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バレンタイン&ホワイトデーエピソード:ちょっとだけ特別なアフタヌーンティー

 今はお嬢様の七歳の誕生日。でも、そんなめでたい日に彼女はーー日常のトレーニングをこなしている。


 さっき彼女がやったのは重量上げ、その荷重は旦那様の2倍になっている。獣潮が来る時にいつも最前線で街を守る人の2倍よ?しかもお嬢さまの成長はまだまだここから、十六歳になったら一体どうなるのでしょうか……


 なにより今までの生活で発見した様々な事の中、最も気づきやすかったのは、お嬢様の才能が底がしれないこと。まだ七歳なのに、バランスを崩さず縄一本の上で踊ったり、山の様な盤石を拳一発で打ち砕いたり、3階の屋上まで一飛びしたり、超人的ことばかり成し遂げてしまう。

 

 しかし、貴族令嬢は戦わないから、わざわざ力を付ける必要はないはずなのに。お嬢様はトレーニングを続けるわけがあるとおっしゃいました。


 メニューを完成していくお嬢さまの颯爽な姿は目の薬ですが、そろそろあの件について話かけよう。


「そういえばお嬢様、今朝、お嬢様目当てのお手紙と贈り物がございますよ。」


『カチャッ!』


 振り落とされると共に、お嬢さまが握っている長刀(ちょうとう)の柄は激しい動作によるストレスに堪えきれず、また真っ二つになってしまった。


「あっ…ちゃー、寿命か…」


 これで何本目でしょう……やはり職人に依頼して、改まった物を作ってもらう方がよいでしょうか…


「今日はお嬢様のお誕生日、早くお戻りになって、誕生日を祝うのはいかがでしょう。」


「ありがと、でも手紙を先に読みたいわ。」


「かしこまりました、こちらです」


 手紙をお嬢様に渡したら、真面目な顔で読み始めた、そんなお嬢様の顔も可愛くてしょうがない。そして時に見せる温かい微笑みは特に眩しい。


「お嬢様、楽しそうでいらっしゃいますね。」


「ちょっと帝都に招かれただけっ。」


「へ〜?さてはクーゲル殿下からの手紙でしょう。」


「そうだけど、どうしたの?ニヤニヤしてて。」


 相手はお嬢様への好意をアクセサリーで示したお方、しかも皇子、そんな方が招きを送ったこと自体が喜ばしい!お嬢さまも笑っているし、もしかしたらこの二人、イケる?でもここは平常心、平常心…!


「いえなにも。そんな事より、この後どうされます?お風呂で体を暖めるのがおすすめですよ♪」


「それがいいですね、そうしましょう。」


「かしこまりました…それでは外套がいとうをお召しになってください。アインとヴィアを呼びます。」


 お嬢様が外套を着る間、指笛に応えて現れたのは毛並みが真っ白で血色の瞳を持つバルフェング。リーダーペアの双子長女で、それでも十分レアなはずですが、二頭は白子しろこ。今まで観測記録が残された個体は10体に限るし、時期も甚だしく離れている、こんな偶然が発生する確率は想像がつけません。


 お嬢様とは同い年で生まれたから、ある意味幼馴染。今、二匹はお嬢様の腕を軽くかじって甘えてる。「遊ぼう」って言ってるのね、可愛い。うちのバルフェングたちはみんなお嬢さまと奥さまのことが大好きだものね。


「はいはい、カジカジはお終いっ。今日はヴィアの番ね、家まで送ってくれる?」


 軽く尻尾を振り回していて伏せたアインの背中に乗った後、お嬢さまもヴィアに乗って、二匹とも立ち上がって、いつでも駆け出せるように準備をした。


「速い方が明日の当番ね。位置について、ヨーイッ……ゴー!」


 お嬢さまがかけたスタートの合図と共に二頭はダッシュを始め、風をも遠く後ろに突き放し、瞬く間に屋敷まで連れ戻しくれた。その間に感じられる寒さは南方の極寒地帯の寒さにまで及ぶ、でもお嬢さまはそのようなことが好きのようです、きっと髪のせいでしょうね。


