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ただの雑談……?

「ん〜、やっぱり長年かけて熟成したハードチーズの味はたまりませんね〜」


「ったはぁ〜、そうか、気に入っている様で何よりだ。」


「そんなに飲んでだいじょうぶなんですか?、ジークフリート様は病み上がりでしょう?」


「はっはっはっはっ、これしき問題ないさ、昨日のリハビリ戦も見ただろう?」


「ふふっ…それは弟から聞いたわ。病み上がりな身なのに、単身で暴走しているアグレックスを牽制するなんて、さすがは帝国最強の両手剣使いね。」


 前菜を食べながらアクトレスはお父様と雑談し、お父様も豪快に自分のエッグノッグを飲み干し、またジョッキに酒を足した。


「——それにしても、このドームはガラスを大量に使ったのに、飲み物の器はすべて銀製なんですね。ひょっとしてガラスよりフラワル夫人は銀の器がお気に入りかしら?」


「そういうワケではないわ。もちろんガラスの器は綺麗だと思っていますが、銀に比べて脆いし割れたら破片は子供に危ない、うちには向いていないのでね……はいっ、あ〜〜ん。」


 話している間に、クリームスープの入れたスプーンをお母様は私の口際に送った。こう言う世話はアンナがしていたし、二歳頃から自分で食べるようにしたし、ちょっと慣れないな……


「ほれっ、焼き魚だぞ〜、リズぅ〜」


 ワイルドおじさんに甘い顔されるのはちょっと引くけど、笑顔見てると、なんだか胸が温かくなる……両親に食事の世話をされるのは 案外悪くないな。


「……ところで、昨日のアグレックス討伐、戦車からバリスタでやつを拘束するのはは実に見事だったな〜指揮を取っていたのは確か、君達だね?」


 焼き魚を噛みながら、私は問題を投げた人の視線を追って、話題の主人公の方に向いた。


「どうして私達だと……そこにいるハンターはみんなヘルメットを着用してたから顔は見えないはずだと思いますが……」


「あはっはっ、エルフだからな。」


「はぁ……」


 あいつ、自分の目を指して何を……あ〜、そういえば、まだ赤子だった頃、私に街を見せるんだったけど、お父様がべロックスを止めたな……たしか「これ以上近づいたらリズが見られる」とか言ってたっけ……あれはこう言うことだったのか……


「あの時の戦車長は確かに私どもでしたけど、なにか……」


「アインハイゼのハンターはみんな優秀だと聞き及んでいるぞ?その中ではクルガという人物がずば抜けているだと聞いたが、若い君たちも噂通り……いや、噂以上だったね。」


 うわっ、いきなりイケメンスマイルだな……って、ん?


「えっ、あの…その……こ、光栄です、閣下。」


 恥ずかしいからか、相手があまりにもイケメンだからか…クレアが目を逸らして、頬もちょっと赤くなってきてる……


「アクタ、人をじろじろみないで、ヒト族の娘までなびかすつもり?」


 えっ?、なびかす?……まさかこの男、女を誑かして玩ぶクズか…


「あっははっ、姉上は『ヒトの子は可愛い』と思わないのかな?」


「ふふっ、それは確かに、ついついからかいたくなる…それに、もしも混血の子があったら、その両親は異族生育の参考にもなれますしね。」


「リリアン陛下は六名の皇子皇女も産んだし、コリエル姉上にも頑張らせて欲しいですね〜」


「頑張ってどうにかなれることじゃないのよっ、でも…くふっ、急かさなくても、姉上と陛下の子はきっと生まれるわ。」


「おや、なぜ姉上はそう言い切れるのかな?」


「ふふっ、女の勘よ。」


 うん?アクトレス、ダンの方を横目でチラッと見たような……ひょっとして、ダンの血筋を薄々気づいてるのか…


「エッヘン…陛下の噂話は控えた方がよいのではないかしら。」


「まあ〜、そうでしたね、ではこの話はこれで切り上げましょう。ハンターの方々、先程の話は他言無用でお願いしますわよ〜」


『…承知致しました。』


 三人が同じ言葉でアクトレスの要求を答えたあと、食卓を囲む人々は静かになった。 にしても、本当に静かだな…みんな食べているけど、なんだかエルフ姉弟だけ寛げられてる気がする。 確かターシアはダンの知り合いだったようだな……ちょっと聞いてみるか。


