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番外編 竜の国の王子②

誤字報告有難うございます。


「ローラさん、こちらが依頼されていた薬草です。」

「有難うございます、ガルマ神官。この苗を植えてみようと思うのですが、以前お話させて頂いた場所を使っても宜しいでしょうか?」

「あ、はい、大丈夫ですよ。私も手伝います。」

「あ、いえ、ガルマ神官の手を煩わせるような事は。城の庭師の方が、こちらでの作業も見て下さるとの事でしたから。」


そう言うと、ガルマ神官はしょんぼりする。


「ガルマ神官のお気持ち嬉しく思います。」


そう言ってアウロラが微笑むと、ガルマ神官は顔を真っ赤にして満面の笑顔を見せてくれる。


こんな感じの方だったかしら?


以前ダラム王国との戦争中、グリフォニア領で身分や白衣、マスク姿で顔をあまり見せないようにし、『ローラ』という偽名を使って治療活動を行っていたアウロラ。

王都へ帰る日、白衣を脱ぎ挨拶した際、皆は何故かアウロラの素の姿に驚きながらも、笑顔で見送ってくれた。

話を聞くと、ガルマはルイーズに心を奪われ、ルイーズの監視役の1人のマーガレットと衝突していたらしい。

アウロラには、ガルマは治療方法を熱心に学ぶ真面目な神官という印象だったが。

アウロラの素性を知り、再び『ローラ』という名で働く今は、たまに兎に角甘い表情を見せていた。

アウロラの護衛につく者達に、色々気を付けろと注意されていたが、アウロラは何の事か分からなかった。



アウロラがルークとの結婚式を終えて直ぐ、アウロラに危害を加えようとしたラトゥナ王国の2人を王都へ護送するため、ルークはディラン王子と共に王都へ向かった。

時間ギリギリまで寝台から離さずアウロラを抱き続けたルーク。

何度も意識を飛ばしながら、アウロラもルークの愛に応えた。


ルーク様はもう、王都に着いたかしら。


ルークはアウロラの為に、グリフォニア城内に研究所を作ってくれていた。

そして同じ城内の神殿にも、部屋を設けてくれた。

神殿では、数人の神官に薬の作り方、調合を教えている。

ダラム王国からの脅威が減ったとはいえ、グリフォニア領はローヴェル王国国境の守りの要。

近隣の領主と共に他国からの侵攻に常に目を光らせていた。

ホーヴェット家は有名で、その家の令嬢であるアウロラが嫁いで来るとあって、神官をはじめ、近隣の領地からも医療技術を学ぶため、グリフォニア領を訪れる者が増えていた。

アウロラがグリフォニア領の地を踏んで5日目にして、アウロラは既に忙しくしていた。


その頃ナナちゃんはというと、すっかりワイアットに懐き、アウロラが傍にいられない時間は、ほとんどワイアットの広い執務室にいた。

どうやって入ったかと言うと、ワイアット曰く、テラス付きの窓から、身体をねじ込んで入ってきたらしい。

ナナちゃん·····。

お陰で側近達との話し合いなどで、部屋が使えなくなったらしい。

ナナちゃんが寝ているので、部屋が狭くなったという理由で·····。



「ローラさん、毒症状の患者が来ているのですが、何の毒か特定出来ないので、診て頂きたいのですが。」


その日の昼過ぎ、神殿に1人の男性が運ばれてきた。

街の治療院では、対応が出来なかったらしい。


「毒ですか?分かりました。」


アウロラが診察室に向かうと、ぐったりとした体格のいい男性が寝台に横になっていた。


「どういう状況か教えて下さい。」

「朝食で、国から持ち込んだ干し肉を食べた後、苦しみ出したそうです。吐いた後もぐったりしているようでまだ毒が残っているのではと。」

「解毒剤は飲んだのでしょうか?」

「はい、効果がなく。」

「胃を洗浄した方がいいのでしょうか?」


アウロラは男性の脈を測る。


「血圧が下がっていますね。他の方は何か症状が出ていますか?」

「共に食べた方は大丈夫だそうです。」

「何の干し肉か聞いて下さい。」

「アッタという野豚だそうです。」

「注射の用意をします。意識が無くならないように話し掛けて下さい。」


アウロラは急ぎ保管庫から薬を持って来る。注射を知っている神官達は顔をしかめる。


アウロラは男性の腕に注射する。


「これで様子をみましょう。私はこの患者さんに暫く付き添いますので。」

「ローラさん、注射だけで大丈夫なのですか?」

「はい、おそらくですが、この方はアッタという野豚が主食として食べる草に耐性がないのではないかと。」

「野豚が食べる草?」

「以前経験したのですが、ソソという草を食べた野豚の肉が身体に合わない方がいるのです。ほとんどの方が大丈夫なのですが、ごく一部の方には不調を来すようで。症状としては血圧が一気に下がります。ですので、解毒剤では効果がなく、血圧をあげる薬を摂取する必要があります。先程注射したのはそういう薬です。持って来ていて良かった。酷い人は亡くなりますから。」

「そんな事が·····。」

「私は取り敢えず血圧の経過を確認します。血圧が上がってきて、体調が改善すれば間違いなかった事になります。」


男性は黒髪に褐色の肌、身体は相当鍛えているのだろう、硬い筋肉に覆われていた。

異国の旅人だろうか?

