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姫とキラ星さんシリーズ

彦星さんとキラ星さん②

作者: 日下部良介

 彦星さんと連絡を取らなくなって久しい。彦星さんは私の憧れの人。そんな彦星さんと最近は連絡を取っていない。

 元々、彼の気持ちが私に向いていないのは解かっていた。私からメールをしてもなかなか返事をしてくれない。その割に彼からの連絡はいつも突然。

『今、あのお店に居るから来て』

 いつも一方的で私の都合など考えていない。それでも来いと言われたら飛んで行く私。それほど思っていた彦星さんと最近あまり連絡を取っていない。諦め…。そうではない。


 久しぶりに彼と行ったお店を訪ねた。

「この前来ましたよ」

 店のマスターが彦星さんが来たことを教えてくれた。

「どんな感じでしたか?」

「職場の同僚の人たちと来ていて、楽しそうでしたよ」

「それは良かったです」

 いつもなら、根掘り葉掘り聞いてくるマスターがこの日はそれ以上彦星さんの話はしなかった。私の隣には別の人がいたから。


 キラ星さんと仲良くなってから、彼は三日に一度くらいの割合で私を訪ねてくれる。キラ星さんと会うことが多くなって、私は彦星さんのことを考える時間が少なくなった。私がLINEを送るとキラ星さんはすぐに返信してくれる。それが嬉しくて私もまたすぐに返信する。今ではそんなやり取りが日課になっている。だからと言って、私は彦星さんのことを忘れてしまったわけではないのだけれど…。


 遠くから見ているだけでよかった彦星さん…。呼ばれたら会いに行く彦星さん…。

 近くで見ていてくれるキラ星さん…。会いたいときに駆けつけてくれるキラ星さん…。


 このお店もそう。私は気が付けば彦星さんとの思い出の場所をキラ星さんと辿っているような気がする。キラ星さんには申し訳のないことなのだけれど、キラ星さんは言ってくれる。

「ボクが上書きしてあげる」

 それもいいかも知れない。

 その場所に行くたびに思い出すのが辛かったことや悲しかったことばかりなのだとしたら、それが楽しい思い出に変わるのは悪くはない。


 一週間キラ星さんの顔を見ないと不安になる。このところ感染症による外出の自粛要請を受けて、お互いにそれを守ろうと約束をした。けれど、キラ星さんはきちんと予防策を講じたうえで、きっと会いに来てくれる。だから私は敢えて言った。

「来るのはやめてください。大切な人にもしものことがあったら嫌なんです」

 そう。キラ星さんは大切な人。大切だからこそ、いつか壊れてしまうかも知れないような付き合い方はしたくない。そして、キラ星さんもそれを望んでくれている。今のまま、いくつになっても同じようにお付き合いできればいいと思うし、そういう風に頑張るつもりだ。


「今度天気のいい日に一緒に河原でも歩きましょう」

「それはいいですね。姫がその気になった連絡してください。いつでもすぐに飛んで行きます。まだ、桜が咲いているといいですね」

「私は花より団子ですよ」

「姫は僕にとっての“花”です」

「まあ。キラ星さんったら」

 思わず顔が赤くなる。でも、キラ星さんらしい。今からその日が楽しみだ。

 本当に早くこの騒ぎが終息して欲しい。




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