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災厄を凌いだ先に、天災、降臨。

外で働く読者さんもお留守番の読者さんも、お疲れ様です、また自分です。今回からは、一気に物語が前に進みます!……と言いたいところですが、第七章より先はまだ草稿になっていません……でも頑張って、せめて週に一回だけでも更新することを目標にしたいと思います、溜まってから一気に読む方も、更新があったらすぐ読む方も、フィードバックを期待しております。

 今日は、本格的にクーゲル捜索行動を始める日。日出の直後ーー3刻で起きたベアトリスは、いつも通りに着替えをアンナに任せる、ただし服はいつものドレスではなく、動きやすい軽装。荷物を整えたあと、親と従者達に出立の挨拶を掛けた、そうして荷馬車に乗り、北門へ向かう途中、また幼馴染の二人組に逢えた。


「あれ、お嬢?今まだ3刻半っすけど、そんなに急がなくても……」


「集合地でべロックスを休ませて、出立に備えてます。ではまた後で。」


 北門へ駆けていく荷馬車の隊列を見ながら、二人もペースを上げた。そして小声で話す合図を送ったダンに、クレアは耳を傾いてそれを聞く、


疾風迅雷(しっぷうじんらい)っすね。こういう捜索行動の支度、普通はもっと時間をかかるはずなんだが……」


「お嬢様はきっと、集合地で少し様子を見たいでしょう、目標人物の失踪以来、二日が経った。地点があのウーノス火山ならそう遠くない、モンスターが邪魔に入らないなら、半日あれば着くはずよ。」


「アア〜で、相手が既に戻ってきた可能性もあるから、探しに行ったってことか。」


「楽観すぎだけど、大体その感じ。」


「にしてもあの隊列、すごい量だ。40人を五日間くらい持てそうじゃねぇ?しかも特大馬車二台って……」


 荷馬車は合わせて五台、うち二台が食糧、三台目は各種ポーション、武具、衣服諸々、並の行商人も顔負ける隊列だ。何より四台目と五台目は特に大きい、だが布に覆われて中身が見えない。


「ええ、凄まじい出費、ウーノス火山をひっくり返す気だわ。情報は広がってないけど、噂によれば、目標人物はクーゲル殿下だそうよ。あのお方なら本来、単独でウーナス火山に向かうと言う無謀な行動を取らないはずですが……」


「一体何が起こったんだ……?」「とにかく急ごう……」


 疑問を抱える儘、二人は北門へ駆け始めた。


 一方、集合時間約20分前の時間で、北門に着いたベアトリスがべロックスを落ち着かせている中、ワイルドな声が話かけた。


「オオ!アンタがダンが言ったお嬢ちゃんか!俺はクルガ、助太刀に来たぜ〜」


 話をかけたのは有名のハンター、ついた綽名は「フューリー」、実力評定アペックス級の猛者。細い目を持つ茶髪おじさん、短い髭を残して、イケメンではないが端整で目に馴染む。


 ハンターの実力評定は、ギルドがら下すハンターが依頼を受けるのに相応しい実力を持っているかどうかの判断基準、その詳細は……


 アイン級:採集や採掘、温厚の草食モンスターと一部小型肉食モンスターの討伐依頼の承諾を許される

 ズバイ級:小型、中型及び一部大型モンスターの討伐及び捕獲依頼の承諾を許される

 アペックス級:生態系頂点に立つ大型モンスターの討伐及び捕獲依頼の承諾を許される


 ベアトリスが町の様子を見る中、他のチームも続々と到着し、幼馴染二人組もまもなく到着した。集合したハンターの数は12人、アンナは空き地に座るよう、ハンター達に声をかけ、ベアトリスは箱の上に立ち、依頼の詳細内容についって語る、


「諸君、集まってくれたことに感謝する。これより、此度の行動の詳細について説明する!計画は今から半日以内火山の麓に到着し、ベースキャンプを設立する。(これ)が済んだ後その儘休息に取り掛かり、本格の捜索行動は明日の日の出から始まる。噂で聞いたと思うが、捜索目標は第四皇子クーゲル殿下だ、丘をひっくり返す覚悟で取り組んでもらおう!」


