新しき未来へ
さて、役立ちそうな物を探しに潜ったけど、案の定この水牢の底には、散らばっている石ころと人が通れない水路以外は何もない。まあ石ころは強いて言えば飛び道具だし、敵の注意を引きつくデコイにも成れそう……思わぬところで役立つのもあり得そうだし、とりあえず幾つか貰おう……
石を持って水面に戻ったら二人分の声が聞こえた、その話に聞く限り今は交代の時間だ。でも私にはチャンスだとは聞こえないーー水牢は使い方に依れば死刑の一種になる。6時間以上常温の水に浸かっていると人は低体温症で眩暈、震え、硬直、判断力低下などの症状が発生する.12時間以上水中に居ると個人の生還率は大きく下げ、最終的に凍死する。もちろん、死にたくないなら頭がまだ利くうちに体を乾かすべきだけど、この場合、それは基本的に無理だ。
私が弱まっていないのは相手にもわかっている、だから交代中でもきっと怪しい音に警戒しているはず、うかつに動いて注意を引き付けることだけはしたくない。体に異状がないのはありがたいが、あと何れくらい持れるかがわからない……冷静に考えるべきだ。まず、目を開いた時、指先にまだ皺が入ってない、つまり水に放り込まれた時から経った時間はまだ20分未満……いや違うか。
私にとって、「指先に皺が入っているか」はおそらく余り参考にならない。髪の量がまるでナイアガラの滝だから、それを洗うのに指先は皺々になるはずなのに、自分の指先に皺が出たところは見たことはないーー最初は「沸騰樹」の樹液が余分な水を吸収し、別の何かに変換したのが原因だと思ったけど、アンナの指はちゃんと皺々になるのを見たら、自分が異常だと言うことをより一層体感してしまった。
まあそれはさておき。相手は最初から私を殺すつもりでいることからすれば、水牢に放り込んだのもそのつもりでやっていると思える。どんな力持ちでも足場を失えば無力、たとえそれが私でも例外はない。相手もこれだからって、水牢が突破された時の対策を用意していないほど甘くない。
総じて見れば、一人でここから脱出するのはホボ不可能、さすれば、できるのは一つだけーー死なないように努力して、救援が来るのを祈ること……と言っても、体を乾かす手段を持たない以上、できるのは意識を保つことだけってとこか。…悔しいけど、ここから脱出するのは私一人でどうにかできることじゃない。しかもこのような事態になったのは、勝手に保護者から離れた私のせいでもある、帰れたらクレイナさんとみんなにはきちんと謝らないとな……
考えているうちに、上からの人音はまた一人分になった。どうやら交代は終わったようだな……
「…クソったれが……なんでヒューマなんぞの子供一人を見張りに五人もつくんだよぉ、あんな麻酔針一つですぐ倒れるやつの何が警戒すべきだ……侮ってはならないと言っても、水牢に放り込まれた以上、豚と変わらんじゃねえか……」
イラっ……不愉快だけど、この情報はありがたい。今ある手がかりで判断すると、私の見張りに当てている看守の総数はおそらく30人以上ーー1日3回の頻度で入れ替わりを行なっているとすれば、その数は少なくても15人、数自体が罠の可能性も考えれば、この数は倍にしたほうが妥当だと思える……「1人に30人をつくのは流石にやりすぎじゃないか」と思われるかもしれないけど、その考え自体が甘い。
ここは元の世界同様、魔法など存在しない。モンスターの存在によって文明はいくつか影響されたけど、どんなに強力なモンスターでも単体で大軍には勝てない。私にモンスター並みの身体素質があっても、気づかれず水牢から脱出すること自体が難儀だ、石ころで敵の注意を引きつけてテークダウンを行うにも、気付かれていないことが必要条件。敵の首脳は私を見下しているが、見縊っていない、子供相手に水牢を使うことからすればわかる、その用心深さは過剰だと言ってもいい。
考えれば考えるほど抜け出せる気が無い、どう見ても私は追い詰められてる……でも、今はまだメゲる時じゃない。
母に心を解られる前だったら、「助けは来ないかも知れない、自分で抜け出さないと」と思い込んで、この八方塞がりの状況を前になすすべなく希望を失うかも知らなかった。でも、それはもう過去だ、今の私は、「ベアトリス」として信じている、騎士たちを、ハンターたちを、友人を、そして誰よりも…家族を。一年前の事があったから、この絆は偽物じゃないんだと思えた。だから信じている、助けは来ると。
あれから、体感で何時間経過した、驚くべきか、体の調子に異常はない。気のせいか、天井との距離が少しずつ近づいている気がする、潮汐かな…てことは、外はそろそろ夜になるか。抜け出したいなら今が好機だ、上にいる看守さえどうにかできれば……と思ったら、あの聞き慣れた声が聞こえた。
「交代の時間よ。」
「やっとか、待ちくたびれたぜ…水牢に投げ込んだヒューマの子供の見張りによくもまあそんな積極的でいられるなおまっ……」
「子供を水牢に……ケダモノ共めが…」
鉄の扉が開く音と共に、話していた男の声は突然止まった。その後仄かに嗅げた、いつも髪洗いに使っている樹液の特有の香り……それにあの声も、アンナだ!アンナが来てくれた!