衣服は見たことがないデザインだった。


注射の効果はすぐに現れた。

30分もすれば男性ははっきりと意識を取り戻し、アウロラと会話が出来るまでになった。


「お目覚めですか?気分はいかがですか?」

「ああ、大丈夫だ。息苦しさが一気になくなった。毒でも食べたのか?」

「あなたにとっては身体に良くないものでした。水は飲めますか?」

「有難う。俺にとっては、という事は、他の人間は大丈夫なのだろうか?」

「そうですね、今回は。はい、水です。ゆっくり飲んで下さい。」


男はアウロラをじっと見つめる。

金色の瞳だった。

その瞳の美しさに、アウロラも思わず見入ってしまう。


「その····白い装束とマスクは斬新だな。」

「そうですね。医療行為を行うには、これが一番なんです。」

「そうか、初めて見た。ローヴェル王国では普通の事なのか?」

「いえ、広めている所です。」

「興味深い。私は商人なのだが、自国も含め、他では見たことがない。私の身体を治したように、こちらは医療が発達しているんだな。·····その知識、私にも教えてもらえるだろうか?」

「そうですね。取り敢えず、あなたの身体に何が起こったのかは知っておいた方がいいと思います。」

「教えて欲しい。自国に知識を持って帰りたい。ここにまた来ればいいか?」

「·····そうですね。いつまでこのグリフォニアに?」

「10日だ。」

「では10日の内、出来るだけお教えしましょう。」

「有難う。感謝する。」


そう言って男は微笑む。

堀の深い整った顔立ちは、多くの女性を虜にしそうだと思った。

実際神殿に出入りする女性は、この男性の姿を見るなり、頬を染めていた。


「あの···どちらの国から来られたのですか?」


「ロレッソ王国だ。私の名はガラン·トラッタ。ある商会の代表を務めている商人だ。」



「ローラ殿はどこかの令嬢なのか?護衛が複数人いるようだが。」


商人というより武人のような体躯のガランは、やはり感覚も鋭いようで、周囲の変化を常に敏感に感じているようだった。


本当に商人なのかしら?


アウロラも周囲も怪しむが、珍しい品々を持ってきてくれるので、3日目には、神殿の者達とは親しくなっていた。


「しかし、驚いたな。人によって毒になる食材があるなど。」

「私も初めてその症状を見た時は驚きました。身体がその食材に拒絶反応を起こすんです。毒だと勘違いしがちなので、解毒剤を服用して治らない場合は、この症状に理解がないと、手遅れになって亡くなることもあります。」

「俺は命拾いをしたんだな。ローラ殿には感謝しかない。」

「いえ、お役に立てて良かったです。」

「それでお礼にだが、これは知っているか?」


ガランは小さい木箱から植物の根を取り出す。


「アユラの根だ。」

「え?これが噂の?高い痛み止めの効果があると言う?」

「そうだ。南部に自生する木なんだが、20年前の干ばつでほとんど枯れたと言われている。数が激減しているので、その根が出回る事はほとんどない。」

「ほとんどないのに、手に入れられたなんて凄いです。」

「ああ、だからこれをローラ殿に贈ろうと思う。箱の中に使用量などが書かれた紙が入っている。参考にしてくれ。」

「本当に嬉しいです。有難うございます。」

「喜んでもらえて良かった。あともう1つ持ってきているものがある。部下に神殿の礼拝堂にも置かせてもらえるように話してある。先程ミラ神官と持っていったはずだ。」

「もしかしてお香ですか?先程から仄かに香ります。」

「自国では心を休めるものとして、焚かれるんだ。いい香りだろう?」

「ええ、とても·····。」


そう答えながら、突然アウロラの身体から力が抜けていく。

そして同じ室内にいる騎士達が皆、突然倒れた。

椅子に座るアウロラが床に倒れそうになる。

それをガランは優しく受け止めた。


「相変わらず良く効くね、この香は。これで香が消えるまで、神殿内は静かになる。」


ガランは立ち上がり、アウロラを抱きなおす。


「大事たからと言って、護衛を沢山付けるのも考えものだな。そんなに厳重にしていたら、要人が誰かすぐに分かってしまう。お陰で探す手間が省けたが。」


そう言ってガランは笑う。


「早速、ローラ、いやアウロラ·グリフォニア公爵令息夫人。マスクを取って、顔を拝ませてもらおう。」


ガランはアウロラのマスクを取る。

そして目を見張る。


「これは····。ははは、驚いたな、なんて美しさだ。あの症状を注射だったか?普通は完治するのに3日かかるのに、30分で治したな。凄いな、頭もいい。」


独り言を言いながら、ガランは小瓶を取り出す。

中には少量の液体が入っていた。

ガランは意識のないアウロラの顎を押さえ口を開かせる。

そしてアウロラの舌に一滴だけ小瓶の液体を垂らす。


「さあこれで暫く記憶喪失だ。『古代種に愛されし乙女』よ、俺の妻として調教するから、楽しみにしていてくれ。俺なしではいられない身体にしてやろう。竜を連れ帰るのはそれからだ。」


ガランはそう言ってアウロラを抱き抱え、姿を消した。





読んで下さり有り難うございます。

また新作の投稿を始めています。盛り上がるまで少々読み進めて頂かなくてはなりませんが、気長に気楽に読んで頂ければと思いますので、こちらも宜しくお願いします。

「闇の聖女は愛を囁く。」

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