「よしよし、二人ともがんばったっ。今日はアインの方が早かったね〜明日もよろしく、帰っていいよ〜…っ、ちょっと、くすぐったい…」


 ヴィアから降りたお嬢さまはまたすぐ二頭に絡まれた、バルフェング達は「そんな…もっと遊ぼうよ、まだまだ走れるよ。」のように見えて、その絵図はとにかく微笑ましい。今二頭がしていることは六年前のあのアングティグアと似ている、でもお嬢さまはもうこんなにも大きくなったなんて……


「にしても、本当にモンスターに懐かれやすいですね〜覚えていないとは思いますが、まだ赤子だった頃、アングティグアにすりすりされた事がありますよ♪」


「ん……」


 お嬢さま、少しボーっとしたけど、相当のショックだったのでしょう……飛竜にほっぺすりすりされるなんて、冗談にも程があるけど、これは紛れもない真実。


「そんな事あったの?」


「ええ〜、普通の赤ちゃんだったら大泣きしてたはずなのに、あの時のお嬢さまは全然動じないのよ。プルガフィニスの時もそうだったし、お嬢さまの勇気は生まれ付きですね♪」


 そう褒め称えたら、お嬢さまのお顔がちょっと赤くなって、声量も小さくなった。


「……流石に、言い過ぎじゃないかな。」


「そう思うのならそれでいいんです。さあっ、まずは中に入って、お部屋でお待ちになってください。直ちにお風呂の準備を済まして参りますので。」


 扉は開いたものの、バルフェングたちは伏せたままお嬢さまに絡めついていく、まるで『もう終わり?もう少し遊ぼうよ。』と言っているようで、もっと構ってやりたい気持ちが湧いしまう。


「こらこら、帰らないとお風呂に引き込むわよ?」


 お嬢さまにこう言われたら、バルフェングたちは満足していないような雰囲気で絡めつくのを諦め、牧場の方へ戻ったって行った。


 そうして、お嬢さまは一人でお部屋に戻り、私は風呂の準備をしに行った。


 お湯を暖めた後、私はお嬢さまの部屋の門外で中の声に聞いて、入るタイミングを待つことになった。


「……パンデナスの次はどれどれ…『雷爪竜らいそうりゅうーーブリクラレン、四足獣竜種、アペックス級、大陸西部と北部の密林に生息。飛行はできないが動きが素早く、強力な電撃で獲物を仕留めるのが特徴。おもに小型から中型のモンスターをしょくす、特にカジェルドンの幼体は好んで捕食する』。あのクソデカい竜脚類の幼体をか…にしても、『ブリクラレン』……動物に称号を与えるとか、合理性はあるけどなんだか中二病だな……」


 門の向こうで専念にモンスターの資料を読み、偶に分からない言葉を言い出すお嬢さまの声を盗み聞きするのは私の趣味。これは奥さまや旦那さま、同僚たち、そしてお嬢様にも内緒している私一人の秘密です。


 お嬢さまが読んでいる内容を口にするのを止める時や、同僚が通りかかる時は部屋に入る時。普段はノックするけど、今日は特別な日だし、ちょっと特別な反応が見たい。だから今日はちょっとしたイタズラをして、ノックせずに扉を開いて話しかけてみよう。


「お嬢さま、沐浴の準備が整えましたよ。」


「フワァッ!アンナさん……入る前はちゃんとノックしてよ…」


 真剣なお顔で巻物に目を通していたお嬢様は急な話し掛けにビックリして、思った通り、いえ、それ以上のカワイイ反応を見せてくださいました。


「ふふっ、いい反応でした。」


「んもう……」


 このような事されても怒らないのは、お嬢さまが優しいからでしょうね。そのあと、あたたかいお湯でお嬢さまの体を洗い、沸騰樹(ふっとうじゅ)の樹液を使ってその絹のように透き通る銀髪を綺麗に洗い上げた。


 「沸騰樹」とは帝国東南方、竜人族の領土だった一帯に特有とされている長生な樹。その樹液は洗浄性能が強く、肌にも優しい万能洗剤。汚れに塗れば泡が出てきて、軽く沸騰しているように見えるから、「沸騰樹」と名付けられたと云う。


 それを使って物を洗う時は綺麗になるまで少し時間は掛かるけど、その間に花の様な香りが放たれる。水で薄めて運動前に塗ればある程度汗止めになるし、運動している間にも薄々と香りを楽しめる。私はもちろん、お嬢様もすごく愛用しているっ。