そう思ったら扉が閉ざされる音が立ち、上にいる鉄窓は開かれ、それを通してフードを被っていた人が其の顔を現した。
「遅れになって申し訳ありません、お嬢様、お怪我は?」
いつも通りの微笑みだ、とても敵地に潜入してきた様子が見えない。油断は禁物だけど、今はちゃんと伝えるべきことを伝えよう。
「来てくれてありがと……看守の人は?」
「それは知らない方がいいですよ。」
よく見るとアンナの顔とフードに赤い跡と泡がついてる、つまりは、殺ったのか……
話している間に、水面の上昇のおかげで、出口はもう目の前にある。私はアンナがさしのべた手を掴んで引き上げられ、地上に立つ感覚をもう一度味わうことができた。体は普段より重く感じるけど、気分はそれとは真逆。
「ママは?」
「奥様なら、外の拠点で殲滅作戦の指揮を執っています。」
「そうですか、殲滅作戦を……え?センメツサクセン?救出作戦じゃなくて?」
「はい、お嬢様を攫った輩に対し、奥様は激怒し、一人残らず始末するお考えでございます。騎士団の方々はもちろん、『友』も大量に呼んできて、蟻一匹たりとも逃さない体勢です。」
友?そういえばお母様に友人があったのは全然知らなかった…しかも、「娘を誘拐した者は皆殺しだ」て…そんな物騒な人だっけ……まあそれはともあれ、石ころは…もう要らないか。
「お嬢様のご無事を存じ上げたら、奥様はきっと大喜びしますから、とりあえずマントを着て、ここから抜け出しましょう……それは?」
「水牢の底で拾った石ころっ…」
なんだか、今の展開はイメージと違い過ぎて、逆に何を言えばいいのかわからない……イメージは水牢から抜け出したたら闇影に潜みながら、この場から潜り出して情報を持ち帰るはずだったけど……
「…脱出に役立つかなと拾ったけど…話に聞くと必要なかった気がしてきて……」
そう言いながら、私は石ころを水中に投げ戻し、アンナからもらったマントを受け取って被った。
「…お嬢様もいろいろ考えたのね……ですが、それはもう要りませんよ、出口に繋ぐ道はすでに確保しているわ。お嬢様はただそこを進めばいいのです。」
その話の調子に楽しそうなものが感じた、そうか、進めばいい…か。
「うん、わかったわ。」
知らないうちに、たくさんの人が私の味方になってくれたようね、まるで、父の会社を受け継いだ時のように……なら、今の私にできるのは、なんだ?…わからない、報ってやりたくてもどうすればいいかがわからない。だから出口への道を歩く時、私はアンナに尋ねてみた。
「ね、アンナ。」
「はい?」
「私は、助けに来た皆さんに酬ってやりたいの、でも、どうすればよろしいのかがわからなくて……」
すると、アンナの含み笑いの声が聞こえた。
「…私、変なこと言ったの?」
「くふ…なにをおっしゃっいますか…お嬢様は子供です、子供を危険から助けるのは当たり前ではありませんか。」
「っあ…」
言われてみれば、子供だとは自覚しているのに、いつも社会人しか思わないことを考えてしまう自分は確かにおかしい。前世の十五歳頃からずっとこうだったかな……もうちょっと子供らしく生きた方が、いいのか…?