『了解!』


 その中、ダンとクレアは耳を交わす……


「お嬢様、昨日は可愛くて優しいお姉さんみたいけど、今日は凛々しくてでカッコいいな……」


「わかるっ、カリスマ性が感じるって言うか、6歳の姿に合わないセリフなのに違和感が感じないところも謎だ……」


 ここで、クルガが挙手し、声をあげた。


「質問がある。」


「言ってみろ。」


 対してベアトリスは、上位者たる威厳を放ちながら、問いを内容を伺い、クルガもその気魄に負けぬよう、立ち上がって問題を述べた。


「依頼を達成した暁、報酬の分配はどうなる?」


 一瞬考えに落ちたベアトリスは、すぐ立ち直りこう答える。


「依頼の内容は二つ、私の護衛と、クーゲル殿下の捜索と救出。前者に当たる者に2200を支払う、(これ)は一個小隊あれば十分、後者を達成した者に3200ルズを出す、この捜索行動に取り組んだ小隊も、一小隊ずつ1600ルズを支払う。(これ)は危険補償金、報酬とは別計算だ。」


 納得したクルガは地面に掛け、その後ベアトリスがアンナに視線を送り、アンナが手を叩いた後、13匹の狼型モンスターが荷馬車から飛び出し、ベアトリスの前で平伏した。驚きの中で、ベアトリスは説明を進めた。


「この子達は私が手懐けたバルフェング、既に殿下の匂いを覚えらせた、賢い子達だからきっと役立つ。彼らはそれなりに戦える、もし意外でアングホークスやアングティグアに遭遇しても、この子達があれば全員が撤退するまでの時間を稼げる。」


 バルフェングはアペックス級モンスターのなかでは希少な哺乳類モンスター、そのスピードは陸地に置いて並ぶ者なしの時速180キロ。他のアペックス級に比べて小柄だが、それなりのパワーを持っている。その知能も極めて高い上、五感及び第六感が凄まじい、多方面において死角がない。


「もちろんこの子達もタイミングを探して退却する、だから危険があったら迷わず退けばいい。捜索隊に一人の犠牲者を出すことも許されない、いいか!!」


『オオオ!』


 ハンター達の雄叫の後、ベアトリスは手を叩き、バルフェング達を馬車に戻らせた。そして彼女も箱から降り、荷馬車の乗客席に戻り、出立の号令を発す。


「それでは、出発!」


 いつの間に操縦席に掛けていたアンナは、たづなを握り、べロックス達に歩行の指令を送った。そして今ベアトリスは胸の中で黙念した。


(こんな迷惑をかけしてまであの火山へ、一体どういうつもりよ、あのバカ皇子……)


 ベアトリスたちが皇子を捜索しにウーノス火山へ出立した。これと同時にフラワル邸の主人の寝室の中、クラリスとジークフリートは娘のことについて話している。


「まさかリズが六歳であんなに立派になったなんてね……人員の募集に物資の調達を一日で終わらせたし、物覚えが利いてから初めての城外だったはずなのに全く怖気がない、まるであなたね、ジークフリート。」


 窓に顔を向き、椅子に座るクラリスの姿はまるで一幅の絵。その肌は雪の様に白く、健康的な血色が薄く透け出す。絹のような髪が綺麗に編まれ、整えられ、しだれて、河川の様に上半身と太ももを流れ、いくつかの瀑布と激流が形成する。ターコイズ色の瞳は今窓の外をじっと見ていて、微かに煌めいているように見える。


 それに対し、ベッドで座ってるジークフリートの様子は健康とはとても言えない。色は小麦色だけど彼の肌に艶がなく、体も枯れた木の様に見えて、髪もだいぶ薄くて頭皮すらわずかに見える。彼の顔は決して悪くない、けど体を酷使しすぎたせいで四十未満の年で六十の様にも見える。


