番外編 竜の国の王子①
番外編です。
ルークとアウロラの結婚式直後からのお話です。
誤字報告有り難うございます。
「はぁ、派手にやってくれたみたいだね。古代種2体が大空を金色に輝いて翔んだって?秘匿は出来ないな。さぁ、これで他国がうるさくなる。」
「はい、兄上····。」
ルークとアウロラの結婚式が終わり、その2日後、ディランはグリフォニア領を離れる事になった。
翌日ではなく、2日後になったのは、グリフォニア側の都合だったが····。
「それで、ソドゥリー家の2人はどうした?」
「はい、王城に着き次第、ルークが地下牢に連行して行きました。後程、ルークもこちらに報告に上がるかと。」
ディランの表情は堅い。
「へぇ、ルークが護衛でついて来たのか····。それは機嫌が悪いだろう。蜜月のはずなのにね。結婚して2日で離された。ディランが命じたの?」
「あ····はい。だって兄上、古代種にラトゥナ王国の公爵家の人間の護送ですよ。最善を期さねばならない。」
「そうだね、いい判断だ。ルークに殺されるの覚悟で命じた点は評価する。ここまでの道中がどんな様子だったか察するよ。ディラン少し痩せたしね。まあ、報告を聞いて、指示出して、早急にグリフォニア領へ帰してあげよう。」
「私からも伏してお願いします。」
「王太子殿下失礼します。国王陛下がお呼びです。至急の要件との事です。ディラン殿下もご同席なさるようにと。」
「そう、分かった。そういう事だから、ルークには取り敢えず旅の汚れを落とすなり、部屋で休むよう伝えてくれ。後程声をかける。」
「承知しました。」
「陛下の呼び出しはラトゥナ王国の件ではなさそうだね。嫌な予感がするな。」
「え?まさか他にも厄介な問題が?」
「まあ、少し前から連絡があった事だ。古代種について。想像出来るだろう?」
「まさか····。」
「そう、アルネスト王国だよ。竜を神として崇める国。おそらくナナイロオオトカゲを寄越せという内容だろう。」
「折角結婚できたのに、また面倒な事に巻き込まれそうだよね、あの2人。」
オーウェンの言葉を聞き、顔を青くするディランだった。
◇
「やはりナナイロオオトカゲの件でしたか。」
国王であるローガンの執務室には、王太子であるオーウェンをはじめ、ディラン、宰相のミュランダン侯爵、そして外務卿のアシェルが集まっていた。
「アルネスト王国が竜を神とし、崇めているのは周知の事だが、ナナイロオオトカゲこそ神の化身であり、アルネスト王国が保護するに相応しいと言っている。再三断り続けていたんだが、どうやら痺れを切らしたらしい。」
「痺れを切らしたとして、どうすると?」
「取り敢えずアルネスト王国第2王子をこちらに寄越すらしい。」
「ナナイロオオトカゲの特性は知っているのですか?心を許した相手でないと擬態の能力を使い、姿を眩ますと。それにナナイロオオトカゲ自身がグリフォニア公爵令息夫人の元を離れないでしょう。」
「ああ、だからグリフォニア公爵令息夫人もアルネスト王国でもらい受けると。王子の妃として。」
「は?」
その場にいた殆どの人間に力が入る。
「随分無茶な要求ですね。」
アシェルは冷たい声で告げる。
「そして王子は既にこのローヴェル王国に入国しているらしい。」
「それで今その王子は何処に?」
「商人を装っているらしい。今影に追わせているが王都ではまだ見つかっていない様だ。」
「陛下、ナナイロオオトカゲが目的なら王都には来ないでしょう。」
「そうだな。」
「急ぎルークを呼んでくれ。同時に小隊を編成し、いつでも発てる様に準備させよ!」
「これはつまり·····。」
ディランは更に顔色を悪くする。
「そうだ。ナナイロオオトカゲが目的なら古代種に愛されし乙女に会いに行くだろう。おそらく王子はグリフォニア領にいる。そしてアウロラ·グリフォニア公爵令息夫人に接触しようとするだろう。」
◇◇◇
潜伏させていた『影』からの報告で、ローヴェル王国には古代種に愛されし乙女がいることを知った。
そして彼女が保護したナナイロオオトカゲが、突然竜の姿に変異したと。
その報告を聞いた時は胸が躍った。
アルネスト王国は古代、竜の国と言われる程、竜が人々と共に共存し、竜に股がり空駆ける竜騎士も存在していた。