「ターシア先生、ちょっといいですか?」


「っはい、なにかご用でしょうか。」


「用とかそんなことないよ、肩の力を抜いてください……さきほどの様子、ダンさんとは知り合いに見えますけど、お二人は仲がいいんですか?」


「去年の獣潮でダン様が重傷で入院した時、彼の主治医を担当したのが偶々わたくしでしたので…」


「そーなんスよ、ターシアさんのおかげで俺のケガはほぼ完治なんだ。ずーっと礼を言いたかったけど、なかなか会えなくて困ってたんスよ。」


「ッ……医師としての責任を果たしたまでだから、そんなに感謝しなくても…」


「そんなこと言わずに、礼と言っちゃなんスけど、良い食事処知ってるっすから、今度一緒に行きましょうよ。」


「お気持ちはありがたいのですが……」


 ターシア…自ら距離を置いている様だな。まあ…しょうがないか。ヒトの寿命なんてあまりにも短い——生まれたそばからあっという間に成長して、子を作って、育てて、老死する——姉さんが飼ったハムスターの様に——タツビトからすると、ヒトもドワーフもオニも、みんなそんなもんかもな。


「まぁまぁ〜その話は帰りの時に回そう、せっかくの料理が台無しだろう?」


「そうっスね。そうするっス。」


 …さすがベテラン、ナイスフォローだなクルガ。


「にしてもこのスープ、去年の依頼でベアトリスお嬢さんが作ってくれた煮物を思い出すねぇ〜」『プゥーッ!!』


 クルガの発言を聞いたとたん、ショックでジークフリートは口の中の酒を器に噴き戻し、クリームスープをスプーンで私の口に送っていた母もビクッとして固まった。


「ななななんだとォー?!」


 顔をハンターたちの方に向いたからこっちは表情見えないけど、父のこんな荒っぽい声と動きは初めて見た…てヤバい。これお父様とお母様に聞かれてはいけない話かも…!……どうしよう、お父様だけではなく、お母様もものすごいショックを受けたみたい……じゃなくて顔こわっ!?


「ベアトリスぅ……どうして料理ができること教えてくれないの〜?」


 えっ、そっち!?ていうか、不満の顔も超美人……


「なんてことだ……俺としたことが……不覚だ…!」


 え?なに?何の不覚?


「クソォー!娘の手料理食い損ねた!!!」


 っ…そっちかよーって……そういえばうちの両親って娘大好きだった…忘れるとこだったわ……


『主様、本日のメインをお持ちしてまいりました。』


「はァ……ふぅ…来たか、入ってくれ。」


 ダインイングの扉の外からメイド長の声がして、何回も深呼吸してようやく落ち着いたジークフリートはそれに返事した。入ったメイドさんと執事さんたちから…いや、もっと正確にいうと、彼らが押しているカートからめちゃくちゃいい匂いが……ハーブとかスパイスとかそんなもんじゃない、単純な油脂の香りだ……ッ。まだ蓋に閉じ込まれているのに、なんて香りだよ……!


「仰せの通りに、アグレックスのテンダーロインでサンドイッチを作りました。有りの儘の味を楽しめるように、単純に塩胡椒で調味し、パンはグリドルに残された油で軽く焼き目を付けた物でございます。」


 料理を振り分けた後、メイドさんが蓋を取り外した途端、香りが爆発的に襲って来た。その元であるアグ(アグレックス)サンドは皿の中に寝て、圧倒的な香りで自身の存在を示している。


 アクタとフランシス以外の男性に振り分けたのは、分厚い肉と野菜を丸いパンで挟んだハンバーガー風のサンドイッチ。女性と公爵家の男性二人には上品に楽しめる普通のサンドイッチを配られた。


「うっ…うまそうっスね……」


 男だけどこのリアクションなんかかわいい、まだ若いからかな……というか、私どうなってるんだろう、男だったんだぞ私は! ()()!、なのに男性がかわいいって……っ!


