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番外編 竜の国の王子③

投稿遅くなりました。

宜しくお願いします。

頭が重い·····。

私はどうしたのかしら?

随分長い時間眠っていた気がする。


身体を起こし部屋の中を確認する。

そこには今いるベッドと衣装棚、そして小さいテーブルに椅子が1つあるだけだった。

どこかの宿なのだろうか?

重たい頭を支える様にしてベッドから出て、窓の傍に行く。そして外を見てみる。

そこは森の奥深くの山小屋といった感じだ。


気持ちが落ち着かない。

その理由が分からないから尚更だ。

ここに来る前に私は何をしていたかしら?

え?

決定的な何かを忘れている気がする。


カタン

扉の外で音がして、何か荷物を置く音がする。

開かれた扉から入って来たのは背が高く、戦士の様な筋肉質の褐色の肌で、自分と同じ長い亜麻色を後ろで1つに結んだ男性だった。

金色の瞳がこちらを捉える。


「目が覚めたか?」

「····はい。あの····私はどうしてこちらに?」

「ああ、頭を打ったんだ。暫く目覚めないから心配したぞ。気分は悪くないか?」

「はい·····。あの、ここは何処でしょう?」


そう尋ねると、男は少し驚いた顔をした。


「何って、2人きりになりたいからと借りた家だろう?」

「2人きりに?あなたと?」


この人と2人きりにというのはどういう事だろう?


「私とあなたがですか?」

「いや、ちょっと待て、そう言えばさっきから言葉遣いがおかしいぞ。俺と普段話す時は、そんな口調じゃないだろう?おい、俺の事、分かっているよな?」

「·····ごめんなさい、私····あなたが誰なのか分かりません。」

「嘘だろう?·····記憶喪失か?因みに自分の名前は?」

「私の名前は·····。」


え?分からない·····私は?


必死に記憶を辿り、思い出そうとするが出てこない。

逆に頭痛がしだす。


「頭が痛いのか?そうか、分かったよ、お前の状況が。他に悪い所はないか?」


男は酷く心配した表情で、こちらに近寄ってきて不意に私を抱き上げた。


「あのっ····。」

「夫が妻を抱き上げて何が悪い?とにかくもう少し休んだ方が良いだろう。」


え?夫?


「夫って、あなたと私は結婚しているのですか?」


あまりにも衝撃的で、思わす大きな声で尋ねる。

男はそれを聞いて驚き、更に傷ついた表情を見せた。


「っっ····ごめんなさい。あの····私····。」


どうしよう·····傷つけちゃった。


「重傷なんだな。せっかくのお忍び旅行がこんな事になるなんて。いいよ、しょうがない。でも傷ついたから、取りあえず抱き締めてもらおうか。」


男の腕に乗るように軽々抱かれた状態で、おずおずと男の首に腕を回す。

端正な顔でいかにも女性にもてそうな人だ。

こちらを見上げる金色の瞳がどこか楽しそうに私を見つめる。

頭を寄せる様に抱き締める。


知らない匂い······。


すぐに離れ、もう一度男の顔を見てみる。


見覚えがあるような無いような·····。

ただ私を見つめる眼差しから、悪意は感じない。

手荒に扱うでもなく、寧ろとても心配してくれている。

信じていいのよね?


「あの·····名前·····。」

「ああ、俺の名はアレク。お前はローラだ。」

「アレク·····ローラ·····。」


アレクに聞き覚えはないが、ローラは確かにそう呼ばれていた気がする。


「お忍びだと言われてましたが、あまり目立たない方がいいのですか?」

「そうだな。このローヴェルにいれば、捕まって捕虜にされるかな。」

「捕虜?!な、な、なぜそんな危険な所に?」

「お前が見たいって言ったんだろう?だから頑張って連れてきたのに。」


アレクは困った表情を見せる。


「ご、ごめんなさい。私の我が儘なんですね。すみません。我が儘言ってここに来て、滑って転んで頭打って記憶喪失ですか?なんだか私·····バカすぎて涙出そうです。」


本当に情けない····。


「······。まあ、いいさ。人生そういう時もある。だが、騎士や何かを探しているような人間を見掛けたら、すぐに隠れた方がいい。それだけは守ってくれ。あと2日程して、体調がいいようなら帰国するぞ。」