空の支配者となったアルネスト王国は、各国々に優位に立ち、次々併合し、帝国と呼ばれるに至った。
それがいつ頃だろうか。
竜殺しと呼ばれる一団が現れ、竜騎士は次々と敗れていった。
それと同時に国も各国から侵攻を受け、衰退し、今の領土の広さとなった。
滅ぶまで至らなかったのは、豊富な鉱物資源が地下に眠っており、それを加工し、流通させることにより、莫大な利益を得る事が出来たからだ。
こうして今では、かつての繁栄を取り戻しつつあると言われている。
そんなアルネスト王国には、未だに竜を神とする信仰が根強く残っており、その象徴を求める声が多い。
どんな竜なのだろうな。
その古代種に愛されし乙女がグリフォニア領の公爵令息と結婚するらしい。
竜は王都にある研究施設にいると聞いている。
ローヴェル王国が竜の引き渡しを拒否しているからと言って、そこに忍び込み捕獲するのは、まず不可能だろう。
ならば、まず古代種に愛されし乙女に接触し、我が国がいかに竜の保護に相応しいか理解してもらい、ローヴェル王国側に竜の引き渡しを促して欲しい所だ。
父である国王陛下の、古代種に愛されし乙女を妃に迎えるのも無茶な話だ。
今日はその令息と古代種に愛されし乙女の結婚式だ。
まあ、取り敢えず遠目でもその乙女の姿を拝んでおくか。
そう考え、グリフォニア領へ入る。
肩書きは商家の息子、ガラン·トラッタだ。
城塞都市グリフォニアか·····。
ガラン·トラッタは実際この名で商会を立ち上げ、本当に交易事業をしている。
身分証も実際これを使い仕事をしているから、偽物扱いされる事はない。
実際商会で働く殆どの者達は、俺が王子であることを知らない。
という事で、問題なく潜入。
結婚式が行われるだけあって、街はお祭り騒ぎだ。
事前に取っていた宿に行く。
荷物を置き、明日の結婚式の情報を収集する。
公爵令息夫人の顔を見たいと言えば、親切にも遠目ならとお薦めの場所を教えてくれた。
遠いが雰囲気だけでも見れたらいいか。
翌日、早くにその場所に向かい、場所取りをする。
現公爵は結婚しなかったとあって、こういう慶事は久しぶりだそうだ。
こういった雰囲気は、どの国に行ってもいいな。
皆が笑顔だ。
そして漸く結婚式が始まったらしい。
王家から王子、そして同盟国のラトゥナ王国からも高位貴族が参列しているらしいから、警備も厳重だ。
俺も堂々と国から参列を希望すれば、あそこに居れたんじゃないか?
そんな事を考えながら見学する。
花嫁は····小さくてよく見えない。
髪の色が薄い程度しか分からないな。
その時だった。
何処からともなく生き物の咆哮が聞こえる。
周りのグリフォニアの人間も驚いている。
まさか······。
誰かが指差した。
その方向を見ると、光輝く何かが飛んでいる。
昼間なのに流れ星か?
そう思ったその後ろ·····
光を受けて輝くもう1つの何かが、続いて飛んでいた。
咆哮はあれからだ。
こちらに近づいて分かった。
大きさは馬の一回り大きいほどだか、それには翼があった。
身体は金色に輝き美しい。
竜だ。
あれがナナイロオオトカゲが変異した竜だ。
皆言葉を失っていた。
はじめに飛んでいたのは鳥だった。
あれも古代種だ。
花嫁が片手を挙げる。
それに応える様に、2体は高度を下げ、彼女の元へ降りていく。
あれが古代種に愛されし乙女。
やがて周りは歓喜の声に包まれた。
グリフォニアの民が皆、祝福の声を上げる。
ああこれだ。
我が国が取り戻したいのは。
欲しい。
しかしこうなると、竜を欲するのは我々だけではないだろう。
当然、ローヴェル王国も手放さないだろう。
さて、どうするか。
やはり、古代種に愛されし乙女を拐うしかないかもしれない。
彼女の心も我がものにしよう。
そう、アルネスト王国の王子は心に誓った。
読んで下さり有り難うございます。
また新作の投稿を始めています。盛り上がるまで少々読み進めて頂かなくてはなりませんが、気長に気楽に読んで頂ければと思いますので、こちらも宜しくお願いします。
「闇の聖女は愛を囁く。」
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