「『迷惑をかけた、苦労をさせた、だからそれなりの報いはせねばならない』、今はそのようなことは考えなくてもいいんです。たとえ子供ではなかったとしても、お嬢様が感謝の一言さえ預かってくれれば、皆様は喜ぶはずですよ。」
アンナの言葉が止まった時、私たちは出口についた。しかし、そこにいるものは私の想像をはるかに超えてしまった。
地面には獣竜と奔竜の大軍が陣を取り、天空にも飛竜の群れが飛び回っている。その光景は宛ら、「獣潮(じゅうちょう)」、しかしたとえ本物の獣潮でも、モンスターはここまで集中しないはず……
アンナの先導について進む途中、見えた。目立つ白髪で紫色のドレスを着て、獣竜と奔竜たちの先頭でバルフェングに囲まれているのは……っ!
「アンナさん、あの人、もしかして……」
「はい、あれが『湖の女王(レイクスレギナ)』、英雄ジークフリート様の背中を支える貴婦人であり、湖上貿易都市アインハイゼの実質的指導者、そして、お嬢様のことが誰よりも大事に思っている、クラリス様その人であります。」
顔は一緒だけど、雰囲気の違いがあまりにも大きくて、母に双子があったかと思ってしまった。あの髪型は何?普段は三つ編みでもっと穏やかなイメージなのに、解れたら雰囲気が全然違う、まるで、万物を従わせる『女王』のような気迫が感じる……!
驚きはまだまだここから、なぜなら、私がまだ気を取り戻していないうちに、バルフェングたちがこちらへ向かって駆けてきた。そして中にずば抜けて早い子が二頭だけある、気づいたら、二頭はもうこっちに向かって飛んできて、私を押し倒した。
当然、二頭はアインとヴィア、いつも私にべたりつきたがる双子の白いバルフェングで、同じ年生まれだからある意味幼馴染の様な存在だ。
押し倒された間、知り合いの声も聞こえてきた。
「お嬢ぉお〜!」「お嬢様ぁあ〜!」
ダンとクレイナも来てくれた。その後ろに候補騎士のハンター十数名もついている。
「お嬢、怪我はないか。」
「ええ、体は…ふっ!、この通り、全然平気ですよ。」
怪我はしていないと見せるために、私はアインとヴィアをそれぞれ片腕で持ち上げた。痩せ我慢じゃないかの心配を無くすために、私は笑ってみた。ダンもそれで納得できたようで、安心して顔を綻びた。対してクレイナの方は……
「申し訳ありませんお嬢様、私(わたくし)めの油断でひどい目に遭わせてしまって…どんな処罰でも受けます、たとえそれが死でも文句はありません!」
「えっ、姉ちゃん?」
考え過ぎがちなのは早々変わらないか……まだ遠くにいるけど、お母様はあんな髪型になるくらい激おこのようだし、そう思ってしまうのも無理ないか……一先ず伝えたいことは伝えよう。
「いいのです、私からは罰は与えません。私の方こそ、思慮に欠けた行動で迷惑をかけてしまってごめんなさい。むしろ来てくれて嬉しいわ。」
「そんな……お嬢様は何もしていないのに、ご自身を責めないでください、主君の安全を守るのは侍者の務めです、私の責任ですから!」
それほど言われて膝まで突かれたら言い返しがないな……よく忘れるけど、私はもうただの庶民ではない、伯爵の一人娘だ。この身に何かあったら、責任問題はとんでもなく複雑なことになる。うちの親は私をものすごく大切にしてるし、死刑までは及ばないけど、ことが済んだあとにかなりの罰が降されるかもな……酷い目に遭わせないように私がお母様に事情を話さないと…
「その話は事が済んだ後にしましょう。」
「…はい、かしこまりました。」