「ああ、本当に驚いたよ。娘が力だけではなく、行動力まで高いとはな。コホッホっ……ますますそこらへんの男に譲りたくないなぁ。たははっ」


「あらっ、じゃあ『あの人じゃないと嫌だ』ってリズに言われたらどうする?」


「はははっ、あの子ならそこらへんの男に惚れたりしないさ。リズはそこらへんの貴族令嬢と違って、将来大公になる者に恋心を抱くどころか、相手のことを物ともしない子だからな。」


「ふ〜ん……まあ、確かにそうね。ふふっ、しかもあの子、相手と言い争いする時はどこか楽しそうだし、こうなると分かってたら弟や妹の一人や二人作ってあげた方がよかったのに……」


「あ…その目はやめてくれ、流石に身が持たないよ。」


 クラリスの意味ありげな笑みを見て、ジークフリートは何か思い出したように思わずはゾクゾクした。そして彼は何か思い浮かんだ様に、愛想笑いを収めた。


「…そう言えば、今日はいつもより寒いと思わないか?風もなぜかいつもより激しく感じる。」


「確かにそうね……雲も同じ方向へ集まっていく様だし、ただの偶然であればいいけど……」


 一方、出発から一刻半。バルフェングたちを呼び出し、狩りのついでに周辺の警戒をする様に指示したベアトリスはハンター達に昼食の時間を宣告し、料理を作り始めた。


 手始めに玉ねぎを細かく切って放置、キノコを厚めに切って、グレーギスのハムを口に入れやすい短いストリップ状に切る。ニンジンとジャガイモを乱切りして、乾燥野菜を後で使うミルクに入れる、これで下準備完了。


 火を焚き、ルーを作る。植物油は用意してないから、グレーギスの油脂を寸胴に入れた後、焦がさないよう、とろ火でゆっくり溶かす。


 後は油脂の約八分の七の量の小麦粉を入れて、じっくりかき回す。小麦粉が溶かし、全体がツヤツヤでクリーミーの状態になった直後、水とミルクを野菜が入ってる儘入れて、均一になるまでかき回す。


 そこからジャガイモ、ニンジン、ハム、キノコ、タマネギを順番に入れて、とろ火でジャガイモが溶けかける状態まで煮て、胡椒を入れるっと……


 既にわかるかも当てたかもしれませんが、これは他ならぬ異世界アレンジのクリームシチューです。そして怒らないでください。手順や食材とかすごく雑でめちゃくちゃだけど、仕方ない。


 ここは前世の様な便利な世界じゃない、町にいるならポンプでなんとかできるけど。野外ではあんな物ある訳が無い。水は自分で持ち歩くか、川や湖に頼るだけ。近くに水源がないと、ルーを作る後で鍋を洗う余力などない。


 使える新鮮な食材の品目も圧倒的に少ない、この世界の鉄道は発展済みだけど、モンスターのお陰でちょこちょこ破壊される軌道を常時万全の状態に維持できるほどの富も、資源も、人力も、今の帝国は持っていない。


 行商集団や商会はある物の、モンスターのせいで大損害を避けるために、規模は極めて限られている、この儘では、どれだけ莫大な富を蓄積しても、都市間の大規模輸送は限られる限り、金は回らならず、経済の発展は途切れてしまう。


(うむ……人々の幸せの為、経済発展の為、そして何よりも美味しい食べ物の為、その改善プロジェクトの提案を頭の片隅に置いておこう……今は料理に集中……)


 シチューが完成した時、『上手にあげました。』と心の中で黙念するベアトリスは息を吸い、大声で叫んだ、


「諸君、待たせた!体を温めるものを用意した、順番に一人ずつ列に並べ!」


「オオッ、待ってましたス!」


「いやあ〜香りで腹が空き過ぎて倒れるかと思ったぜ〜」


 ハンター達が列を並び、一番の人が私が作った品を見た途端、石化したかの様に固まった。


(アッ、そう言えばこっちじゃあ、畜産業は肉食モンスターによる損害で規模を拡大できなかったか……クリームシチューの材料であるミルクも高価で、普通は貴族の食卓でしか姿を見せないんだっけ……まあいい、経済を生かす為にも、ここの食を豊かにする為にも、後に物流(ぶつりゅう)の改造を勧めてみよう……)