「はっはっはっ、そうだろうそうだろう〜 遠慮するな、好きなやり方でってみろ、うまいぞ〜」


 ためらったが、ダンはサンドイッチを其の儘手で食べ、一方クルガはパンを取り上げ、肉を薄く切ってからフォークで食べた。食べ方は異なるが、共通点がある——サンドイッチを平らげるまで手を止まらなかった。


「…あれっ。」


「…マジかこれ……」


「ガッハッハッ、うまいだろう。今日は打ち上げだ、好きなだけ食え!」


「マジスか!おっーしゃ〜!」「ふっ、礼を言うぜ、旦那。」


 二人とも楽しそう。それに、クレアも心躍ってるようだ、よかった。


「さあ〜、リズもお食べ〜♪」


「うん」


 母から受け取って、手の中で光を放つようなサンドイッチを見つめて、私は思わず唾を飲んだ——この肉、まるで完璧な焼き具合のサケだ、仄かに半透明で不安はちょっとあるけど、肉の香り以外に、濃厚なクリームっぽい香りもする、きっと火を通してる…かな……


「…いただき…ます。」


 サンドを口に入れた瞬間、炙った油脂と麦の香りが鼻腔を一気に突き抜けた。歯で当てると、身の柔らかさが伝わると同時に汁が滲み出して、野菜の折り目に沿って舌に落ちた。噛み切って味わい始めたと同時に、母がナプキンで口角を拭いてくれた。


「どう?おいしい?」


「…おいしい……です。」


 すんごい脂が乗ってるのに全くしつこくない。噛むたびに旨味が滲み出してきて、芳醇な肉汁が激流のように口の中を走る。それにこの肉、ふわふわなサケとは違って、ちょっとだけ弾みがある……あれ(アグレックス)がこんなに美味いなんて思いもしなかった……これは帝族主催の宴に使われるだけはあるな。


「ふふっ、そっか、おいしいか……早く元気になるように、お腹いっぱい食べてね。」


 微笑みで私の世話をしながら、お母様もサンドイッチを取って食べ始めた。私たちの様子を見て、他の人たちもサンドイッチを取って食べ始めた。


「クラリス様のへの愛情はタツビト並みですね、わたくしもそんな風に甘やかされたいですわ〜、最近ずっと駆け回っていて、正直疲れましたよ…」


「それでしたら、婿様に頼んでみてはいかがかしら?彼もきっと喜ぶと思いますよ。」


「そうですね……そういえば、ここの街の書店に入る時はワクワクしましたわ〜♪見てください、これをっ」


 カバンから…一冊の本?これは……なるほど。


「塗りつぶしも誤字も一切なし、この読みやすくて綺麗な書き振り、しかも驚くほどに一致している、人手で作成したとはとても思えません♪」


「たしかに、たとえ王公の書庫とアカデミーの図書館でも、この様な書籍は極めて貴重だというのに、ここではどの書店にでもあるとは…いったいどんな方法を?」


「さあ…うちは人手不足なんですから、そんな暇はありません。どこか名の知れぬ者が思いついて広ませたのでしょう。」


「なるほど、いつか発明者に会ってみたいですね〜」


 わざと知らないふりを……たしかにフラワル家は長年人手不足で困っていたけど、お母様の手腕でフラワルの領地経済と建設は順調に進んでいる。それに彼女は私と夜ばなしする余裕がある、それほど優れた能力を持っているんだから、自分が思いついたと言っても問題ないのでは…


「しかしよくよく考えるとあれほどの量の書籍、短時間で生産するのは難しいと思いますけれど……ターシアさんは医者ですし、病歴に使う文房具を調達しに書店に行かれると思いますが、何か教えられませんか?」


 たとえ相手が他種族の平民でも、この姉弟は礼を持って接してるな。二人の叔父おじとは大違いだ。


「恐れながらその話は存じ上げません。私に世間話を聞く趣味はいませんし、患者の静養をつかえない様に病院の廊下や事務室などでは無駄話禁止なので。」


「そうでしたか、それは残念ですね…」


 すごいなー、相手が公爵家の人間なのに全然動揺しないし、その上簡潔な言葉で出される前の質問を止めたぞ……まあ、当然か。見た目は若いけど、ここの誰よりも年上なんだからなぁ……にしても、公爵家の人間なのに、活版印刷を知らないのか……隠すつもりなかったし、仕組みも単純だから、すぐ世間に知れ渡ると思ってたけど……


「では、ハンターの方々は何かご存知かな?」


「さあ…自分はこの間退院したばかりなんで、外の話はよくわかんないっス。」


 いやっ、入院しても見舞いに行って世間話する人くらいあるだろう……そんな簡単に誤魔化せるワケ……


「まあ〜、怪我をされていたのですか?」


 えっ?