「ではお嬢さま、お風呂上がりを待ってますよ。」


「いつもありがと、この髪、洗うの大変でしょう。」


「そんな事ありませんよ、お役に立てて何より。」


 お嬢さまの髪は人外れの濃密さで重く、しかも一本一本が信じられないほど強靭であり、鋏でカットすることすら難しい。一本一本で見るとどれも水晶のようで、この世の物だと思えないほど美しい。このような髪は、女性であれば誰しも嫉妬するような最強ヘアかも知れません。


 でもこれを洗うのが大変で、お嬢さまは最初自分でするとおっしゃいましたが、あまりにも時間がかかるため、恥ずかしがるお顔で私に頼るようになった。


 ちなみに、お嬢さまのお肌もとんでもない、いつでもキラキラしていていて、伝承に出る美女の肌にも後れを取りません。しかも、私は外に出している肌全般が出していない肌より色が濃く見えますが、お嬢さまの肌にそんな傾向は全く見当たらず、いつでも一体で素晴らしい艶を放つ。


 しばらく待っていて、風呂上がりのお嬢さまをバスローブで包み、更衣室で着替えらせていただくのが日常ですが、今は予想外のことに遭ってしまった。


「ガァッ……エッ」


「エッ…へ?」


 お嬢さまがバスローブで風呂場から出たら、彼女の向こうになぜか普通に歩いている第四皇子殿下が居た。あの方もかなり驚いていて、顔も赤くなっている。


「ヒッ……久しぶりだな、ベアトリス。元気か?」


 しまった、あまりに意外だから、口出すタイミングを逃してしまった…!


「なぜ我が家にいるんですか?」


「そんな目で見んなよ…ちゃんと母君にも挨拶かけたし、一応様子を見に来ただけっ……ておい!、こう謂う時は挨拶のほうが先だろう、これでも皇子だぞ?」


「あらっ、これはこれは失礼しました。ごきげん麗しゅう、今日は何の用があるのでしょうか。」


「いやいきなり可愛かわい振るなって。」


「そう?じゃあこの後何するんです?私はこれからティータイムの予定なんですが、どう?」


「いいけどッ、お前な…人前でバスローブに入ってるのに恥ずかしくないのか?」


「全然?」


「即答かぁ!」


 普段はしっかりしているお嬢様ですけど、なぜかあんな格好で異性に遭っても照れない。女性は気やすく肌を異性に晒さないと教わったはずですが…とにかく今は何とかして二人を離さないと…っ!


「あの……お嬢様、このまま話を進むのもなんですし、とりあえずお着替えに成られませんか?」


「おっと、アンナさんごめん、そうするわ。じゃあアンタは中庭で待っていなさいな、場所はわかるんでしょう?」


「ああわかった、待ってるよ」


 すると殿下は躊躇ためらいなく中庭のほうへ歩き出し、廊下の曲がり角を曲がって行った。だんだかあの方、前よりずっと大人しくなっていますね……


 衣類室に行く途中、私はこれからのティータイムをちょっとした誕生日パーティーにするとお嬢様に提案し、頷けを承った。…よしっ、殿下も居るし、今日こそはお披露目の後から研究していたコーディネート知識を披露する時っ…!


 先ずは髪を乾かして、髪型を決める。髪の濃密さが並外れたお嬢さまにとって、これは特に大事。圧倒的ボリュームを持ち、質も素晴らしいお嬢さまには『お嬢さまの髪は編まない方が綺麗』といつも主張していますが、髪がぶらぶらする感じが嫌なのでしょうか、いつも奥さまと同じの三つ編みにするとおっしゃる。


 ならば今日は前髪を普段通り三つに分けて、左右の束を櫛で横の方に流す。装飾用ヘアバンドで頭上の髪を左右に分けて顔の横に流す、あとは目立たないヘアピンでそれをヘアバンドに留める。最後に後ろ髪を編まず、帯で末端を簡単に纏めて…よしっ。


 下着は普段の物に決めて、次は中着、ここは慎重に選ぶ必要がある。今日は特別な日だし、服も普段より凝った方がいい。お嬢さまの好みと雰囲気との適性を踏まえて、白いプラウスと二重構造になった白と紫のスカート、スカート丈を普段の膝から少し上に移してっ…そしたら腰にブラウスとスカートが重なる場所に退魔の紋様を入れたウエストハンドを付けて……よしっ、いい感じだ。