 石化したハンターは……クルガ、どうやら愕きに流された、後ろの人がその肩を叩いてようやく立ち直ったようだ。そして体を前へ傾きベアトリスに質問をかけた。


「オイ、マジか?こんなもんを用意して、ミルクってめっちゃたかいんはずじゃ……具沢山スープとか出てくるかと思ったけど、いくら冬だからって、俺達みたいの者に、なんでもここまで……」


 対し、ベアトリスは咳を払い、そして述べた。


(わたくし)が食事の提供を約束したのです、これくらい造作もありません、我が家とアインハイゼが戦争の後衰えず繁栄でいられる事は、ハンター諸君と領民の努力あってこその物。初日分のミルクを用意するなんて容易いこと、そんなことを気にするより、捜索はしっかり働かせてもらいますわよ。」


「なるほど……では遠慮なく頂こう。」


 どこか納得した様で口角をあげたクルガに対し、ベアトリスは心の中で思った。


(こんな時『飴あげるからしっかり働け』と言う態度を取れば、余計の詮索をされずに済めそうだ。)


 そしてクルガが、わざとみんなに聞かせるように声を上げた。


「ところで、やはり捜索目標がクーゲル皇子だからか?普通は家で知らせを待てば良いだろう、現場まで来るほど心配か?もしかして好きな人だったとか?なーんてな。アハハハハッ」


 それを聞き、何も知らない衆の中一部がニヤニヤし始めた。


 前言撤回、変な方向に解釈されてしまった……しかも周りまで……こんな揶揄い方、女だったら……あっ、そう言えば忘れるところだった、今は女だ……なるほど、つまりあれか?、他人から見れば私は「好きな人が行方不明になったから、友達を呼んで一緒に探しにいく女の子」……いや何それ引くわ……でも下手に正すと調子に乗って攻めて来そうだし……放って置こう、今そう解釈されるなら都合が良いし、捜索に頑張って貰えれば有難い。でもアレが好きといわれると流石にちょっと……


 心の奥底を晒さないように、ベアトリスは淑女らしく微笑みで応対したが、周りのニヤニヤは更に増えた。


 その後ハンター達は其の儘ニヤニヤな顔でクリームシチューを頂き、そして一生一度切りの機会のような丁寧な食べ方で、これを一滴残らず(たい)らげた。


 丁寧しすぎだろう……クルガなんか、食器を舐めるているし……どうやら習った通り、ミルクは本当に高価の様だ。こんなこと、日本の一般家庭では想像できない光景だろうな……


 作りやすくて栄養豊富だから、ちょこちょこ妹に食べらせる為に作ったけど……頻度が多すぎて、匂いをかいたら「え〜〜まーたクリームシチュー?もうやーだ。」っとグチを言いならが、姉と兄の言う事を聞き入れて、大人しく食べてくれる妹だったな……おっといけない、二人に自分の幸せを探し追い求めるって言ったんだ、また涙を落としてどうする……!


 ベアトリスが自分の分を食べながら、寂しい感情を晒すあの一瞬を、アンナとその他数名、ベアトリスの知り合い達は見逃さなかった。彼らは追究しなかった、今優先すべきは捜索行動、それを忘れる程の者ではない。


 完食したハンター達が食器を洗い始め、ベアトリスもそれを観察し、やり方をまとまる。この世界では初めての遠出、食器をどうするのかを気になったベアトリスは、今その解答を得た、


 パンやジャーキーの様な、元から食器がいらないものを食す以外、使った食器を飲用水で洗い、それを飲み、その後食器を火で炙るか、これは高温消毒だな……世界は違うとは言え、発想は近いものなんだな。


 一時の安らぎを得たハンター達は、引き続きウーノス火山へ進行し、日が暮れる前に無事、ウーノス火山の麓まで着き、ベースキャンプを設置するなか……


「……おい、見ろ!飛び散る埃が!」


 この一叫びで、全員が微かの揺れに気づき、そして見た、あの地平線に浮かぶ土色の雲を……


 通常、この様な光景は2種類の状況でしか現れない、厖大(ぼうだい)な軍勢の集団突撃とモンスター達の冬越し移動。


 だが今、国が一つにまとまったばかり、戦争ところか、精々貴族同士で行われる秘密裏の小競り合いに過ぎない。そもそも統一戦争で人口を大量に失い、経済が萎縮している現状では、これ程の雲を作れる軍など何処にも存在しない。


