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ダマスカス&スプリング

読者の皆さん、お疲れ様です、待ちわびの最新話更新。ブックマーク登録してくてたみなさんには本当に申し訳ありません、毎回毎回前の補充部分ばかり更新してるのはウザいかもしれないのはわかっています。それでもブックマーク取り消さなかった方には誠に感謝してます。これからもよろしくお願いします。

 ダンとクレアがイベントの為に積むった鋼材は一塊も残らず、ゼルの「実験」に使われた。まだ何も知っていないゼルは、いきなり叫んで頭を抱えるダンとクレアの焦りぶりを見て、問いかけた。


「あれ…使ってはいけなかったのか?」


 問われた二人は止まって、ため息つけて肩の力を抜け、元気のない声でゼルの質問に答えた。


「いけないに決まってるんスよ、イベントの話をお前に言っておくべきだった……」


「なりふり構わず見かけた材料を使うクセがあるのを忘れちゃった…それでもあの山を使いはてるとは……」


「しょうがねえろうー、イベントなんて知らねえし使ってはいけないもんなんてわかんねえんだから。」


「告示板を立てていたんでしょう?……」


「字が読めない人に何言ってんスか……」


「字が読めなくて悪かったな!で?一体何事?」


「ここに置いた鋼鉄、元々一週後、うちがグランドスクエアで開くイベントに使う予定なんだ。それがいきなり飛んで……獣潮が来るから鉱員はとっくに撤収済み、一度溶かした鋼も頼れないし、みんなの(ぶん)横取りしたら絶対怒るよな……」


「そりゃあ怒るもんだよな。」


「「常習犯が言うかい!」」


「アハハ……悪ぃっ。」


 苦笑するゼルを見て、これ以上追及しても無駄だと分かっている二人も冷静さを取り戻し、術を考えし始めた。


「しかしこれは予想外だな……如何する?延期したほうがいい?」


「いや、これ以上延期したら獣潮の本隊が目の前だ。伯爵様が休養中の今、精神支柱を失ってる守備軍は期待できない、今年は俺()ハンターが軍隊と一緒に橋を守る事になると、奥様もギルドで伝えただろう?」


「そっか……明日から共同訓練があるし、私たちは防衛戦に関しては白紙、……うちで最強のクルガ先輩も依頼で別町に行ったし、この街で頼れる者と言えばはあんたと他の先輩方くらいか……」


「……時間が惜しいなら心当たりはあるぜ?、ちょっとこっち来い。」


 いつもバルカンのように大声で話すゼルが声を下げて喋る事をおかしく思う二人だったが、一応その「心当たり」を聞いてみるとゼルに耳を貸して話を聞いた。


「……実はウーノス火山で鋼の外殻を持つ「レストンスタル」というモンスターを見たことがあるんだ。あいつの巣窟の中なら鋼の塊がたくさんいる、スパークテストもやった。かなり良質な鋼だ、そのまま材料として使っても問題ない、取ってみるか?」


 レストンスタルという名詞を聞いた二人は思わず目を丸くした。


「『レストンスタル』?それって巣窟の鋼を目当てに狩られて絶滅したはずのモンスターじゃないスか?そいつの禁猟令はまだ有効なんスよ?」


「シーっ!大声出すなよ!……他の方法があるのか?」


「ないけど、…井戸に石を落すよりイベントを延期した方がいいんじゃあ……」


「でもバリスタのおかげで小型や草食モンスターの進行コースは変えられるけど、大型モンスターなら話は別。遠距離からの攻撃は効かないから、実力者で撃退するしかないの。」


「なんなら他の工房から材料を買い取ってしまえばいいんじゃねえか?」


「バカこと言うなよ…他の工房にとって一番潰したいライバルと言っちゃあここだ、売ってくれてもても絶対ろくな材料じゃないスよ…」


「……採るしかない様ね……」


「じゃあ人手集めてくるわ、待ってろ。」


「なんで?」


「何言ってんだ、一馬車分の鋼を採るのに人手が要るだろう?。」


「「分量数えてたら使わないで欲しかったな……」」


「だから悪かったって。」


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


 数時間後、アインハイゼの北門出口で集合したダン、クレア、ゼルと他三名、先日喧嘩していた竜人と人間、それを止めようとしたドワーフがいる。名前は順番にレンカ、ブレーク、そしてクリフ。


