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それぞれの独白

生活諸々お疲れ様でした、また自分です、今回は前回の予告通り、心理を描いていく回です。これは後書きに置くほうがいいけど、読者の皆さんは、少しだけ、アンナとベアトリスの気持ちを共感できたでしょうか。気持ちを上手く伝えるのか不安ですが、精一杯やるつもりです。自分の作品を振り返って、やはり日本語での作文はまだダメダメだと思いますが、意識した時に修辞を少しずつ用いれようと思います。

 (わたし)はアンナ・ベルバイスト。ただ、ベルバイストは本来の氏ではなく、ジークフリート様から授かったもの。


 十六年前の統一戦争、十歳だった時、村の守備兵と騎士が戦争の前線に派遣され、大した仕事じゃないからと安心してくれと言われた。最初、みんなはそれを信じ、普通に日常を過ごした。


 でも天気が冷え始めた直後、村は小型のモンスターの群れに襲われた、大人達、私の親を含めて必死に抵抗していた。だけど、専業の訓練も碌な武器もない大人達は、何体を道連れにする事しかできず、最後はなす術なく屠られた。


 あの時、私は厠に居た、外の重い足音と人の叫びや悲鳴を聞いて、気付かれないよう、目を瞑り必死に息を潜んだ。厠の臭いのお陰か、モンスターに気付けられず、何をやっていたのか考えたくもない音を立った後、奴らの足音は其の儘遠ざけた。


 あの儘便所から出ず、またモンスターが来ないかに怖れ、一歩もそこから踏み出なかった、数日が経った後の夜、また大量の足音と金属音を聞こえた、そして数日ぶりの人の声を聞いた……


「何回見ても酷いな、このような状況は……」


「ジークフリート、どうする、これでまだ生還者がいたら奇跡だぞ。」


「息がある人を探せ、特に門を閉めている家や部屋は必ず入ってみろ!」


「「「了解!」」」


 その直後、大量の足音が鳴り、門を開ける音も響いていた、(わたし)は飢餓で錯乱し、声を上げなく、ただ奥に座っていた。そして遂に、厠の扉が開かれ、私はこうして救助隊らしき人達に助けられた。


 彼らは私に衣服と食べ物を与え、私をあの地獄から連れ出した。あの後も幾多の村を巡り、三ヶ月後、戦争が止んだとの知らせが伝われ、彼らも故郷へ戻ると決めた。ただ、私みたいな親族や友を全て失った孤児も沢山ある、それを放っておく訳にはいかないと、ジークフリートは、私を含め8人の孤児を彼の故郷である「貿易都市・アインハイぜ」に連れ戻った。


 私達が成人になるまで、ハンターである彼の屋敷で暮らすようにと伝われた。当然、全てを失い、混乱していて生き術を持たない私達はそれを受け入れるしかない。ジークフリート様は私達を侍者として雇い、私達に惜しみもなく食べ物をくれた、国が戸籍制を導入する時、私達に氏を付け、登録してくれた。


 あの後、皇帝はジークフリートとその仲間の人命救助の功績を讃えべく、彼を伯爵として冊封(さくほう)し、この「貿易都市・アインハイぜ」とその他幾つかの街を領地とし、莫大の金額を授けたと言う。


 孤児仲間はみんなジークフリートの元に残った、領主になるのが面倒だからと、ジークフリートの下についていた有志の一人だったブレイン様も、形式上ジークフリートに仕える様、騎士爵位を請求した。


 ここは私の家ではないけど、飯があるし仕事も体力仕事ばかり、ろくな教育を受けたことがない私達にとって、ここより優れた待遇はあり得ないだろう、そう思った私は、いっそう此処で余生の時間を潰せばいいと思った。そう思っていた……


 ジークフリート様の元で九年目の冬を迎え、夫人の体が妊娠の症状を現し、私はその看護として命じられた。九年の中、外から雇った侍者達から色んな学問を学び、助産や妊娠の知識もいずれ必要になると、叩き込まれた。そのお陰で咄嗟で任せられたこの責務にさほど混乱してなかったが、やはり経験がなかったから、夫人の不安に理解できず、いつもより丁寧に接する事しかできなかった。


