009 大事な話
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
「オラァァァァァァ!!」
腕相撲を始めた2人の腕はどちらにも傾かず、かなりいい勝負をしていた。
「いいぞルーキー!」
「いけいけ!」
「ジェイクもっと力入れろって!」
「めっちゃいい勝負してんぞ」
周りの冒険者達は盛り上がり、2人に応援の言葉が飛び交っていた。
「うわぁ、バンル君凄いね!ランクゴールドのジェイクといい勝負してるよ」
ゴクゴク…
「バンルも実力はゴールドレベルだよ。だから裏審査に楽々クリアできたんだから」
「裏審査?!ちょっと何それ私聞いてないんだけど!」
裏審査の言葉を聞いたテミーは目がキラキラしている。どうやら興味津々のようだ。
「あり?言ってなかったけ」
ステラは酒を飲みながら今日の出来事をひと通り話す。テミーはその話しをとても面白そうに聞いていた。
「へぇ、そんな事があったんだ」
「おかげで今日は楽しい1日だったよ」
「…さっきの話が本当なら、バンル君はあの事件に協力してくれるんじゃない?」
「…うん、絶対ね。早く失踪した人達を救けたいよ」
テミーが言ったあの事件というのは、バンルが掲示板で見かけた30人失踪事件のことだった。
「そうだね……うわ!待って待って私達が話してる間になんかもう決着つきそうになってる!」
「マジ!?どれどれ〜どっちが勝ちそうなんだ〜」
ステラとテミーが色々と話してる間に腕相撲の決着がつきそうになっていた。勝ちそうなのはバンルの方で、ジェイクの腕が少しずつ外側に傾いている。
「押せ押せ!ルーキー」
「あとちょっとだって!」
「ヤバい負けんなってジェイク!」
周りの冒険者達は大盛り上がりだ。
「ぐあぁぁ、まずいまずい!」
「ドラァァァァ!!」
ダァァン!
ジェイクの腕が思い切りテーブルに叩きつけられる。大盛り上がりの腕相撲に勝負がついた。
「いよっしゃあぁぁ!」
「ちくしょう 負けたぁぁ!」
勝利したバンルはテンションが上がり、テーブルの上に乗ってガッツポーズをする。
「すっご!勝っちゃったよ!」
「ね、バンルに賭けて正解だったっしょ」
「うん!いやぁ、良いもんが見れた。そんじゃ腕相撲も終わったし そろそろ仕事に戻るね」
そう言ってテミーはカウンターの方に戻って行った。
勝負がついた後、周りにいた冒険者達がバンルとジェイクの方に駆け寄ってくる。
「やるじゃねーかルーキー!お前に賭けて良かったぜ」
「ジェイク〜、やっぱまだゴールドになるには早かったんじゃないか」
「うっせ!お前らもこのルーキーと勝負してみろ!めっちゃ強ぇからな!」
駆け寄ってきた冒険者達は勝者のバンルを讃え、ジェイクの事を茶化したりしていた。バンルがテーブルから降りた後、ジェイクがバンルに寄り右手を差しだしてくる。
それに気付いたバンルも同じく右手を差し出してガシッと握手をした。
「いやぁ負けたよバンル。流石 裏審査にクリアしただけあるな」
「いやいや俺もかなり危なかった!こんな接戦の勝負ができてすっげー楽しかったよ」
この腕相撲でバンルは ジェイクや周りの冒険者達と仲良くなった。握手を終えたバンルはしばらくしてステラが座ってる席の方に戻る。
ゴクゴク…ぷはっ!
「いい勝負だったよバンル。久々に賭け事もできて凄く楽しめた」
「ははは あんがと。いやぁ、この店にいる冒険者達は皆良い奴ばっかだな。」
「でしょ?ここに来れば毎日退屈しなくて済むんだ」
「だろうな。すげー居心地いいもん」
「フフ……さてと、実はバンルに大事な話があるんだ。お酒飲みながらでいいから聞いて欲しいんだけど…」
ゴクゴク…
「ん?いいぜ」
「ありがと。大事な話っていうのは この街や他の街でも起きてる ある事件についてのことなんだ」
(…ある事件?もしや)
その言葉を聞き バンルは掲示板に貼られてあった失踪事件の紙を思い出す
「…それってもしかして掲示板に貼られてあった失踪事件のことか?」
「知ってるなら話が早いや。その事件の解決に協力して欲しいんだ。まぁ強制じゃないから断ってくれても構わないよ」
「協力するに決まってんだろ。てか掲示板で見かけた時から俺1人でやるつもりでいたからな。断る理由なんてねーよ」
ステラが言い終える前にバンルは即答で了承する。
「あはは!即答かい!やっぱバンルなら協力してくれると思ってたよ」
ステラは話しをする前からバンルが協力してくれることを確信していた。何故 確信していたのか、それは今日1日だけで
ステラにはもうバンルがどういう人物なのか分かっていたからだ。
ゴクゴクゴク……っぷはぁ
「よし、それじゃあ その事件について詳しく教えてくれないか?俺まだ掲示板で見かけただけで、よく知らないんだ」
「ん、分かった。でも あんま期待しないでね」