 ショックでクレアがゼルを引き離して、装備のチェックをしている四人に数歩離れた場所で耳を交わしている。


「ちょっとゼル、どう言うこと?クリフはよしとして、どうしてレンカとブレークが来るのよ。あの二人仲が悪いの知ってるんでしょう?」


「そうなのか?今は大人しいんだろう?」


「いやあんたが拳骨を食らわせたから大人しくなっただけよ、覚えてないの?」


「一々覚える訳ないだろうそんな事。」


「はあ……この鍛冶バカ……」


 少し離れた場所でダンと他三人が装備のチェックを行っている。今の所まだ落ち着いている様子、イベントが決められた日で開催できる様に「今行くしかない」とクレアは腹を括った。


「じゃあこの後、絶対あの二人から目を離さないように頼んだわよ?」


「へいへいっ。」


「お〜い!ダ〜ン!鶴嘴、水、食料、サバイバルグッツとか、全部持った?〜」


「バッチリだ〜!でも気になるもんがあるー!」


 ダンのところに戻って、ゼルのリュックから持ち出したおかしな形の鉄塊を見て、疑惑でクレアがゼルに問い掛けた。


「何よこれ、螺旋状の……鋼?」


「ああ〜あれか、未完成だけど使えるかと思って持て来たんだ。」


「「って……、まさか今朝の『実験』ってこれ……?」」


「ああ、そうだぜ?」


「アンタね…鋼をこんな形状にして何をするつもりよ…」


「フラワルのお嬢さんの依頼なんだ、両方から押し合わせてくっ付けた後放して元に戻れる様に作れって言われたぜ?」


 すぐそうして見たダンはもそれを少しだけ圧縮するしかできなかった。


「かったっ、全力で押し込んだけど…」


「やっぱ硬いか、でも何人分の重みを乗せれば圧縮…」


「ストーップ!時間が惜しいから、早くべロックスと荷馬車を借りて行くよ!」


 そしたら、馬車と役畜を確保した一行はウーノス火山に向かって行った。数時間後、空気の温度は下がる中、ダンは温度を上げようと話題を投げ出した。


「みんな暇ができた時何するんスか?俺は武器の手入れと訓練。」


「新型武器の開発だな…この前伯爵家のお嬢さんが買った「ツインハンマー」も思いつきで作ってみたもんなんだ。」


「思いつきでって……お嬢様が武器使う場面がなくてよかった……(オニ)族でも使い熟しに苦戦する重さの武器をよく作れたね、って言うか、お前も鬼族でしょう?使えない武器作ってどうするの?」