 翌年の早秋のある夜中、夫人が出産を迎えた。あの時焦った、あのいつも凛々しくて優雅なクラリス様が、あんなに苦しそうな顔になって、痛い痛いと悲鳴を上げながら、子を産むため我慢して力を入れる姿。自分にできることは温かいタオルで夫人の汗を拭き、助産のマッサージと応援する事だけだった。ジークフリート様もその場にいて、クラリス様の手を握って応援していた、幸い努力は報われ、元気な女の子が生み、夫人も無事だった。


 女の子はベアトリスと言う名を授けられた、それは「恩恵」と「美麗」を意味する名だったらしい。でも私はどこか違和感を感じた、この子が生まれた後、『泣かずに』呼吸し始め、その儘眠りについた。その直後、街の商人から代表三人が献上品を捧げ、お嬢様の寝顔を拝んだ、あの光景は宛ら、とある伝承に出る聖人の生誕。


 異常は一つで終わらなかった、私はベアトリスお嬢様の世話役になる様伝われた、最初は楽な仕事だと思った。村にいた頃も、赤ん坊だった妹の世話をしていたから、何をどうすれば良いか、既に心に熟した。けど、お嬢様は普通の赤子と違う。


 彼女はとにかく泣かない、一度も泣いたことが無い、オムツやシーツを換わる時も一度も暴れたことがない。時に、お嬢様を抱え、妹の思い出で啜り泣く時も、手を差し出して私の涙を拭こうとした、この子はただ者じゃないと、私は強く確信した。


 お嬢様が5歳になった冬、いつも通りに手を繋ぎ歩いていたとき、べロックスの叫び声に驚いたお嬢様が、私の手をギョッと掴みしめ、気づいた時、私の手は傷んでいた。医者が診察した結果は、軽微の骨折だったらしい。べロックスも現場にいたから、蹴りに掠られたと言うことで事はおさまったが、それ以来、お嬢様はどんな状況でも自ら人を触れなくなった。旦那様と奥様は相変わらずお嬢様を寵愛し、ちょこちょこ抱きつけるが、対しお嬢様はどこか寂しそうな笑顔を咲かし、ただその寵愛を受け入れる。


 私は、彼女から自分の様な影を見た、だけど彼女の影は、私のよりもずっと暗い……まだ生後五年しか経ってないのに、あれはまるで、家族を次々と目の前で失う絶望を味わったあと、新たに家族を見つけたのに、相手を抱き締められない、その幸福感を分かち合えないと語るような、別の世界の人のような、寂しそうな笑顔。


 ある時期から、お嬢様は食材へ大いに趣味を示した、台所を見たいと言出して、あの反則的な可愛い顔で本気に頼んて来た。それに敵わず、私はコックと相談し、お嬢様に食材棚を見せてあげた、結果、彼女は真面目な顔で食材の状態を確かめ、その目付きは宛ら、専業のシェフが食材にチェックを通す様。しかもあの後、中身が腐りかけた品を正しく突き出し、その場にいた者達を大いに驚かせた。


 他にもアジリスと言う、私の故郷を滅ぼしたモンスターを一撃で追払った事。父と家の名誉のため、同世代では敵なしと言われるクーゲル殿下と対決し、あの豪雨の如くラッシュを容易く捌き、精確無比な一撃で相手を捩じ伏せた一件。旦那様が倒れた中、クーゲル殿下の失踪を知る途端、年齢に合わない電光石火の決断を下し、疾風迅雷の如く行動に移る姿。貴族や王族にしか負担できないと言う高価の食材であるミルクをハンターに分けると言う常識はずれの話。


 様様な不思議を見せたお嬢様。破天荒のことだらけだけど、気づいたら、その魅力に夢中になっていた。そんなお嬢様に、いつまでも着いていきたい、彼女か見せてくれる景色を堪能したい、次はどんな不思議を見せてくれるか……いつの間にか、私は未来への憧れを抱くことができた。これはジークフリート様、クラリス様、そして誰よりも、お嬢様があってこその賜物。この恩は一生忘れられない……その心を救えなくても私は、お嬢様の幸せを見届けたい……