 もう一つの可能性であるモンスターの季節的な移動も成立しない。その原因は一つ、地球の動物は冬越しの為に移動している、そして地球の理屈が成立するならこの土地は南半球の亜熱帯、温帯と寒帯を横断する。その末端は南極に近い、夏は生存に適するが冬になると寒さで植物は枯れ、生存に厳しい環境になる。


 時は冬、ベアトリス達がいる地域は中央部の西北方面、転移は晩秋で既に終えた、だからこの時期ではこの様な光景は見えないはず、そして何より埃の雲が現れた方向は南ではなく、西北。


 この状況を前に、とある伝承を知る数人を除き、ハンター達は驚きで固まった、常識を狂わせる光景が、すぐ前にあるという事に……そんな中、クルガ、ダンとクレア、この3人は、対策を練る為に、ベアトリスの元へ駆けつけた。


「お嬢!ヤバいス!天災が動き出したス!」


「ははは早く逃げたいと!あの天災が出てきたら、この一帯のモンスターはみんな生息地から逃げ出して暴れる!ここの戦力じゃあ絶対に持たない!」


「お嬢ちゃん、早く撤退を!」


 今、ベアトリスの頭は全速力で運転している。


 イヤ、この世界のモンスター達は速いし、耐久力も凄まじい、天災から逃げているなら多少無理しても限界以上の能力を発揮する、こっちの者は既に疲れているし、のこのこ退()いているうちに追いつかれたら塵品だ。戦闘という選択肢も自殺行為、ならばいますべきは……


 生死の危機を前に、ベアトリスの頭にとんでもない冒険が思い付いた。普通、逃げるか戦うかの両択のなかから、三択目を見つけた……!そう決めたベアトリスは、口笛を鳴らし、偵察中のバルフェングを呼び戻した。そして、混乱しているハンター達を覚ますよう、最大音量で叫でんだ。


「全員!バルフェングに乗れっ!これより、ウーノス火山に潜入する!火山洞窟を探し、中でこの災厄を凌ぐ!これは命令だ!武器、水、最低限の食料以外捨ておけ!速やかに行動せよ!!」


 その三択目は「モンスターの群れが到着する前に、天然の火山洞窟の中に隠れる」。無茶苦茶だが決して根拠のない閃きではない、民間記録によれば、ウーノス火山は活動レベルの低い活火山、歴史上300年以上前に一回噴火し、その後休眠に(うつ)した。前世で姉と妹に教われた観光スポットにもこれに似た火山の火山洞窟がある。


 ハンター達は指令に混乱したが、とにかく生きる為に、ベアトリスの指令を従い、行動した。準備を整えた後、ベアトリスもバルフェングの首領に乗り、指示を出した。


「バルフェング達よ!中が広い洞窟を探しそこに入れ!べロックス達はバルフェングに続け!行動!」


 バルフェングとべロックスは哺乳類、これは戦力面では他モンスターより衰える傾向があるが、他に比べ極めて高い知能を持つ種族である、実力があれば、他種族でも首領として認める。また 彼らの知能は人間の10歳相当が故、幼獣の頃から飼い慣らせば人の言葉も理解できる。


 指示に従い、バルフェング達とべロックスは駆け出した、バルフェングの五感の鋭さのお陰で、短時間でサイズが合う洞窟を見つけ、中に入った。そしてベアトリスの指示に従い、バルフェング達の半数は洞窟の奥を探索、もう半分は洞窟の入り口で警戒を務める。