ひとまず納得してくれたようね、良きよき。
「…え?」
あっ、つい妹感覚でクレイナの頭を撫でてしまった。
「あははは…これで気が済めるかな〜って……、そういえばダンさん、あなたはまだリハビリ中でしょう?、どうして来たの?」
「…っあはは……モンスターと戦うにはまだ心細いけど、相手が同じ人間ならこれくらいで十分すよ。むしろ動けない間に体が錆びてるし、このくらいはリハビリにちょうどいいってとこっす!」
熱血バカみたいなセリフで親指立ちと爽やか笑顔までバッチリ決めやがって、去年の潮で重傷を負ったとは見えない…、太い眉してたら、「燃えろ青春!」とか叫び出しちゃうかも……でも、その姿は頼もしくて、イヤじゃない。
「それは頼もしい、護衛してくれるかしら。」
「おお!もちろんすよ!」
「よし、そうと決めたら、早速お母様の方に行きましょう。」
そう言いながら、私は一跳びでアインに乗り、バルフェングたちに合図を出した。
目測五百メートルくらいの道のりだけど、バルフェングたちは速いから、十数秒くらいでつく事ができるはず。その間で後ろ向いてみたら、そこには巨大な建物があった。いや、正しく言うには遺跡だ。見たところ、あれはおそらく雲にさえも届く巨塔だった、けど、今のあれは緑に覆われ、荒れ果てた廃墟にすぎない。
塔は両断され、その瓦礫から丘が作り出された。崩れた塔の上半部分の一部はその上に寝ていて、地面との激突で折れたと思われるもう一部は砕き、長くて険しい坂道となった。そこに竜人を乗らせている獣竜の姿がいる。あの人たち、クロスボーで何を……
クロスボーの狙い先に目をつけてみたら、そこには大量の人影がいて、しかもクロスボーに撃たれ次々と倒れている、あれって……
そう思っていたら、アインはすでに私の母の前で足を止まった。私が反応できる前に、お母様は私をギョッと抱きしめ、耳元で……
「お帰りなさい、ベアトリズ。」
と囁いた……すると、惨烈な光景を見たばかりで、泣く気分でもなかったのに、涙が勝手に目から垂れてしまった。
「…ただいまっ、ママ。」
自然と口に出した。理由はよくわからない、ただ、この心地良くて安心な感覚はなんとなく懐かしかった……風景を眺める時も、勉強をする時も、風呂をする時も、寝る時だって、抱きつかれるのはしょっちゅうなのに……なんで?
「ちょっとだけ待ってて、悪者はすぐ片付けるから……二度と、怖い思いに遭わせないわ……!」
その目つきは普段と違くて鋭く、揺るがない決意を込めたように見える。片付けの意味もおそらくは……
「大空を舞う我が友たちよ、彼者らを悉く滅ぼしなさい…!」
彼女の声を合図に、空を飛び回っていた飛竜たちは人影たちの上空から、火球ブレスと落下攻撃を仕掛けた。その一回一回と共に、焔色と血色の花は咲き、焦炭と血肉の雨は降った。あれは…地獄と呼んでもいい光景だった。
「フォレストアイの残党たち……暗殺を数えきれぬほど仕掛けた事といい、再びの戦争を起こそうといい、人の家族を奪おうとした事といい、どれも許し難い重罪……、今此処で完全に葬り去りましょう。嘗ての気高さを捨てたあなた達のことを…歴史に変えます。」
お母様の言葉に怒りは込められていない、むしろ嘆きにしか聞こえない。フォレストアイ……確かエルフの内部分裂で負けた奴らの……再び戦争を起こそうとしているってことは、彼らは私を人質にしてフラワル家に資源を強要し、手に入れた資源で自分を強化して何かしらの軍事行動を発動しようとしていた……か?
