3回転目:物書き3年エタらせば刮目して見よ
今度次が出るのはいつになるんでしょうね
「うひ~…」
夏真っ盛りすぎてあんまし人も出歩かない中、ガルア公園……そういやある場所とか言っときながらぼかしてましたね?いたって普通の公園です。とにかくそこを出た私は次なる目的地に向けて汗をかきかき歩く。にしても歩いてる一般人私以外にいねぇな、歩いてるのも巡回と称して散歩してる騎士さんたちくらいなもんだ。
そんな騎士さんらも数十年前はどんな季節でも頭部以外金属鎧とかいう(特にこの時期)頭おかしい格好してたんですが、現在は気温調整できる便利な魔術陣や衣服技術の発展により耐暑耐寒機能が付いた特殊なものを着用して皆さんお仕事を頑張ってます。チキュウの技術力どうなってんですかね?
「ふぅ、着いた着いた」
とかなんとか言ってる間に次の目的地に到着。今度は屋内だからしっかり涼めます、ヤッター!てことでここは…まぁ、喫茶店ですね、私行きつけの良い店です。
扉を開けるとそこには女性が一人。カウンターに片肘ついて暇そうにしてるこの方がこの店の主です。
「んぉ、いらさい。注文は?」
「アイスコーヒーで」
「りょー」
と、こちらに気付いた店主が眼鏡越しの翡翠色した切れ長な瞳でお出迎えアンドお仕事モード、そして私もいつも頼んでるものを注文して適当に着席。
ふぃー…と気怠げな声を出しながらもこの店主が淹れてくれるものは絶品、いつも頼むものではありますがそれでも楽しみですな。
「あいよ、おまたせぇ。今日はちょっと遅かったね」
「あんがとございます、ここに来る前にガルア公園でちびっ子たちに魔力の何たるか、その深淵を覗くための手ほどきを少しばかりしてましてね」
「あぁ、あのちびっ子四人衆。んで、彼らはその深淵とやら覗けそうなの?」
「まぁ、少なくとも私よか全然?」
「ほーん」
などと適当に会話しながら一飲み…う~んいつ飲んでも美味い。
「にしても、今日も客私一人なのはいいんで?一応天陽の昼前ですけど」
「そもそも昼はやってないって知ってて言ってるでしょキュルちゃん。元々うちはバーだっての」
「そうでしたっけ?あんまりにもミレスさんのコーヒーが美味しいもんだからつい」
「言うわねぇ」
おだててもなんも出ないぞと言わんばかりの顔でミレスさんは軽くつついてくる。いや実際美味しいんですけどね?
「そうだ、ミレスさんに一つやってほしいことがあるんですけど良いです?」
「ん?ずいぶん急ね。…また豚骨栄養ドリンク作ってとか言ったらつまみだすよ」
「いやもうあんなこと言いませんって…」
営業時間外のここに来た目的は勿論この至高の飲み物をいただくためなんですが、もう一つの目的もここに来る道中で湧いてきたのだ。というわけで私はあるものを用意、準備しますはそこらで売ってるとある道具だ。
トランプより少し大きめサイズで、スートの代わりに複雑な模様が描かれているカードを一枚ポシェットから取り出してカウンターに置く。それを見た彼女は怪訝そうな顔でこちらを見ている。
「それは…」
「はい。見ての通り属性ミエール君です」
「ネーミングセンスよ」
「わかりやすくていいでしょう?」
これは魔力属性識別用…やべ、正式名称忘れた。まあ属性ミエール君でいいでしょう。とにかくこの道具に魔力を流すとその人の魔力適性が分かりますよ、という中々面白い代物です。
この属性は大雑把に火、水、風、土、光、闇の六つに分類されまして、道具使用者の魔力に応じてミエール君も異なる反応を見せます。例えば火に適性ありならカードが赤く染まり、ついでに印刷されたての紙みたいにあったかくなります。
「先ほど魔力云々をやってて、そういえばミレスさんってどれに適性あるんだろなーって気になったので持ってきました」
「なーるほど。ちなみにキュルちゃんは?」
「私ですか?フフフ、実はですねぇ…」
「実は?」
「めっっちゃ普通の土属性適性です」
「もったいぶってそれかい」
まあ総魔力量の都合で私は生活魔法の【ファーム】しか土属性魔法使えない訳ですが。余談ですが土適性だと茶色になってカードから金属音がするようになります。どう見てもペラい紙なのに不思議なもんですね?
「私みたいな味噌っかすの話はまた別として、今はあなたですよ。ほれ、魔力流してみちゃってくださいな」
「はいはい。つっても、私とてそう面白いものでもないわよ?」
そう言いながらも彼女は置かれていたミエール君をつまみ取り目を瞑って集中する。この人こういうの絵になるな~なんて考えてると、次第に変化が現れていく。
白かったカードが自然を想起させる緑色へと変わり、それと同時に風が吹いてるでもなしにカードが風に揺られているかのような挙動を見せる。つまりこれは…
「なるほど、風適性でしたか」
「ええ。なんだかんだ便利よ?【ブリーズ】なんかは特に」
「あ~、良いですね」
生活魔法は基本的にどの適性でもすべて使えるようになっている便利な魔法なのだが、適性と一致する属性の魔法に対しては効果の上昇や使い勝手の向上といった微弱な恩恵があったりもする。【ブリーズ】という洗濯物の乾燥などに使われる魔法の場合は風量を細かく弄れるようになるとのこと。
「…む、無い」
「おかわりいる?」
「いえ、大丈夫です」
「そう?ならお代のかわりに少し開店準備手伝ってもらいましょうかね」
「了解ですよ~、とりあえず軽く掃除からします?」
「そうしましょうか。そっちに道具あるわよ」
「はーい」
てことで、2時間くらい店の掃除やら仕込みの手伝いなどをすることでコーヒー代かわりの労働力となったのでした。これもいつものこととはいえ、普通にプラスでお金払ってもいいくらいなんですよね…そんだけ美味しい。次寄るときなんかしらプレゼントでもしましょうかね?
ミエール君の魔力適性丸分かり表
火:赤くなる+あったかくなる
水:青くなる+なんか紙が湿る
風:緑色になる+風になびくみたいに動く
土:茶色になる+金属みたいになる
光:黄色になる+発光する
闇:黒くなる+セロテープみたいな粘性を獲得
余談
生活魔法は誰でも使えるが、攻撃性能のある魔法は習得がある程度適性に左右される。とはいえ超絶努力すれば適性皆無の魔法でも使えたりする