 最後にマント、もう冬ですからね。三重構造をしているものを選んで、皇子殿下のアクセサリーを固定用のチェーンに飾って……これでバッチリっ。

 

「はいっ、できましたよ、お嬢様。」


 目を開けて鏡の中の自分を見たらほんの少し意外の顔を見せたお嬢様もカワイイ。


「いかがでしょうか?お気に召さないのなら他のものにしてもいいんですよ?」


「う〜ん、これでいいわ。ありがとっ。」


 ああ…、あの優しい笑顔、全く幼稚さが見えない。赤子の頃からあんなに甘やかされて、ほぼワガママ言わない令嬢は初めて見た。ジークフリートさまについてあちこち駆け回る時には、甘えん坊な方は何度もうかがったのですが……


 その後、お嬢様はティータイムを楽しむために中庭に行き、地面に寝て空を眺めているクーゲルに話しかけた。


「随分待たせたようねっ。」


「いや?、そんなに長くもなっ…その服、いつもより可愛げあって、似合ってるぞ。」


 お嬢さまが話しかけながら顔を殿下の視野に入れたら、相手は話の途中で座り上げ、ちょっとシャイになった、いつもより凝った服装は効いたようね、よしっ。


「そ?、じゃあ今日はどんなお茶にするんです?」


 ああ…お嬢さまの反応が壊滅的だ…


「少しは返事しろよ!、って…それ、俺に聞いてるってこと?」


「そうっ……なに?、そのびっくり顔。」


「いやいきなり考えろって言われても…なんで?」


「はぁ…私にだって他人に任せたい日くらいあるよ?いいから早く決めてっ。」




「おっ、おぉ……じゃあなんだろう……『バイオレットジェイド』はあるか?」


 殿下がバイオレットジェイドを言い出す途端、私は茶葉は普段の物にすると勝手に決めて、紅茶と茶菓子を支度しに行った。なぜなら、バイオレットジェイドは帝室専用の超高級茶葉、この家が保有しているわけありません。


 いつもの茶葉で紅茶を淹れて、食品貯蔵室に行って今朝来た菓子と予め作らせてもらった小さなケーキをカートに置いた。いつもモンスターの資料を読みながら茶を啜るお嬢さまのために、寄り道でお部屋に訪ねて、さっきまで読んでいた物をカートに置いて、万が一に備える事にした。


 そのあと、お嬢さまを長く待たすのはいけないと、できる限り騒がずにカートを中庭に押して、まだ話している二人の横に静かに立った。


「……なら、楽しみにしています。」


「じゃあ今度持ってくるわ、待っていてくっッ……」


「あっ、これは失礼しました。」


「ウアッ!…この急に出たって感じは久しぶりだな……」


「ご苦労様っ、アンナさん。」


 体質だからか、無意識に気配を消すからか、このように現れると人をビックリしてしまうことが多い。でも付き合いが長いからか、他のことに気を取られていない限り、お嬢様はこのように平常心でいられる。


 殿下が気を取り直す間に、私は今日の茶菓子は机に並べた。水晶飴とケーキの組み合わせはそんなにおかしくないと思っているんですが、綺麗に並ばれた水晶飴を見て、皇子殿下は明らかに動揺した。


「これ、まだ食ってないのか?」


「まだって、今日届いたばかりだけど…」


「え?」


「え?」


「いや…っ、一ルナー半前に送ったはずだけど……」


 1ルナー半前に送った?


「1ルナー半って…もしかして……」


 お嬢様もかなり戸惑っているけど、どうやら何か思いついたようです。


「殿下、もしかして旅行商に渡す時、料金を支払っていなかった?」


 手紙送りを扱っている旅行商に受信者の住所を提供して適切な料金を支払えば、どんな物でも半ルナーのうちに届けられる、けど、金額が足りなかったら、このように配達が遅くなる。クーゲル殿下はそれを知らないのでしょうか……