「いいや……フラワルのお嬢さんの様な人なら使えるんじゃねえか?」


「彼の方は個別ケースなんスよ、あんな鉄の塊を楽々持ち上げる人が多い訳ないでしょう、しかもあれで六歳スよ?」


「そう…?」


 ゼルはそれを全く気になっていないが、他の学徒二人は大いに驚いた。


「クリフ、それほんとか?」「(まこと)か、クリフ殿」


「ああ、親方が仕事を休止させるのが珍しいからちょっと見に行ったよ。確かに六歳前後の人間の子供だった。」


 信じられないと言う文字を顔に書いたように、二人とも顎を外すようだった。しかし相手の顔を見るとまた反感を剥き出した。


「真似すんなよトカゲ!」


「真似しておらんわ…!」


「…モッペン締めてやろうか?」


「いや…なんでもないぞ、な?」


「うっ、うむ……」


 また喧嘩になるところに、ゼルの威嚇が入ったおかげでなんとか持て行かれずに済んだ。


「じゃあ次は(おい)な?、そうだな……暇ができたら親方さんの手芸を見習うのが日課で……なんだろう……あとは髭と工具の手入れ……だな。」


 ブレークも何かを思い出したように笑った。


「そう言えばお前、よく髭を手入れしていたよな〜、剃ってしまえばいいんじゃねえか?」


「仕来りで剃ってはダメなんだ。お前たちに羨ましいよ、特に食事の時顔についたら拭けばいいとか……」


 荷車の操縦席に座っているクレアも理解できると賛同した。


「わかる、特にスープやソースとかついたら大変だよね…洗わないとベタベタだし、洗って乾かさないと匂いがヤバイし、私もそれが嫌で髪を結んだわ…」


「まあ、慣れのことだ。それに、今は髭を手入れしないと調子が悪くなるほどだしな。……(おい)の話より、クレアさんは暇な時なにしてたんだ?」


「そうね……筋トレかな。」


「クレアお嬢が筋トレ?」「クレア殿が筋トレ?」「クレアさんが筋トレ?」


 荷車の隣で歩いていた五人のなか、ゼルとダンを除く三人は予想外の答えに驚かれ、同じ質問を出した。


「私は免許持ちのハンターだけど、実は筋力が足りないから、斬れなくてもダメージを与えるスレッジハンマーを武器にしたの。ほら、今年の試験でハンター免許取れたんでしょう?実はほとんどそこのバカのおかげなんだ。」


 クレアが言うバカはもちろんバカではない、戦闘に関してむしろ天才、それが、「ダン・ギニウス」という男。


「いいやお前のおかげだぞ?他のメンバーたち、実地訓練の時はよく動けたのに、本番はみんな突っ立ってるだけ、お前の指揮がなかったらチームはとっくにアウトだったぜ?」


「前々から思っていたが、クレア殿と話す時だけ、口調が変わるんですな、ダン殿は。」


「こいつは特別なんスよ。」


「ちょっとあんたっ、それどういう意味で……!」


 すると、クレアが筋トレと疑問した三人組はなんらかのメッセージを受け取ったように、手をあごにつけてニヤニヤし始めた。


「なんか変なこと言ったスか?」


「「「いいやなんでも?」」」


「もういいよあんたなんか……ほらウーノス火山が見えてきたよ!今日のうちに戻らないと間に合わない!走って!」


 そしたらべロックスを走らせて行ったクレアに、男たちも追って行った。


 数分後、一行はなんとか日が暮れる前にウーノス火山についた。そして彼らはゼルを先導にし、レストンスタルの巣窟を探しに火山の内部に入っていくと火山洞窟の入り口で装備を再度チェックした。


凶兆鳥(きょうちょうどり)も持ったよね?じゃあ入るわよ?」


 覆われた鳥籠を持ち構えるダンは引き締まった表情で待ち構えると同時に、手袋と鶴嘴を装着した鍛冶学徒たちは頭を上下に振り、興奮な顔をした。


「よしっ、行きましょう。ゼル、お願いね。」


「任せな。」


 ゼルが洞窟に踏み入れるを合図に、一行も火山洞窟に進入して行った。


 この洞窟通道の中に光を反射する火山瑠璃はないが、岩壁に沢山な発光苔がいる故、松明がなくてもよく見える。


 分岐点を遭う度にも迷わず進むゼルの背後をついて行く一行の進行速度は早い、初めての広い空洞に辿り着くまで長く掛からなかった。


「ここで一つ休憩しな、この先からは本番だ。水もしっかり飲みな、火山の中で脱水症状起こしたらしゃれにならん。」


「そうね、一旦休もう。」


「よし、警戒は任せな。」


「あんがとな。」「かたじけない、ダン殿。」「では遠慮なく…」


 三人はそのまま地面に座り、酷暑に備えて準備した大量の水袋に入れた水を大口で飲んだ。


 周りの温度が高いのか、ゼルのペースが早すぎたか、三人の喉はとっくに渇いた、飲み振りもそのせいで豪快すぎるものになった。すると当然のように、三人の口角から漏れた水は地面に滴れていく。


「ちょっと、大事に飲みなさいよ、持ち歩ける水はそう多くないんだから……」


 クレアの忠告とともに、何かが崩れていく音も響き始めた。


「待て、なんの音だ?」


「何か脆いものに罅が入れてる音だ……」


「見ろ、落ちた水が消えいくたぞ。」


 六人は同時に地面を見つめた、床はよく見ると、そこに無数の細い罅がいて、止まらぬ勢いて拡散していく……!


