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第一話『トカゲ侍と陰陽師エルフ』その九

 リンタロウはピアの元へ帰った。

 ピアは塀にもたれるようにして戦いを見ていたのだった。リンタロウが戻ってきたときには半醒半睡といった具合だったが、それでも意識はある。


「まだ終わりやない」

 と、リンタロウに警告した。

「妖魔が死んだら結晶が残る。ケガレクリスタルいうんやけど、それほっといたらまた妖魔が生まれよるかもわからん。拾ってき」


 言われて戻ると、妖魔の屍骸はすでになく、同じ場所にヒマワリの種ほどの水晶が、黒紫に光を放っていた。

 禍々しい雰囲気を感じ、直接手で触れることがはばかられたので、懐紙を使って拾い上げた。


「ああ……小さいな。あんまりケガレを溜めとらんかったんや」

「ケガレとはなんだ?」

「濁気や」

 と言われてもわからない。


「カンタンに言うと、生と死の生が清気(せいき)、死が濁気や。妖魔がケガレを溜めるいうんは、つまり人を殺すいうことや。人を殺せば殺すほどケガレが溜まって妖魔は強くなる。今回のはあんまりケガレを溜めとらんかったから、妖魔の中でも格下や」


 それでも、この村の住人が何人も犠牲になったのだが。

「格下でこれなら、格上には出会いたくないものだな」

「ほんまやで」

「それで、このケガレクリスタルはどうすればいい?」

「ケガレは散らさなあかん……お母ちゃんなら浄化できるんやけど」


 ピアは言葉を濁した。つまり彼女にはまだできないということだ。ピアの母はよほど強力な陰陽師ということなのだろう。

「では、ゴートへ持ってゆけばいいのか」

「それでもええねんけど……ずっとそれ持っとくのは感心せえへん。小さいいうても、ケガレの塊やから、妖魔とかを引き寄せてまうかもしれんし……下手したら新しく妖魔が生まれてまうかも……」


 よほど疲れたのだろう、もうピアのまぶたはほとんど閉じられている。

「でもウチは他のあてを知らん……」

「話は明日でもいい。もう休みなさい」

「そうさせてもらうわ……あ、そうや」

 まぶたを閉じたまま、ピアはにへらっと笑った。

「リンタロウ、あんたほんまに強かったんやな。見直したわ……」

 それを最後に、ピアは口を閉じた。眠ったようだった。


 リンタロウは、ケガレクリスタルを懐紙(かいし)で二重に包み、(たもと)に入れた。

 静かになったのを察したのか、恐る恐る姿を見せたのはヘイスケだった。

「おサムライさま?」


「ここだ」

 ピアを抱き上げ、リンタロウは立ち上がる。ヘイスケは周囲をうかがいながら慎重に近づいてきた。

「魔物は……?」

「ああ、皆に知らせてくるといい。魔物は倒した」


「ほ、ホントですかい? うおお、すげえ、さすがおサムライさま! おおいみんな! 出てこい! おサムライさまが魔物を退治して下さったぞー!」

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