 モンスター達の足音の中、ハンター達は生還を祈る。そんな中、幼馴染の二人組とクルガは語り合う。


「二人とも、このアイディアをどう思う。」


「火山の中で避難なんて、なんか常識離れすけど、今のところモンスターが侵入してないとこから見れば、多分いけるっす。」


「ええ、咄嗟でこんなとんでもないアイディアを思いつけるなんて、お嬢様は頭の回りが早いです。」


「ン……とにかく警戒は怠っちゃダメだ。それと……」


 視線をベアトリスがいる方向を向くクルガは、何か不思議な光景を見たように、少しだけ目を開けた。二人組もその方向に向き、そして同じ光景を見て、驚きで凝れた。


 何故なら、捜索目標であるクーゲル皇子は今バルフェング咥えられ、ベアトリスの前で頭を下げている。


 時間を少し巻き戻して、ベアトリスはバルフェングの半数を洞窟の奥に派遣し偵察をさせた、その中の一匹は何かを発見し連れ戻った。その「何か」は、他ならぬクーゲル皇子だった。


「放せ、放せバルフェングめぇ!!」


 バルフェングに咥えわれ、目を瞑り、空中で手足を暴れるクーゲルを前に、ベアトリスの感想はもはや呆れを超え、無言になった。


 一応三ヶ月の日々を一緒に過ごしてきたはずなのに、なぜ面倒を見てあげた子だと気付かない……


 額を撫でるベアトリスは、茶番を見ていられなくなった。


「デ〜ン〜カ〜〜?」


「ウワァッ……エッ……ベアトリス?」


 人声を聞く驚きで目を開けたクーゲルは、自分の目を疑い始めた、あまりにも意外で目を剥き、擦ってもう一度じっくり前の女の子を見て、もう一度言葉を発した。


「本当にベアトリス……だよな?」


 対して、ベアトリスは無表情の儘答える、


「こんな声の知り合えが他にある訳?」


「松明を顔の下に置くなよ、せっかくの顔が台無しじゃないか……それと消してもいいんじゃないか?此処なら月光の反射で物は見えるし、この洞窟の壁と地面は火山瑠璃だから……」


 夜だが、ここは電気も電球もまだ存在しない異世界。クーゲルの言う通り、松明を付けなくてもよく見える、がベアトリスはそんなことを知っているし、彼女が気を配っているのは見えるか見えないかではない。


「こんな面倒事を押し付けて……言いたいのはそれだけですか〜〜?」


「……すまん。」


「よろしい……それと、戻ったらじっくり招待してあげるから……覚悟しなさい。」


 そう言いながら、血管が浮き出し、偽笑いし始めるベアトリスを目に、クーゲルは冷や汗をかきながら頭を下げた。


「本当にすまん……あと、あれを……」


 クーゲルが指している方向に、何かの卵があった。それは、成人一人をも入れるかと思わせるほどの代物。


 それを見て、ベアトリスは思わずため息を放った。


「何よあれ……アングイスの卵?おまえ、こんなものを取りにここに来た訳?」


「その……これを食えば、お前の父が元気になれるはずだと思って……」


「ハア……」


 やはりこの皇子は勉強に長けていないわ……と思いながら二度のため息を放つベアトリスは、気持ちをまとまり、クーゲルに事実を述べる、


「いいですか?アングイスの繁殖期は晩夏まで、つまり、この卵は少なくても半年は温まっていたんですよ?おそらく中身は小竜になっている、人の父親になんてグロい物を食べさせる気?」


「ウッ……」


「ほら、そんなもの置いて行って、どうせここのモンスターも全部逃げ出したんだから、その卵も生きられないでしょうね……」


 この時、ベアトリスが何かを思い付いた様に、目をほんの少しだけ張り、また小声で語った、


「イヤ、持ち帰ろう。天災のせいで、親から引き離された子だね……」


 又して寂しい顔を晒すベアトリスを見て、クーゲルはどこかくすぐられた。


(又だ、又その目だ……俺より幼いのに、親と周りに愛されているのに、一体どうして、そんな孤独を知るような顔を……)


 表情を元に戻し、今度、ベアトリスは凛々しく声を上げた。


「足音がなくなったようですね、よしっ……諸君!ご苦労であった!バルフェングが自力で捜索目標を見つけ連れ戻ったことにより、此度の依頼はもう半分を達成した!よって、護衛の報酬は追加報酬として全員に払おう、危険補償金も3倍にする!あとは生きて町へ戻ることだけだ!」


