003 冒険者達の集う国 ※挿絵あり
1ヶ月後…
バンルがアルセリアを目指し歩き続けて1ヶ月の月日が経っていた。
ザッザッザ…
雨上がりの森の中でバンルは葉っぱの傘を持って歩いている。
チュンチュン…
(あれ?もう雨止んでたのか…気づかんかった。んじゃこの葉っぱもいらないな)
鳥の鳴き声で雨が止んだことに気が付き、持っていた葉っぱの傘を近くの木のそばにそっと置く。
(森に入ってからもう2日目か…食料が尽きて2日間も経ったら流石にバカ腹減ったな…ん?あれは…)
ゆっくりと歩いていたバンルは急に走り出した。
走り続けると木の隙間に差し込んでいた朝日の光がどんどん広がっていく。そして森を抜け、崖の上で立ち止まった。
「やっぱそうだ!隣の国から1ヶ月歩き続けてようやく着いた」
(冒険者達が集う最大の国アルセリアに!…)
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ガツガツ…ゴクゴク…ぷはぁ!!
「2日間ぶりの飯うめぇ!!」
バクバク…
バンルはアルセリアの『バーニジア』という街で飯屋にいた。驚くことにバンルはピザ5枚に分厚いステーキ、山盛りのポテトにライスやソーセージ…合計5kg以上の飯を食べている。
「何者なんだ、あの男…」
「あんな細い体でどんな胃袋してるんだ?」
「初めて見る顔だな…」
周りにいる何人かが大量の飯を食べているところを見て、ザワつき始める。周りがザワついてるなか、フードで顔を隠している男がスッと急に現れた。
「よぉ、初めて見る顔だなお前さん!この国は初めてか?」
「んぅ?ゴクン………」
(この大男、いつこの店に入った?飯を食ってる途中だったとは言え、話しかけられるまでこいつの気配に気づかなかった……)
「……あぁ!冒険者になるために今日この国に着いたばかりだ。ただ集会所の場所がわかんなくてさぁ、探しがてらにこの店を見つけて飯を食ってたんだ」
大量の飯を飲み込みんだ後、数秒間フードの男を警戒してからバンルは表情と雰囲気を変え、明るく質問に答えた。
「へぇ、今日から冒険者になんのか。なら俺が集会所を案内してやるよ」
「まひふぇ!ふぁふはふ!(※マジで!助かる!)」
「ははは!食うか喋るかどっちかにしろよ」
完食した男はフードの男と一緒に集会所に向かって歩く。
「それにしてもお前さん、よくあんな大量の飯を1人で完食できたな!そんな細い体で…」
「普通の人より大食らいなだけさ」ドヤァ
何故かバンルはドヤ顔をして自慢げに言う
「はは!なるほど。そういや俺まだお前さんの名前聞いてねーや。なんて名前なんだ?」
「俺はバンル」
「バンルか…良い名前だな」
「アンタの名前は?」
「俺はアルヴィンだ、よろしくな。一応冒険者だ」
「へー冒険者なのか。ならさ冒険者のことについて色々と教えてくれないか?俺まだよく知らなくてさぁ…」
バンルはアルセリアに来たはいいが冒険者のことをあまりよく知らずに来てしまったので、アルヴィンが冒険者だということを知り 丁度いいと冒険者について聞くことにした。
「そうだなぁ…まず冒険者にはランクがあって、1番下のランクから順にブロンズ、シルバー、ゴールド、ダイヤモンドの4つがあるんだ」
「冒険者にランクなんて必要あんのかよ?」
「あるぜ。ランクは冒険者としての素質と強さの証明なんだ」
「なるへそ」
「まずブロンズは殆どが初心者で難易度が低いクエストしかできない。これは冒険者になったばかりの奴が調子に乗って危険なクエストをさせない為の防止らしい」
「へぇ、意外としっかりしてんのな。他のランクは?」
「シルバーから少し高い難易度のクエストができるようになる。他にも依頼やダンジョン攻略が1人でできるようになるぜ。殆どの冒険者の持つランクはシルバーだな。その上のゴールドは全てのクエストができて、ギルドを作ることができる」
「ん?ちょっと待てよ。ゴールドで全てのクエストができるならダイヤモンドは別にいらなくね?」
「あー、ダイヤモンドは特別でな、この国の王に最高の冒険者だと認められた者にだけ貰えるランクなんだ。」
(特別なランク…最高の冒険者か……)
バンルは眉間にしわをよせてアルヴィンをじっと見る
「ちなみにダイヤモンドのランクを持つ冒険者は、現在この世界で6人しかいない」
「少な!!」
「それほどダイヤモンドは特別だって事だよ。てかランクの話をしてたら着いたぜ」
「あれま、いつの間に…案内してくれてあんがとよ」
「どうもどうも。んじゃ俺は別の街に用があるから…またいつか会おうな!」
そう言ってアルヴィンは背を向けて歩いていく。
バンルは何故か集会所に入る前に背を向けたアルヴィンを見ていた
(ダイヤモンドの冒険者…多分あいつがそうなんだろうな。
俺が飯を食ってる間、声をかけてくるまで気配に気づかんかったし、歩いてる時も足音が聞こえなかった。あれが最高の冒険者か………)
「さてと、俺は俺の用事を済ませるか…」