007 冒険者になる覚悟
「最終試験は今までの試験より難易度は高いよ。覚悟はいい?」
「それを聞いてやめるほど俺はやわじゃねーよ。さ、ドーンと来い」
「うん、満点の解答だね。…最後の試験それは……質問!」
「……は?質問?」
最終試験の内容があまりにも意外で、バンルは拍子抜けする。
「………クエスチョン?」
「イェス!クエスチョン!」
あまりにも信じ難いことでバンルはもう一度聞き返す。しかし間違いなどではなく、最後の試験は質問で合っていた。
「んだよ〜。最後の試験だから気合い入れたのに」
「あはは!皆そういう反応するんだよね。……でもよく考えて」
「?」
「ただ質問に答えただけで試験が即失格になる可能性があるってこと」
「!!」
質問に答えればいい簡単な試験だと思っていたが、答え方によって即失格するという恐ろしさにバンルは気付いた。
(確かに俺にとっちゃ今までの試験より難しいな。……というかタチ悪ぃな!)
「まぁでも質問の数は1つだから、そんなに緊張しなくていいよ」
「だ〜から余計怖いんだよ。たった1つの質問のせいで今までの試験がパァになるんだから。てか!その事も分かってるくせに言ったろ!」
「あっはは!そだよ〜」
「こんにゃろ〜嫌な性格しやがって。ほんとに仲良くなれそうだぜ(笑)」
「私もそう思う(笑)」
(質問かぁ…まず何が正解で何が間違いなのか分かんないな。よくよく考えてみりゃ、この試験の趣旨が分からんし…質問の内容にもよるが、一体どう答えりゃいいんだ)
バンルは質問という試験の恐ろしさを知り、考え込む。
「考えてるとこ悪いけど、もう試験を始めるよ」
「ふぅ……よし!いいぜ」
「そんじゃ質問するね。バンル、君が冒険者になりたい理由は何?」
「………」
この質問に対し、バンルは真剣な顔で黙り込む。数秒間目を閉じ、軽く深呼吸をして口を開いた。
「…奴隷で苦しんでる人を救うためだ」
それを聞いたステラも真剣な顔になる。
「…ふ〜ん?でも奴隷を助ける為だけなら、別に冒険者に
ならなくてもいいんじゃない?」
しかしステラはニヤッと笑って、バンルにいじわるな返しを
する。
「俺も最初はそう思ってたんだが、ただの一般人じゃ情報は入んないし、立ち入り禁止の場所ばっかで その場の調査をすることもできなくてな……それで悩んでる時、ある人から この国なら情報が手に入るし、冒険者になれば調査をすることもできるって 教えてもらった。だから俺は冒険者になろうと思ったんだ」
(奴隷を助けるためね………うん、いい覚悟を持ってる)
「なるほどね…人の為に冒険者になることは素晴らしいことだよ。この質問だけで君がどういう奴か大体分かった。……おめでとうバンル、冒険者資格試験クリアだ」
ステラは笑顔でバンルの方に向けてグッドのポーズをする。
「はぁぁよかった。他の試験と比べてこの試験めっちゃ怖えーから心臓バクバクしてたんだよ」
「それと、裏審査にもね」
(………ん?裏審査?)
バンルはキョトンとした顔をする。その表情を見たステラはニヤリと笑った。
「いい表情するね〜。実は受験者には秘密で資格試験を行う際、同時に裏審査っていう試験監督による審査があるんだ」
「はぁ……」
何が何だかわからず、とりあえずバンルは はぁ…と呟くことしかできなかった。
「裏審査は冒険者の実力を測るためにあって、これにクリアすると昇格試験なしでシルバーのランクから冒険者になれるの。ちなみに審査する項目は『体力』『身体能力』『知力』『戦闘センス』『覚悟』の5つ」
「は?待て待て、そんなのいつから審査してたんだ」
ようやく理解が追いついたバンルはステラに質問をする。
「ん?草原で歩いてる時からずっと」
(マジか…そんな前からかよ)
「目的地まで私と距離を離さず走り続けた『体力』と『身体能力』。調達試験で崖を登る前に状況観察をした『知力』。
30匹以上の魔獣を無傷で倒した『戦闘センス』。そして最後の質問で答えた冒険者になる為の『覚悟』。バンルは5つとも素晴らし結果だった」
(あ〜なるほど。質問の試験は覚悟を審査するための試験だったのね)
質問という試験の意味をバンルは理解した。
「さて、資格試験並びに裏審査をクリアしたバンルは今日からシルバーの冒険者なんだけど、私は正直バンルの実力的にゴールドにさせたいんだよね〜。でもシルバーまでが決まりだからなぁ…」
ステラはバンルのランクをゴールドにさせたいが、シルバーまでが決まりなので悩んでしまう。
「いやいやシルバーで十分だって。ゴールドなんて昇格試験受けてクリアすりゃいいんだし」
「そう?よーしそいじゃ、冒険者になったお祝いで飲み行こ!私が奢るからさ!」
「マジで!よっしゃ、飲もう飲もう!」