「おいおい嘘だろう……」


 音が大きくなった瞬間,一行は地面と共に崩れ落ち,巨大な縦穴の中に落ちていくのだった。


「「「「「「ほわあーーーー!」」」」」」


 彼らの運は良かったか、縦穴はそこまで深くないし、その下に湯の滝と広くて深い温泉がいる。落水した一行はとにかく一生懸命、気泡が浮かんでいく方向へ泳いで、岸に上がった。


 真っ先丘に上がるダンはその後をついてくるメンバーたちを引き上げた。


「みんな大丈夫スか?」


「平気だ」「なんとか。」「助かった」「怪我はないぞ。」


 無事集合した一行だが、そこに一人だけが、いない。


「……クレア?は……っ!クレア!」


 周りを見回っても幼馴染の姿を見えない。、焦りに押され、背嚢をそこらの地面に投げ放ったダンはすぐ水中に飛び込み、クレアを探しに行った。


 案の定、クレアは滝の水流に圧されて上へ泳げない。必死に漕げているが、流れの力に敵わず沈んでいき、そして息を切れて力を失っていった。


 彼女を助けに、ダンはできるだけの最高速で潜り、クレアの背嚢を掴んで気づいた。


(ここは水流が強すぎる、背嚢背負ったままじゃ上がれないぞ……考えろ、考えろ俺!……そうだ!)


 息切れのリスクを冒して、ダンはクレアの背嚢を開き、中からロープと一丁のトンカチを取り出し、そのあと速やかに背嚢の紐をナイフで切って、クレアを丘に連れ戻した。


 しかし時間がかかったため、丘に引き上げられた時、クレアは既に気を失った。


「クレア、おい、しっかりしろ!クレア!」


 ダンの胸に刻んでいるのはこの温泉洞窟の暑ささえも涼しく感じる焦り、しかし不思議に、彼の頭は冷静であった。


「溺れ、脈はまだある、でも息はしていない……この状況……よし、お前らは乾燥な場所を探して焚き火をつけろ!、近くに発火石がいるはずだ、急げ!」


「「「お……おう!」」」


 臨場の指示を出したダンは、その後経験豊富なライフガードのように、ためらわずクレアの頭を上に向かせ、彼女の服を解いて、人工呼吸と胸骨圧迫を行なった。


「俺は……周りを警戒してくるわ…」


 ダンの躊躇の無さに驚かれ、様子を見ていたゼルも思わず口笛を吹いて、二人の隣から身を退いた。


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


 しばらく経った後、乾燥な洞窟の中のテントの中、オイルランプの灯の(もと)で、咳と共に、クレアの意識は戻って来た。


「コホッコホッ……ここ、は……?」


 頭がまだぼやぼやのクレアの様子を見に、ダンは真っ先にクレアの目の前に飛び込んだ。


「クレア!大丈夫か、俺が誰なのかわかるか?ここの指何本だ?」


「ダン?何よその顔……って!あんたっ、なんで裸!?」


「そんな事より、体はどうだ?一旦町に戻ろうか?」


「え?町に戻ったら準備が間に合わなっ……」


 クレアが言葉を済ますまで待たず、ダンはクレアにギュッと抱き締めた。


「何言ってんだ……そんな事よりお前の方が大事に決まってんだろう……!」


 ダンのいきなりの告白に固まったクレアは、思わず手をダンの背中に置いて、右手をダンの頭に置いた。


「あたしは……何処にも行かないから…」


 それは胸底から出た言葉、しかし、口に出していない言葉の方が、伝わりたい意味であったろう……


「……おお〜い!レストンスタルの巣が見つけだぜ〜!いい鋼も剥ぎ取ってきたぞ!」


 遠くから伝わってきた声はゼルと他の学徒たちのだった。


 下着だけの二人はこれで相手を放って、少しだけ、穏やかな目で相手を見つめていた。


「……ゼルたちも戻ったようだ、ちょっと出るから、じっとしててね。」


「……うん。」


 そう言いおくダンはクレアに背けて、乾かした外套を着てテントから出ていった。外套に覆われる前にクレアの目に、鍛えられた筋肉が映した、訓練校で見た教官たちの程ではないが、とても十七歳とは思えない肉体であった……