私はおそらく、この疑問の答えを知る日を迎える事はない、なぜなら飛竜たちの攻撃は止んだ。つまりあの坂道の上には生存しているエルフはもう残っていない。
六年前、帝城に泊まる間に一度エルフに暗殺されかけた事があった……あれ以来、暗殺には遭わなかったけど、新生児の頃に護衛が物音に敏感だったのも、飼っているバルフェングの数を大幅に増えたのも、父と叔父の直伝弟子であるアンナが私の世話役だのも、もしかすると、この様な事態を避けるための対策だったかもしれない。
考えているうちに、バルフェングに乗っている竜人騎士数名がこちらに着き、陣列を取ってサドルから降りて私たちの前で跪き、顔を下げた。
「お帰りなさいませ、ベアトリスお嬢様、ご無事で何よりでございます。クラリス様、戦況報告がございます。飛竜の支援により敵の地上部隊はホボ壊滅。残りわずかの敵対分子は遺跡に潜り込まれたので、本隊は作戦の最終フェイズへ移行した、順調に進めていればそろそろ起爆の時です。」
キバク…?……まさか…!
私の直感を肯定しているように、爆発音が起き始めた。爆破で不安定だった古塔の壁は見る見る崩れて行き、その間に聞こえた爆音の回数は百回は下らなく、連続の爆破と瓦礫の崩落による地面の揺れは絶えなかった。
「旨く行った様ですね……戻りましょう、これで『フォレストアイ』はーー歴史です。」
信じられない、うそでしょう……遺跡ごと吹き飛ばして、文字とおり相手を歴史に埋め込んだ……!
飛び散る埃が落ち付き、土石が動く音も少しずつ収めて行く中、一つだけ異状はあったーーアインとヴィアだけではなく、他のバルフェングたちも急に林藪の方に睨みつき、牙を少し剥き出した……これって…もしかしてっ!
「アイン、ヴィア、行って!」
すると二匹は流星の様に飛び出し、数十秒後、遠吠えで合流の合図を出した。
「奥様、今のは……」
「バルフェングたちの異様を見て、リズにも同じことが頭に浮かんだ様ね……行きましょう。」
遠吠えの音について辿り着いたのは木々に囲まれた空き地、そこには装填、照準共に完成したの連装式バリスタ3機と、辺りの木の根元で倒れているエルフ十数人がいる。もちろん、アインとヴィアもここに居る、あの子たちは倒れた何者かの隣で座っている。
「っ……すげー、たった数呼吸の間でこれらを全部無力化したのかよ……」
心の中で、私もダンと似たコメントをした。それはさておき、倒れてる者たちの見た目からして、外傷はない様で、みんな気絶しているだけ。そしてアインとヴィアの方に寄ると、私はあの男の顔を見えた。
異世界の夜は明るいから顔はハッキリ見える、この人は目覚めた時に見た、あの文質で首領っぽい人だ。顔は美形で体もイメージに合うんじゃないかは思ったけど、よく見ればマントに覆われて見えなかった体はかなり仕上げている。なぜかこっちの人はみんな同じく、体が鍛えられてる傾向がある……まあ、モンスターだらけの世界で生き延びるためには、体が丈夫なのは必須かもな。
「グエン・フォレストアイ……、あの時も、今も、いつまでも侮れない男ね…バルフェング達の異状をに気付いて、まだ終わりではなかったとはすぐ気付きましたけど……まさか大人よりも先に指示を出したとはね…助かったわ、ありがとう、ベアトリス。」
「早くしないとみんな死ぬかも知れないって、焦ったから……」
竜人の騎士たちが男とその場を片付けている間に、私は母にこう聞かれた。
「リズはこれから何がやりたい?何になりたい?」
正直、この世界で暮らしてきた七年間、私も自分に同じ問題を聞いていた、でも、その答えが思い浮かばないーー「人生を謳歌する」と云う方向は一応あるけど、前世でまともな高校生活を送らなかったし、普通の社会生活を経験していない私には、人生を謳歌するために何をすればいいのかがさっぱりわからない。
私も彼らも、本当はまだ閉ざされているんだろうな……「過去」と謂う、変わり仕様のない檻に……これ以上同じ場所で止どまるワケにはいかない。私が自分に与えたの目標は……うん、今は先ず、あれを…!
「…先ずは、馬車の改良を完成させてみます。」
第二章もこれで終了、如何でしたでしょうか。第三章は今までとは違って、明るいものにしようと思います。違う話ですが、今のご時世には、パンデミック以外にもたくさんの難関が時に訪れますけど、一番気持ちが晴れる時ってやっぱり、難関を乗り越えた時でしょうね。では、またお会いしましょう。