 目を開いたら、太陽が眩しくなりつつある、日光に起こされたようだ。映した自分の目元に赤い痕跡が残っている、けど、気持ちは晴れやかで涼しい。お嬢様はまだ寝ている様だし、顔を洗って、服と朝食を整えたら、お嬢様を起きましょう。


 こうして、顔を洗ってアンナは今日のお召し物、軽便で動きやすいシャツ、ズボン、ブーツを整え、コックに話を通した後、穏やかな顔で、同じく目元が赤いベアトリスを起こしに行った。


 「お嬢様、起きる時間ですよ〜」


 「……おはよう、アンナ。」


 微笑みを咲かせて答えながら、一雫を、目元から滑り下ろしたお嬢様だった……


。。。


 俺は花沢恵、十六歳で両親を失い、二十二歳で天涯孤独の味を知った男だ。家族は一人残らず、目の前で亡くなった、火葬も骨揚げも、自分の手でやって来た……けど、姉と妹の死は避けられたはずだった。あの時「一緒に自販機を探しに行こう」の一言を言い出せば、二人はテロに巻き込まれずに済んだはずだった……


 でも外科医が言ってた、「あちこちにテロが起こっている」って、それが本当なら、動物園から連れ去っても、テロに遭う可能性は消えない……運命なのか?こんなものが神が定めた俺達の運命なら、俺に……?そう思い込む果て、俺は自分の命を終わらせた……


 だって、最後の肉親二人なんだぞ……しかも同時に……!俺は、父に言われた通りに……二人の幸せを見届けたいのに……せめて、二人が支え合える人を見つけて欲しかた。なのに、なのに……なんで、あんな理不尽な死を……!身勝手の考えなんて重々承知だ、でも……あの日俺が、二人の代わりに撃たれたら、二人は幸せでいられるだろうか……?


 俺が代わりにあの世に行ったら、二人はまだ支え合えたはずだった……否、違うか……立場を入れ替えっても、例え二人が生き残ったとしても……俺の骨を揚げて、二人はあれからの人生で、本当に笑顔でいられるのか?最も親しんでいた兄弟を失って、彼女達は、本当に幸福だと言えるのか?


 二人の容姿は決して悪くない、むしろ家族フィルター抜きで見ても、二人は美人だ。前世では、買い物に付き合った時、二人の山みたいな荷物を運びながらも、羨ましそうな視線を集めた……カラオケを押し掛けられて、受付でメニューを選ぶ時も、スタッフから「両手に花ですね、羨ましいことです。」っと皮肉されたし……旅行の時とか、写真に乱入して来る男まで出てくるし……しかも出かける時はいつも、ナンパと演芸関連の勧誘が止まない。そんな二人が二十代で、まだ曖昧の一つすらないことも異常だ、一部は番犬である俺のせいでもあるが……


 本当か嘘かすら知らない神に、魂まで賭けて家族の幸福を願う二人なんだ、就職はともかく、嫁出しして俺を楽にすることを思ったことない訳が……そもそも、あの二人が本気で動き出したら、俺に止める術なんて……あっ……!


 まさか、二人は、父との約束の最後の一言に注意を向けと、普段から一緒に過ごして楽しい顔を見せつけて、気付かせようと……俺に見せつける為にあんな「もう悔いは残ってない」のような顔で死を受け入れたのか……一体どこまで……


 本当に……不器用な気遣いだ……重すぎる……こんな願い、重すぎる……でも、見ていてくれ……母さん……父さん……佐織、詩羽、頑張ってみるよ。俺は、イヤ、私は、自分の幸福を探して、追い求めてみるよ……でもできるなら、佐織と詩羽……君達二人にも、今の両親と周りの人達から貰っているこの温もりを、分かち合いたかったな……


 「…お嬢様、起きる時間ですよ〜」


 アンナの声が聞こえて、新しい一日の始まりを意識したベアトリスは、目元に溜まった涸れない一滴を、微笑みで促した。


 「……おはよう、アンナ。」

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