それだけで良いのです。陛下は私には興味がございません。願わくば、どなたか私を妃に迎えては頂けないでしょうか?」


あまりに直接的な物言いに、王子達は皆戸惑いを見せたが、潤んだ目で訴えるジネヴラを叱責する者はいなかった。

その日食事会は、どこか微妙な雰囲気で終了した。

悪くない手応えを感じたジネヴラは、更に王子達と接触を図る。

王子達に個別に会い、自分の気持ちがその王子にある様匂わせた。

その効果は絶大で、ジネヴラの媚香と相まって、王子達は徐々にジネヴラにのめり込んでいく。

やがて、妃として迎えようとする王子が次々手を上げ、ジネヴラを巡り互いに争う様になった。


私が決めるのでない。

私は選ばない。

王子達が決めること。

だから誰も私を責めることは出来ないわ。


◇◇◇


「え?決闘?私を巡って王子達が?」


王子達が私を妃に迎えるその座を巡り決闘を·····。

侍女の知らせを聞き、心の中で歓喜する。


ふふ、私はもうただの平民の娘ではないわ。

私の為に王子達が争うほどの存在。


その状況に、何とも言えぬ悦に酔いしれる。


「それでどなたが勝ったのかしら?」

「それが·····」


ジネヴラの気持ちとは裏腹に、侍女はなぜか青白い顔をしている。


「第3王子殿下と第4王子殿下が決闘を行い、第3王子殿下が腹部を、第4王子殿下が肩を負傷されました。医師が直ぐに駆けつけ処置を行いましたが、刺された箇所が悪く、先程第3王子殿下がお亡くなりになられました。第4王子殿下も重傷です。」


「なんですって?真剣で戦ったの?決闘で本当に命を掛けて?」

「はい、何でも言い争いの末、頭に血が上ってしまわれた様で····今、王宮は大騒ぎでございます。」

「そんな·····私は本当に命をかけることなんて望んでないわ!」


どうしよう·····

私が関係していると責められるかしら。

どうしたら·····


「取り敢えず誰が来ても、私がその知らせを聞いて倒れたと伝えてちょうだい。そしてあなた以外誰もこの部屋に近づけないで。守れないようなら、お義父様に頼んで、あなたの家族を殺すから。分かった?!」

「ひっ····し、承知しました。」


侍女は鬼のような剣幕のジネヴラに怯えた。


それにしても何てこと!

私の立場が悪くなるじゃない!

あの2人がこんなに短絡的だったなんて。

ここを何もなく乗りきって、他の王子には上手く接しなければ·····。


ジネヴラはこの日以来、表向きショックのあまり体調を崩しているという事にし、自身の宮殿にとじ込もっていた。

やがて落ち着いた所で、王子達が次々とジネヴラを心配して宮殿を訪れるようになっていた。

その日は王太子のテスランがジネヴラの宮殿にやって来た。


「ジネヴラ、体調はどうかな?」

「テスラン王太子殿下、お心遣い有難うございます。今でも第3王子殿下と第4王子殿下の決闘をお止めすることが出来なかった事を悔やんでおります。」

「第3王子の件は誠に残念だが、ジネヴラのせいではない。あれ等が望んでした結果だ。だが、まだ王子の中に色々画策してくる者もいるだろう。そこでだが、そなたは私の妃にならないか?」

「王太子殿下の妃ですか?」

「あぁ、それが一番落ち着くだろう。」

「ですが子をなすとなれば、王位継承権で王太子妃様が不快に思われるのでは?」

「もう既に5歳と3歳の王子がいるのだ。騒ぎはしないだろう。私は寧ろ王女が欲しいと思っている。ジネヴラには励んでもらいたい。」


そう言って王太子はジネヴラの頬をゆっくり撫でると、そのまま口唇の横に口付けを落とした。


ふふふ。王太子の心は私に完全に向いているようね。

これならアスラン王にも上手く取りなして下さるはず。


「何をしているんだ!」


尚も王太子と見つめあっていた時、突然部屋に断りもなく第2王子のルスランが乗り込んで来た。

部屋の入口では侍女が困った顔をして縮こまって立っていた。

おそらく王子を止める事が出来なかったのだろう。


「不作法だな、ルスラン。ここはジネヴラ妃の部屋だぞ。 何の用だ?あぁ、もしジネヴラ妃を自身の妃に迎えたいと思っているのなら残念だったな。今ジネヴラ妃と話して、私の側妃に迎える事にしたから。」

「何を勝手に!」

「お前の所は最近子が生まれたばかりだろう?まだ側妃を持つのは奥方が許さないだろう。まぁ、今度の定例の食事会で他の弟達にも話す予定だ。では私はこの後まだ会議があるから失礼するよ。」


王太子のテスランは、ルスラン第2王子に不適な笑みを見せながら部屋を後にした。

残されたルスランとジネヴラに気まずい空気が流れる。


王太子のテスランと第2王子のルスランは双子で顔はよく似ているけれど、性格はしたたかなテスランに対しルスランは直情的ね。

ルスランは人の上に立つのは向いてなさそうだけど、純粋な分、こちらの思うように操れそうね。


「ルスラン様、気を落とさないで下さい。王太子の側妃となっても私はこの城におりますから。」


ジネヴラはそう言って、立ち尽くすルスランを優しく抱き締める。


「テスランの側妃となれば、私とこういう風に抱き合ったりは出来ないだろう?」

「ふふ。ではたまにこっそり内緒で抱き合いましょうか?私達だけの秘密です。」


そう言いながら、ジネヴラは抱き締める腕に力を込める。

ルスランも愛おしげにジネヴラを抱き締める。


テスランだけでなく、ルスランの心も私のもの。


ジネヴラの心が真っ黒に笑っていることをルスランは気づいていなかった。



◇◇◇


「何ですって?もう一度言ってくれるかしら。」

「は、は、はい。本日、王太子殿下主催の定例の食事会が行われたのですが、その食事に毒が盛られていた様で····王太子殿下、第5王子殿下、第6王子殿下、第8王子殿下がお倒れになり、皆様先程······」


「何?!早く言いなさい!」


ジネヴラは侍女に掴みかかる。


「くるしぃっ····み、皆様、先程、お、お亡くなりになられましたっ。」

読んで下さり有難うございます。

また、ブックマークをして下さっている皆様、何時も有難うございます。

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