「えっ、カネかかるのか?…なんだよその顔、おかしいこと言ったのか。」


「自分であちこち旅していたのに、父君に手紙を送った事はないんですか?」


「そうでもない。ただ、呼び戻された前は勝手について来る護衛に渡せば良かった。」


 なるほど、旅行商の配達業務は利用したことがなさそうですね。


「……っまあ、良いでしょう、今日のティータイムはお茶請け抜きと言うことで…えーっと……」


「モンスターの資料でしたらこのあとお持ちして参りますよ。」


「いつもありがとね、アンナさん。」


「お嬢さまのお役に立てば何よりです。」


「どうせアンタも暇でしょう?モンスター資料の整理に手伝ってもらえる?」


「えっ、いいけど…なんで?」


「それで『守護の剣』目指してるの?、モンスターを相手するなら、その知識は備えた方がいいよ。例えば、『ブリクラレン』は聞いたことあるかしら。」


「えっ、帝都の西に広がる森で生息する四足獣竜種のモンスターだろう?雷纏った鉤爪で獲物を仕留めるやつ。」


「うむ、じゃあどう対応するんです?」


「どうって、直接首を断ち切れば良いだろう?」


「そう簡単にできるならハンターは何の為にあるの?雷爪という切り札を使わなくても、相手はアペックス級モンスターです。何の策も用意しないで立ち向うつもり?」


「うん……」


「このままでは剣どころか盾役にもならないわよ?」


「カッ……えーいっ、トラップを使うのはどうだ!」


「どんなトラップで対応するおつもり?相手は素早くて体重も軽いモンスターですから、落とし穴はあまり効きません。麻痺トラップなら動きを捉えられるけど、雷を扱うモンスターに麻痺トラップなど愚行。なら残るは網を張ること、しかし、ブリクラレンは網程度で止められるモンスターではありません。」


「ンッ、んんん……」


 殿下、実戦もモンスターの知識についても、完全にボコボコにされてますね、かわいそう……早く資料を持って来よう。


 お嬢さまの部屋に赴き、この前お読みになっている資料と未読区画に置いた物をカートで二人がいる中庭に運んだ。


 しばらく経ったはずですが、殿下はまだ真剣そうなお顔で苦戦しているようね。電撃はチェーンメルで地面に流せばいいとは云えど、あの素早くてトリッキーな動きに苦戦するハンターは少なくありません。


「まだ思いつかないのですか?本番でこれ以上時間かかったらみんな死んじゃうよ?それでもいいの?」


「いいわけねえ!死んでも他の人を死なせたくねぇんだよ俺は!」


「ッ……ふふっ、その意気です、イヤなら正しい対処法に辿り着いてみなさい。」


 殿下がいるとお嬢さまはいつもより短気になるし、殿下にだけ言葉が厳しくなる、でも時々このように笑い出す。その感覚はまるで、彼に「早く成長してほしい」のような思いを込めたような…なのに、恋愛やそう言った類の感情は一切感じ取れない。八歳の子供ですけども、殿下は結構カッコいい人だと思う、なのに一体なぜでしょうか……


「えーっと、なんだろう……気づかれず弓矢で仕留めるのはどうだ!」


「それは可能ですが、弦を引くチャンスは一度限りです。初撃で仕留め損ねたら次はどう動くんですか?あの雷爪竜です、逃げてもすぐ追いつかれるでしょうねっ。」


 弓矢で一撃必殺も答えの一つですが、お嬢様はしっかり考えてほしかったんでしょうね、どんな状況にも対応できるために。


「クソ…もうちょっと考えさせてくれ…」


「ヒントをあげましょう。自分より素早い相手と戦う時、どう対応するんです?」


「機動力を封鎖…っあ!わかったぞ、戦う時はまず足を狙うんだな?」




 辿り着いたようね、お嬢さまもほっとしたような笑顔をお出しになられて、よかったよかった。


「…ふふっ、あなたにしては頑張ったね。」


 このあと、お嬢さまと殿下は先生と教え子のように、アフタヌーンティーをちょっとした授業に変えた。願っていた発展とは違いますが、これでお二人の関係を少しでも深めったのでしょう。


 翌日、殿下は何となく前より自信をつけたような顔で飛竜に乗り、帝都へお戻りになられた。やはり、あの方は叩けば伸びるタイプだ、お嬢様にもかなり好感を抱いているようですし、彼が婿様になれば……よし、お嬢さまが幸せになれるために、お嬢さまが殿下を異性として意識させるように頑張らないと……!

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