 テントの外で、ダンは学徒たちと一緒に、焚き火の隣で岩壁から剥ぎ取った鋼の状態を取り調べている。


「しっかしこれは見事な鋼だな〜鶴嘴が折るかと思ったぜ〜」


「いい武具になれそう、鍛造が楽しみだ。」


「絶滅まで狩られた訳もわかる気がすっとん、こいつぁ戦争の時の兵器作りには持ってこいじゃあの。」


「クリフが口癖を漏れるほどの代物なら,安心して持ち帰れるようだな!」


 しかし驚くことに、ずっと仲が悪く、一行が見えない場所で戦争しているブレークとレンカは珍しくハイファイブをして、肩を組んで「っしゃ〜〜あ、はよかえるぞ!」と叫んだ。


 その光景があまりにも信じられなくて、ダンは思わず一瞬(こご)り、そしてクリフに訊ねた。


「あの二人仲悪いんじゃなかったんスか?」


「多分穴を埋める程の材料を見たショックと昂りのセイで厭悪を忘れたじゃろう。普段はああで共通点もほぼないけど、根はそっくりなんじゃ、二人は。」


「二人、何を言ってたんスか……?」


「『こんなの天国だろう……』みたいなもんじゃったで。」


「あれらがあんなに刺激的だったのか……」


「ダンさん、この鋼をよく見てみ。」


 そう言われたダンは近くでその鋼を観察したが、鍛治に詳しくないし、武器もあまり気にかけなかった彼にはさっぱりわからない。


「……ただの鋼だろう?」


 そしてクリフは鋼の山から一つ取出し、立ち上がって、鋼を持っている手を前に差し出した。


「これら全部が、天然の波紋鋼じゃ。」


「ハモンコウ?」


「何層もの鋼を重ね、完璧な溶接をして、何回も折叩いて作れる伝説武器の卵じゃ、このような鋼で作られた武器は他のどんな鋼でも敵わない業物になるんや。」


「なりほど……でもそれだけなら、自力で作れるんじゃないスか?」


「人工で作ってもできるが、溶接をしくじるとただのガラクタじゃ。親方さんにさえも、全力を投げ入れてようやく作れる代物じゃ。波紋鋼を作ってそこから業物を作り出すこと、それが鍛治師としての大成に至った象徴じゃ。」


「二人があんなに興奮しているのはそういう訳か……っていうか、クリフ、口癖がまだついてるけど、大丈夫スか?」


「まあーの……(おい)も感動で抑えきれなくなっとんじゃ、目の前に波紋鋼がこんなに多くいるとはの……!かの英雄ジークフリートの両手剣と同等の業物を作れる機会、鍛冶職人なら誰しも憧れるチャンスじゃ……!」


 竜人とヒトが肩を組んではしゃぎ、そして笑いながら口喧嘩しはじめた。ドワーフは波紋鋼を持って涙ボロボロして、宿願まであと一歩だけのような希望に溢れた顔。そして鬼はただ、鋼の山を眺めて手を擦って興奮そうな顔をしていた。


 そんな光景を見て,ダンは何かわかった気をした。


(案外、こういう眺めも悪くないかもな。お母さんが言った言葉の意味も、なんとなくわかった気がする)


 そして次の問題が出た。


「それにしても、鋼材は手に入れたものの、どう帰ればいいかの……」


 クリフの惑いに、ダンは自信満々な姿勢で答えた。


「良い方法があるっスよ!」


「ほー?なんだ?」


「こちらっスよ。」


 ダンの手にクレアのトンカチ、ゼルの巻き鋼、そして長いロープがいる。


「これらで双頭鉤縄を作れば、穴の上に登れるはずスよ!まずはこの巻き鋼を打ち壊して、その破片を三つずつ、縄に結べば……


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


 ……ということで、なんやかんやあったけど、私たちは鋼材を連れてなんとか日が昇る前にアインハイゼに戻れたわ。大量の波紋鋼を見た学徒たちはみんな凄まじいショックを受けて、波紋鋼を作れるように努力していった。フェリウスレビューに出て全力を尽くした最後、ようやく壁を破ったの。まあ…その後ギルドに尋ねられて、二十五万ルズの罰金払わせたな……お父さんが助けてくれなかったらギルドにブラックリストされて牢獄行きだったよ。」