「はい。それで帰国ってどちらに?」

「アルネスト王国だ。帰れば思い出すよ。」

「·····そうですね。元居た場所に早く帰りたい。」


帰れば思い出せそう。


アレクは少し不安そうな表情の私を見て、優しく頭を撫でてくれた。


◇◇◇


「もう一度状況を説明しろ。」


「は、はいっ。」


アウロラが拐われた際炊かれていた香は、その場に居た者の意識を奪い、更に若干の記憶障害を引き起こしていた。


「それで神殿の病室で死んでいたのは、アルネスト王国の商人ガラン·トラッタで間違いないのだな?」

「はい。体格、髪の色、持っていた身分証から間違いないかと。ただ香を贈り物として持って来たのはこの男で、従者の1人が行方不明だそうです。」

「ガラン·トラッタを殺す為にあの香を炊いたのか?アウロラが拐われているのは何故だ?」

「ガラン·トラッタの商会はかなり成功しているそうなので、敵も多いかと。アウロラ様は利用価値を鑑みて連れ去られたのではないでしょうか?」


「閣下、領内の街道は全て封鎖しました。」

「捜索部隊を編成しろ。見つかるまで交代制で日夜問わず行え。」

「承知しました!」


「アルネスト王国と言えば竜を崇拝している国だ。アウロラが拐われたのなら、古代種に関係しているやもしれぬ。何か組織だったものなら厄介だ。古代種の整備も強化しろ。」

「ガラン·トラッタはある種の食べ物に拒否反応を示し倒れ、神殿に運ばれたそうです。何者かが、それを利用し、アウロラ様に近づき犯行に及んだ可能性があります。」

「アウロラ狙いの可能性が大きいな。命までは奪われないだろうが、身体は傷つけられる可能性は十分ある。一刻も早く手がかりを掴め。それでルークへの連絡はどうなっている?」

「早くても4日後でしょう。」

「そうか····。」


グリフォニア領に来たばかりの時は、アウロラを諦めた喪失感を埋めるため戦いに身を投じていたが、アウロラを取り戻した途端、異常なほどの執着が感じられる。

アウロラが拐われたと聞いたら·····暴走しそうだな。

血が流れるやもしれぬ。

殺さない様にいっておかないとな。


◇◇◇


「それでグリフォニア城内はどうなっている?」

「はい、偽のガラン·トラッタの遺体は本物だと思われているようです。」

「長年あの黒髪を気に入っていたのにな。残念だ。」

「それで夫人はどうですか?」

「ああ、薬は効いている。今のところ自分が記憶喪失になったことを疑ってはいない。あの調子だと一週間は大丈夫だろう。」

「アルネスト王国へは?」

「明後日の早朝出発する。ダラム王国を抜けていくぞ。無事アルネスト王国に入った時点でローヴェル王国に通知する。」

「古代種の引き換えに応じるでしょうか?」

「拒んだ所で古代種をローヴェル側は御せないだろう。あの古代種がローヴェルにいるのは『古代種に愛されし乙女』がいるからだ。過去の文献にも古代種と乙女の記述がある。『古代種に愛されし乙女』がいる場所こそ彼らの安寧の地。上手くいけばローヴェルが保有する竜の他2体も手に入るかもしれない。」

「グリフォニアの者達は必死に探しているでしょうね。」

「ああ、特に乙女の夫であるグリフォニア公爵令息は、あのダラムとの戦いで王太子を討ち取った国の英雄だ。なんでも『冥府の使徒』という異名持ちらしい。俺達を殺しに来るぞ。」

「はは、それは全力で逃げないとですね。」

「ああ。グレン、脱出経路をしっかり確保しろ。乙女は意識を失わせて運んでも構わない。馬が通れない場所は俺が担いで行く。」

「山越えですか?承知しました。相手も馬を使えませんからね。その方が見つかりにくいでしょう。馬はダラム側で用意します。」

「ああ、頼む。じゃあ、俺は新婚の設定だからな。愛しい妻に添い寝してくるとしよう。」

「気に入っているみたいですね。」

「ああ、俺に寄って来るような、けばけばしい女共とは違って、本当に美しい女だ。このまま記憶を奪い、俺の妃にしてもいいだろう。」

「はは、他の男の元から女を連れ去り、あの薬を使い男との記憶を奪い、女に偽の記憶を植え付け、一生女と共に過ごした男の話を思い出しましたよ。」

「まさか俺もその男と同じことをしようとするとはな。まあいい、気に入ったからな。じゃあな、抜かるなよ。」

「承知しました。」


男はそう言うと、闇に消えていった。

アレクは小屋に入る。

奥の部屋にはアウロラが眠っている。


本当に美しいな。


窓から差し込む月明かりに照らされた横顔が神秘的で心惹かれる。


まるで月の女神だな·····。

自分と同じ髪色だが、女の方は光を含んでいるようだ。


1房指に取り、口元に寄せる。

そのまま共に寝台に横たわり寝顔を見つめる。


何だろうな·····。

俺はこの女の事をほとんど知らない。

なのに何故こんなに惹かれる?

顔が美しいからか?

いや、顔の綺麗な女は、嫌と言うほど見てきた。

ああそうか、治療を受けた時から、作った表情じゃないからか。

あとひたむきに尽くそうとする所か。


医者という者は皆ああなのかもしれないが、一つ一つの言葉や行動に愛情を感じた。

あそこにいて、この女に好意を持たない人間なんていないんじゃないか?


無性に自分のものにしたくなり、思わずその額に唇を寄せる。

いつもなら、女の都合など考えずそのまま抱くが、気持ちが入れば入る程、そんな事をしてはいけない気持ちになる。


ヤバイな·····まさか、恋じゃないよな?


そんな事を考えながら、女を包み込む様にして、抱き締め眠った。



読んで下さり有り難うございます。

また別の作品の投稿も行っています。盛り上がるまで少々読み進めて頂かなくてはなりませんが、気長に気楽に読んで頂ければと思いますので、こちらも宜しくお願いします。

「闇の聖女は愛を囁く。」

https://ncode.syosetu.com/n8936ib/

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