32 卒業パーティー ②
星のかけらを集めた様に煌めくシャンデリア。
その灯りに照らされたルークとルイーズの登場は、まるで演出されていたかの様なタイミングだった。
銀の刺繍が施された騎士の正装のルークと、口紅と同じ深紅のドレスに身を包んだルイーズは、圧倒的な存在感を放っていた。
ルイーズのドレスには、金糸の刺繍がふんだんに施されており、身に付けられた髪飾りをはじめとする黄金の装飾品と相まって、彼女自身か1つの宝飾品の如く輝いていた。
どうして彼女が?
ルイーズは現在謹慎中の身である。
そして2年生のルイーズは、卒業を待たずルークと共にグリフォニア領に行くはずである。
2人はサミュエル殿下の元に行き、挨拶をする。
ディラン殿下とスフィアも踊るのを止めこちらにやって来た。
「ルイーズ間に合ったか。」
サミュエル殿下はルイーズのドレス姿を見て、眩しそうに目を細め声を掛ける。
「はい、殿下。ご卒業おめでとうございます。」
「ああ、有難う。」
「ルイーズ。」
ディラン殿下も声を掛ける。
「ディラン殿下、ご心配をお掛けしました。」
ルイーズは優雅に微笑みながら、そう言葉を返す。
ルークは一歩さがり、後ろに控えた状態で様子を見ている。
「殿下、ルイーズ·オヴァフ男爵令嬢は謹慎中のはず。パーティーに出席したとなると問題になります。」
シャーロットがそうサミュエル殿下に告げる。
「彼女が謹慎なのは卒業式までだ。」
「殿下それは·····。これ以上彼女を擁護するのは殿下の立場を更に難しくします。」
「シャーロット、これ以上言うな。責は私が負う。ルークもご苦労だった。」
「サミュエル殿下······。」
シャーロットはサミュエル殿下の言葉を受け、苦しげに呟く。
「さぁ、ルイーズ。ファーストダンスは婚約者のルークと踊ってくるがいい。」
「サミュエル殿下、お許し頂けるなら、その後私と踊って下さいますか?」
サミュエル殿下は少し寂しそうに笑うと、ルイーズをルークに引き渡し、ダンスを踊るように促す。
「殿下。」
「ルーク、いいから踊ってくれ。これは命令だ。」
「····承知しました。」
ルークは渋りながらも無表情のまま、ルイーズと共に踊りの輪の中へ入っていく。
踊っている者、歓談している者、その場にいる皆がその様子を固唾を飲んで見守っている。
そんな中、ルークとルイーズはゆっくり踊り出す。
ルイーズの見事なブロンドの巻き髪が、ターンをする度に軽やかに舞う。
その様子に、皆「ほぅ」とため息を漏らす。
人目を引く深紅のドレスは、この場の負の感情を吹き飛ばす様に艶やかに舞い、女王然とした雰囲気を醸し出していた。
それとは逆にルークは、まるでその存在感を消したかの様だった。
婚約者とは続けて2度踊るように、ルークとルイーズも続けてダンスを踊っていた。
踊り終わる頃には、今回の騒動に関係のない者達はルイーズを受け入れている様だった。
あれだけ美しければ、心惹かれるのも仕方がないと。
しかしそれとは逆に、婚約破棄や白紙の憂き目にあった者達は、一層悔しさを滲ませていた。
ルイーズはサミュエル殿下とディラン殿下の元に戻ると、再び2人の殿下にダンスを申し込む。
「サミュエル殿下、ディラン殿下、私はこの王都を去ります。最期に一度踊って頂けないでしょうか?」
わざとだろうか?
声を震わせ美しく礼をするルイーズにサミュエル殿下も苦しげな表情だった。
傍から見れば、愛する者達が引き裂かれるその間際、最期に愛を確かめあっている様に見える。
サミュエル殿下は一度きつく目を閉じ、それからゆっくりとルイーズに手を差し出す。
「サミュエル様。」
すかさずシャーロットが強めの語気でサミュエル殿下を制する。
「言うな、シャーロット。」
それを封じるようにサミュエル殿下はシャーロットに言葉を投げた。
シャーロットは苦しげにその言葉を受けとめる。
それからサミュエル殿下はルイーズの手をとった。
ルイーズは嬉しそうに潤んだ目でサミュエル殿下を見つめ、2人はゆっくり踊りの輪の中に入っていく。
それはまるで舞台のワンシーンの様だった。
皆がその雰囲気にのみ込まれていく。
その時だった。
会場の壁際から徐々にざわめきが起こる。
サミュエル殿下とルイーズも、2人の世界から一旦抜け、そちらに目を向ける。
そこに現れたのは、同じ様に1人の女性の手を取り、踊りの輪の中へ入っていく、ルークとアウロラの姿だった。
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