 そんな去年の冒険譚を語りながら、クレアはベアトリスとクレイナを工房の中へ連れ入れたしていった、一年前と比べて、環境がだいぶさっぱりな感じになった。


 なぜなら、学徒たちの作業区画から去年のような折れた武器や木材の欠片、そしてモンスターの牙のような物はだいぶ減った。


 クレイナの目前にいるのは、打ち明けた異種族の鍛冶学徒たち。


 レビューで勝負するという約束を交わし、喧嘩をやめてまた鍛造に励む者たち・一緒に波紋鋼作りを挑戦し、結果がどうあれ相手を励む者たち・失敗した者を連れ出し、メシを奢ると励む者たち。


「一年前、彼らは毎日喧嘩していたらしいけど、今はこれよ?」


「ええ,それはわかっていました。しかしすごく…驚きました……来れなくなった一年の間で、こんなに仲良くなれたのか……」


 そしてベアトリスは前へ歩き、工房の屋根の下で止まって体をクレイナに向いてこう言った。


「互いの気心を知るには時間が要りますが、偶には氷を砕く切っ掛けも必要です……一つ聞きます、クレイナさんは誤解を解けたいんですよね?」


「は…はい……」


「なら話は簡単です。」


 七歳のベアトリスはここで女の子の話し方と身振りを保ちづつ、恵として自分のアドバイスを語った。


「これから、平常心で人と向き合いなさい。そうすれば少なくとも、根拠のない噂は少しずつ消えるはずです。」


「えっ,でも、私は……」


「異質者、もしは……罪人の子、ですか?」


「へ?どうしてそこまで……」


 クレイナの言葉が終わる前に、ベアトリスはそこに話を挟んだ。


「あのね、クレイナさん、よく考えてみて、そんな蔑称は何処の何方につけられたの?」


 クレイナの答えよりも早く、ベアトリスは腕を組んで、謎の自信を纏ってその美声を張った。


「ここはアインハイゼ、五大種族が共に暮らす新時代の町よ?合法化前に生まれた混血くらいで異質だの罪人だの、馬鹿馬鹿しく思わない? 多少の誤解が生じても平常心で向き合えばいいのに、自分を苦しむような考えを抱え込む必要はいったいどこにあるのかしら。そんなの、自意識過剰だと思わない?」


 そう問われたクレイナは目覚ました。今まで彼女は自分の出身を気にしすぎて、家族や仕事以外の交流を極力避けていた。しかし異種族でも仲良くなれる証拠は目の前にいる、これを否定しても事実は変えられない。


 故に、彼女は手を胸に置いて、自分に問いかけた。


「……私は、考えすぎたのでしょうか……」


 まだ疑問が残っている、でもクレイナの声にいた怯みはほんの少しだけ退いた。その小さな変化を捉えたベアトリスはどこか安心したように、優しい目で笑みを綻んだ。


 ベアトリスの質問は恵の経験から生まれた。


 旅先や交渉の場で外国人や別県の人と話し合ったからわかる——大事なのは平常心を保って気長く相手と向き合うこと、然すれば、大抵の誤解は些細な問題に過ぎない……


 そんな時、鬼が現れた。


「おおっ、フラワルの嬢ちゃんか、ちょうどいい所にきたな。」


 ゼルの声を聞いた次に、クレアとクレイナの顔は驚愕に染めた。


「あんたなんて格好でお嬢様に話しかけてるのー!」


「見ちゃダメです!お嫁にいけなくなりますよお嬢様!」


 そう叫んだクレアはベアトリスが振り返る前に、飛び蹴りでゼルをぶっ飛ばし、そしてクレイナは手でベアトリスの目を覆い、あの光景がお媛様の目に入る前に隠し切れた。


 そしたらゼルは座り上がりながら頭を擦った。


「……ッテェなー、なんだよいきなり…」


「自分を見てから言え……あと服着なさい!」


「しょうがねえな……上半身を着てないないくらいで……」


(ああ〜半裸か……前世で見慣れたけど、まあ……今世は令嬢だからこういう保護は当たり前……かな……)


 そしたら工房の中に行っていつものタンクトップとフェイクスリーブをつけたゼルは「クルマ」でよく見える鋼材を持ち出して、ベアトリスの前に置いた。


「待たせたなフラワルの嬢ちゃん、これらがあんたの依頼した品の最新試作品だ!」


 それは当たり前の様に存在していたが、日常生活において壊れた時だけ自身の存在をしめす物。クルマの金属部品の中で、一番乗り心地に影響するとも言える部品たちだ。

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