精霊王の記憶
発投稿です。最後までお読みいただけると嬉しいです。
「あなたが悪いのよ。あなたが、あなたなんかが王太子殿下の婚約者に選ばれるから」
そういって、ひとりの令嬢が私のことを城のバルコニーから突き落とそうとする。
「----……っ」
ああ、ああ、人間とはなんて愚かな生き物何だろう。
「ふふっ」
どうして愚かだと気づかなかったんだろう。
「ふふっ、ふふふっ、あはっ、あははははっ」
信じようとした人間も、信じてしまった私たちも、本当に愚か。
「な、なに笑ってるのよ」
これで何度目だろうか。
「いえ、ただ私が思ったのは----」
何度も何度も信じようとして、何度も何度も裏切られてきた。
だから、もう--------
「人間とは、なんと愚かなのだろうと。ただそう思っただですよ」
人間を信じるのは、もうやめよう。
*****
「精霊王!門を開けろ!人質の精霊達がどうなってもいいのか!」
門の外からそんな声が聞こえる。
「陛下!おやめください!門を開けようなどと!」
「でもっ!門を開けないと、彼らの命がっ!」
門の外からの声に悲鳴が混じり始めた。
「いやっ!やめて!やめてよっ!いやあっーーーーーー!」
「なんで?!どうしてこんなことするの?!王様、助けてよっ!助けてっ!助け-----」
「離してください!こうしている間にも彼らは!」
「お辛いのはわかりますがどうか耐えてください!ここで開けてしまえばそれこそ同じ過ちを繰り返すことになってしまいます!」
「でもっ、でもっ、それじゃあ彼らはっ!」
「陛下!耐えてください!」
「そんなっ!でも」
-------それから3日もたったころには外はすっかり静かになっていた。
*****
-----これが一度目。
*****
「精霊の女王よ。どうか力を貸して下さい」
人の国の王子からそのように頼まれた。
話を要約すると魔王が生まれ、世界が滅んでしまう恐れがあるため、契約して魔王の討伐を手伝ってほしいそうだ。
他の精霊達からは反対されたが、私は魔王を討伐するため契約する事にした。
その後無事魔王を討伐し、世界の平和は戻った。
「ねえ、リリエラ。一つ言いたいことがあるんだ」
「なあに?」
「僕と---結婚してください」
そして私と契約者の王子---シアンは結婚し、双子の子供も産まれた。
しかしその後、精霊王の力を欲した父王によりシアンが殺された。
*****
これで、二回目。
*****
シアンが殺されてからもう何年たっただろう。
私はあれから人間界で各地を転々としていた。
ある時は冒険者として魔物を討伐したり。
ある時は治癒師として病人や怪我人を治療したり。
またある時は吟遊詩人として詩を詠ったり。
とにかく思いつく限りのことをした。
そんなある時王城に呼び出された。
そこで私は今までの功績を評価され宮廷魔術師となった。
宮廷魔術師となってからは、忠誠を誓うほどではないにしろ王のため、国のためにいろいろ尽くしてきたと思う。しかし王が崩御し、王太子が即位してしばらくたった頃、恐れていたことはおきた。
「リリエラ・アルスティール!お前のことを王宮から追放する!意義は認めん!今日中に出ていけ!」
「なっ!陛下!どうかお考え直しを!」
「ええい!意義は認めんといっているだろう!さっさと出ていけ!」
*****
これで、三回目。
その後も何度も何度も裏切られ続けてきた。
そのたびに、何度も何度も信じようとしてきた。
でも、もう信じない。信じれない。
もう諦めよう。
人間に期待してはいけない。
*****
-----その後、ある一つの神託が下った。その内容は新たな魔王が誕生したとのことだった。
それが彼女なのか、それとも彼女とは関係ない別の者なのか、それは誰にも分からない。
ただ分かるのは、魔王には、魔王として生まれた者と魔王となってしまった者が居るということ。そして魔王となってしまった者には相応の理由があるということだ--------
お読みいただきありがとうございました。
気に入っていただけましたら↓の星を水色にしてくださるとうれしいです。