 それを聞いたハンター達の顔は、又しての驚きに染まれた、だが、追加報酬があると聞き、納得した顔に表すのは、生還の愉悦と報酬への期待。


「だが!その前に……」「……」


 真剣な顔で何かを言おうとするベアトリスに対し、ハンター達も気分を引き締めて聞くが……


「メシの時間だ。」


『グルルルル……』


 それを聞くハンター達は、一斉に腹を鳴らし、笑いを我慢できなかった。


「ハハハハハハ……確かに、モンスターのせいでメシ食い損ねたしな!アハハハハハハ……」


「言われたら俺、腹ぺこぺこス……」


「緊張で忘れたけど、お昼の後何も口に入れなかった……」


 そんなハンター達に、ベアトリスは穏やかな微笑みしながら声を張った。


「ミルクは置いて来ったし……今は具沢山スープくらいかな?」


「「賛成〜〜」」


 こうして、ベアトリスは指を鳴らしてバルフェング達を呼び戻し、みんなで洞窟を出て、適当の空き地で夕飯を済ましてあった。一時の安らぎを得たハンター達は、またバルフェングとべロックスに乗り、アインハイゼへ帰還を目指した。


 帰還の道中、卵の外見を観察し、そのサイズと模様を見て違和感を覚えたベアトリスは、背後で自分の腰を掴んでいるクーゲルに尋ねた。


「殿下、その卵はどこで取ったのですか?」


「エッ?えっと……噴火口辺りの洞窟……」


 これに対し、ベアトリスは舌を鳴らし、クーゲルはそれに困惑した。


 思った通り、これはアングイスの卵ではなく全く別の生き物の卵だ。なんなのかは知らないが。いくら休眠中とは言え、火口に接近して卵を産める生物なんかどうせ碌な者じゃないし、ただ者じゃない……


 卵が受精した後、アングティグアは、植物がある地域の中で高度がある場所で巣を作る、火口付近は当然高いが植物がない、いくらアペックス級モンスターとて卵は脆いし、親も何も食べない訳にはいかない。


 この世界の竜は恒温動物、新陳代謝が速いから、何も食べないと一週で餓死してしまう。アングティグアとアングホークスは、交替で卵を孵化し、狩りついでに周りを見張ると言う分担法を採用するモンスター、前世の動物でもよく使われる方法だ、が、それは今注意すべき点ではない。


 動揺を外に出さないように、ベアトリスは中で嘆いた。


(面倒な代物を拾ってしまったようだね……)


「て言うか、人の腰をそんなにキツく抱きしめないでくださいな。」


 それを聞いて、二人の後ろに乗っているアンナが指で口を覆い、近くにいるハンター達は笑い上げる中、クーゲルは顔を赤くしながら叫ぶ。


「しょうがないだろう!バルフェングに乗るなんて初めてなんだから!ってか、なんでお前らは平然でいられるんだよ!」


 天災をも言えるモンスターの群れから生き残ったばかりのハンター達から見れば、これくらいは当たり前だろう。


 地上の人々がざわざわしてる間に『星』が夜空の中で現れた。あれは何かの輪郭(りんかく)を描く青白い光。瞬く間に、それは段々と大きく、その煌めきを増していく、ハンター達が気付く間には、何かの姿がハッキリ見えた、あれは……


「嘘だろ!天災が……こっちに向かって……!」


 ベアトリスの目も驚愕に染めた。


 なによあれは!てか聞いた事ないぞそんな光るヤツ……!


「全員散開!耳を塞ぎ、地面に貼り付き、口を開けろ!!」


 ベアトリスの指示によって、天災であるモンスターの群れを凌いだハンター達は今、無条件でベアトリスの指示に従った。彼らは信じる、ベアトリスなら、きっとみんなを連れてもう一度死地から潜り出せると。


 パウ〜〜〜〜〜!


 熱が昇る中、この爆弾を投げられたような状況で、視覚と聴覚を共に奪われたハンター達は冷や汗をかきながら、感覚の戻りを待った……

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