102 閑話
「結婚式に参列したいと言ってきている?」
「はい、名目としては特にお断りする理由もございませんが····。」
「はっ。あの妹という女を連れてか?確か王都に滞在していた時も、ルークに媚薬を盛ったというのは冤罪だとか言って、屋敷に訪ねて来ていなかったか?ラトゥナはしつこいな。まあ、余程ルークの側室に上げたい様だが、まさか、本気であのルークを籠絡出来ると思っているのか?」
「そうなのでしょう。まあ、見せつければ宜しいのでは?」
「そうだな····。それでルークの結婚式の準備は順調そうか?」
「はい、何者にも口出しが出来ぬほど完璧に。」
「そうか、ルークがこれ程独占欲が強い人間だとは思わなかったな。」
「御意。」
ルークは王都にて『英雄』の称号を授与された後、約2週間程の滞在で一旦グリフォニア領に戻って来た。
ルークとアウロラは1度婚約していた事もあり、改めて婚約式をすることなく、半年後にはグリフォニア領で、ルークとアウロラの結婚式を行う事が決まった。
ルークはグリフォニア領に戻り次第、準備を始め、その熱量は静かながら凄まじいものだった。
ドレスは、王都にいた時に懇意にしていたデザイナーに既に注文しているらしく、その手際の良さに、ワイアット達は若干引いていた。
「王都でも話が上がっていたが、そのラトゥナのクリストファー·ソドゥリーが、このローヴェル国内で主に国境近くの領主に接触していると?」
「目的は定かではありませんが、ラトゥナの王家の血を濃く継ぐアリーチェ様を実質ローヴェルに放逐した程です。アリーチェ様の名を利用して、今度はこちらに支持基盤を作ろうとしていると思われます。」
「そのように簡単にラトゥナに下る者などいないだろう?」
「はい、そう思いますが。接触して来ましたら、如何しましょう。」
「重要な要件以外は会う気がないと伝えろ。」
「承知致しました。」
アウロラが誘拐されて以来、ルークはアウロラに対するタガが外れた様に思う。
確か誘拐を手引きしていた暗殺組織である『狩人』の拠点を探し当て、壊滅させていたな。
首謀犯のジョセフ·トルーソーの処刑に至っては、身代わりを防ぐ為に、処刑人に扮して、自ら処刑していたしな。
これでもし、ルークを籠絡するために、ラトゥナ側がアウロラを排除しようとするならば、確実にルークの逆鱗に触れ、消されるだろうな。
それも良いか。
まあ、事が起こった時の根回しを考えておかなねば。
ワイアットはそう考えながら、国王宛に書をしたためるのであった。
◇◇◇
「そうか、半年後にグリフォニア領で結婚式を行うのか。」
「はい。ムク様にも見て頂きたかったのですが、許可が降りなくて。」
「そういう事はアウロラは考えずとも良い。こちらで何とかするから。それよりもトカゲだ。あやつは付いていくぞ。」
「え?ナナちゃんはさすがに難しいのでは?私が半年毎にグリフォニアと王都を行ったり来たりするのは、ナナちゃんを定期的に見守るためでもあります。それに、竜の姿になってしまった今では、さすがに目立ちます。」
ナナイロオオトカゲこと、ナナちゃんが馬ほどの大きさの竜になってから、テンセイバとムク様が見守る形で王城内で伸び伸び生活している。
アウロラが来ると、嬉しそうに鼻先をアウロラに擦り付け、座ってはアウロラの身体を包むようにして眠るのが最近よく見られる光景である。
付いて来そうよね·····。
竜となると、さすがに他国に狙われる。
国境に位置した領地で拐われれば、直ぐ国外逃亡が可能だ。
それにあの巨体にいうことをきかせる為に、再びアウロラを拐ったり、人質にしようとする輩が現れないとも限らない。
王家をはじめ、研究棟でも懸念されている事項である。
アウロラは、分かってくれるか分からないが、何とか言い聞かせようと考えていた矢先、驚きの事件が起こった。
「卵が生まれた?ナナちゃんのですか?」
「そうなんですよ、アウロラさん!最近よく寝るなと思っていたんですが、寝床に卵が。ナナイロオオトカゲの卵なんて初めて見ました。いや、人類初ではないですか?」
医薬学棟で薬を調合していた所に、マシューが慌てて部屋に駆け込んで来てアウロラに知らせた。
アウロラも急いでナナちゃんの元へ向かう。
「私が先程行った時も寝てたので、起こさず、また帰りに来ようと思っていたのですが、まさか。」
テンセイバと隣り合う厩舎には、研究員達の人集りが出来ていた。
皆に勧められナナちゃんの元へ行くと、ナナちゃんは身体で守る様に卵を抱いていた。
「産んだか。」
「ムク様。これは·····。」
気づけばムク様がアウロラの肩に舞い降りる。
「アギャ!」
「ナナちゃんの子なのね。凄いわ!」
アウロラは思わず感極まって涙する。
「アギャ、アギャ。」
「アウロラ、トカゲはこの卵をここに置いて行くそうだ。」
「はい?」
「要は、卵をこやつの代わりにここに置いて、トカゲはアウロラに付いて行くそうだ。」
「え?えぇぇ?!」
この事は、王宮に報告され、数日に渡り議論を行った末、ナナちゃんはアウロラに付いてグリフォニア領に行く事になった。
◇
「ワイアット様、王宮から手紙が届いております。」
「そうか、先日のラトゥナの件の対応についてだろう。」
ワイアットは封を解き、中身を確認する。
「·········。」
「ワイアット様、手紙には何と?」
「······アウロラの輿入れの件だが、もれなく古代種の竜が付いて来るらしい。」
「は?」
「どうやら我々は竜を飼う事になるらしい。」
「何ですとぉぉぉ?!」
グリフォニア領がパニックになったのは言うまでもない。
読んで下さり有難うございます。
この作品がエンディングに差し掛かる中、新作の投稿を始めました。はじめ、盛り上がるまで少々読み進めて頂かなくてはなりませんが、気長に気楽に読んで頂ければと思いますので、宜しくお願いします。
「闇の聖女は愛を囁く。」
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