「ちょっと無理な立ち回りしてたから、いい教訓になったっスよ。」


 …いつも通りの爽やかフェイスだ…ウソをついたばかりなのに……


「ふふっ、そうか……ならこの話はよしとしましょう——」


 ……ん?、後に向いて何を…


「ねぇ〜フランシス、ベアトリスちゃんに話したいことがあるんでしょう?」


「やれやれ…姉さまにはバレバレですか〜」


 アクトレスの呼びかけにのびのびした声を返し、一人で静かに食べていたフランシスは立ち上がり、アクトレスに寄った——話たいことってなんだろう……


「唐突なのですけど、ここ二日でいくつか興味深い噂を聞いたので、確かめたくてね……」


 何を言いようと思えば、まったく厚かましいやつだなぁ……押し掛けでうちに泊まっただけで迷惑なのに、食事をしている間に噂の真偽を確かめたいだと?——たしか、姉さんがよく読んでた少女漫画にもこう言う展開あったな……よし、あのヒロインの対処をお借りしてみるか。


「今確かめるんですか?」


「はいぃ」


 まずは無邪気な顔で頭を軽く傾けて、好奇心を表現する。中学ん頃の詩羽もよく言ってた「かわいい女の子のモエシグサ」その三——質問する時は頭を軽く傾けること——まさかこれを使う時が来るとはな……とにかく、今の私はコーラー(caller)で誘き寄せた獲物を照準器で覗いてるハンターだ……!


「どんなウワサなんですか?」


「そーですね……」


 よし、掛かったようだな。


「ここ二日、まちを巡る時に、古くから言い伝われた天災を領主の一人娘が立ち向かい、気魄で追い返したという噂をお伺いしましたが、実に興味深いですね〜お嬢ちゃんは普段から鍛錬をしているのですかねぇ?」


 なんなの?、その噂を事実だと確信してるような言い方、まあ確かに事実だったけど……


 「お嬢ちゃん?」


 おっと、話は答えないとな。


「体を鍛えることって、普通だと思いますけど……」


「うんうん、確かにそうですね……しかしこの家には、あなたの様な少女に似合う機材は見当たらないのですが、普段はどうやって鍛錬していたのかなぁ?」


「あぁ………」


「?」


 危うく「貴方には関係ないではありませんか」と、漫画のヒロインがした様に即答した……それでは子供らしくないし、円滑さにも欠けるよな……それにあのヒロインが叱った相手は彼女より身分が低い、シチュエーションが違うから通用しないかも……よし、ちょっとアドリブ入れていこう。


「——あの…、立派な淑女レディになるための鍛錬に、どんな機材が必要なんですか?」


「…あ〜、なるほど そうでしたか、てっきり父を憧れてハンターになるために鍛えているかと…」


「そんな鍛錬はしていませんよ……」


 よし、ここでトリガーを引く。


「ちょっと僭越な話なんですけれど……フランシス様は、世からかけ離れたお方なんですね。」


「おや?それはなぜです?」


 こんなに厚かましい人は初めて見たな……でも、その方が都合がいい。


「人の家で…しかも客の前で主人しゅじんの娘の噂を語ることって、すごく失礼だと思いませんか?」


「……あはっはっ、私としたことが、フラワル伯と夫人がなにも言わなかったからってぺらぺらと……ご容赦くださるでしょうか?」


 失礼だと知ってる上でやっているのか?……この人、世の中のおきては知っているのに、都合でわざと守らないのか……?まあいいっ、これでやるべきことは一つだけだ。


「ご安心ください、私は怒っていません……ただ、ちょっと気分が悪いので、失礼させていただきます。」


 そしたら私は母のももから降りて辞儀をして、ホールから出て行って自室に戻った。そのあと食事を届きに来たアンナの話によると、あのあとフランシスは私の両親にめちゃくちゃ怒られ、夜中なのに放り出されたらしい……

みなさんお疲れ様、銀魚ぎんぎょです、一ヶ月半ぶりの更新、お待たせしました。


なぜ今回は一ヶ月半掛かったというと、一ヶ月半前から新しいバイトを始めたからです。昼は食事処、夜は居酒屋になるお店なので、覚えないといけないことがたくさんあってすごく大変でした。シフトは週に二日だけですけど、僕は体力なかったし、もとからコンビニのバイトあるし、とても筆を握れる状態ではなかったです。


でも、ブックマークしてくれた方の為にも、これからお読みになる方の為にも、僕自身の夢と将来のためにも、頑張って更新します。それではまたお会いしましょう。

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