第一話 中編 その2
母に呼ばれ、そのまま親父に抱っこされながらリビングへと移動する。
廊下に出ると、俺から見て右にすぐ窓があり、そこから外が見える。
うちの村は漁村なので、当然だが海がある。
うちの家は結構高い位置にあるので、下の方を見るには思い切り覗くようにしなきゃ見えなかった。
だが、外から活気のある声が聞こえることから朝市でもやっているんだろう。
そんな事を考えていると、いつの間にかリビングのドアの前に立っていて、「ガチャ」という音と共に入っていく。
「お待たせ」
親父がそういうと、母は小さく微笑んだ。
食卓テーブルの上には、流石は漁村と言うべきか焼き魚と、山菜と貝のスープが置かれていた。
美味しそう…っと思ったが2人分しか置かれていなかった。
俺はまだ赤ちゃんなので、乳を吸うことになるだろう。
親父が俺を母さんに渡し、母さんは当たり前の様に胸をだし、俺は当たり前のようにそれを吸う。
え?大人としてのプライドが無いのかだって?
何言ってんだ、俺はまだ生まれたばっかの赤ちゃんだぜ。
そして親父は椅子を引き、座ると手を合わせて
「いただきます」
と言い、ご飯を食べ始めた。
母さんはいつもの通り俺がお腹いっぱいになってから、朝ごはんを食べるつもりなんだろう。
すると、親父が母さんに話しかける。
「本当に上手くいってよかったよな。
ウェイリックがダメになって逃げる事になった時はどうなるかと思ったよ」
「そうね、本当に子供まで生まれて…
何とかなって良かったわ。」
「ああ、本当メリーナ村の皆には感謝しかないよ」
ウェイリック…というのはウェイリック王国の事だろう。
俺の記憶が正しければ、その国はロドフ教徒とメリー教徒の間の宗教の違いで紛争になっていた国だよな。
逃げて来たって事は、2人は元々はウェイリック王国の人間だったんだろうか。
「これも全て運命神ロドフがやった事だろうな。あのクソ野郎、本当に許せないよ。」
「ええ、この村にまで危害を与えて来なければいいけど…」
「大丈夫さ、レンジナ王国は完全なメリー教国なんだ。そう簡単には関与できない。」
「そうよね…」
親父はこう言ってるが、俺が6歳の誕生日の1ヶ月前くらいにとんでもない事件が起こる。