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欠けたピース

 ーサウスホープー


 ユウキは元気よく玄関を開けた。


 バンッ!


「ただいまー!」



 そこには息子の帰りを喜ぶ母と父の顔が・・無かった。


「あれ?」


「ユウキか?こっちだ!」



 中庭の方から声がした。父ボストン・ブレイクによるものだ。


「何だそっちか。」


 ユウキは中庭の方に移動すると、ボストンが穴を掘っていた。


「うんしょ、うんしょ」


 そしてもう一つの声、母リース・ブレイクである。何やら重そうな麻袋を抱えて穴から取り出していた。



「母さん!ただいま!」


 その声にリースは顔を上げると、穴から渡された麻袋をボストンの顔面に落とした。


「ぐおぉぉぉ!リ・・リース!?」


「ユウキ!お帰りなさい!!いつ帰ったの?帰る時は教えてと言ったのに!」


 ボストンは完全に視界の隅から消えていた。


「母さんごめん、急だったんだ。それより父さん大丈夫?」



 そう言って麻袋を片手で持ち上げて、穴の横に置いた。持った感じだと大凡30kgはありそうだった。


(父よ、日頃の鍛錬に助けられたな。)



「ありがとう、いや助かったよ。」


 服に着いた土を払いながらボストンはユウキに礼を言った。


 彼等は略奪を防止するため避難に持っていけない食物や貴重品を、可能な限り麻袋に入れて埋めていたのだ。

 使者から終戦が告げられ、逆に掘り返していたと言うわけだ。



 そこで何故ユウキがサウスホープに居るのか、疑問が浮かんできた。


「ユウキ、学園はどうした?それに先程までここは戦場に近かったんだぞ。」


 そこで玄関で待機していたグライスが顔を出した。



「此度の戦争を止めたのはお主の息子、ユウキ・ブレイクだよ。」


「グライス!いつ戻ったんだ?ってユウキがか?

 いくら何でも無理だろう〜ハハハァ?」


 今度はボストンが真剣な表情になり、ユウキに問いかけた。


「本当なのか?森林の方角から見えたあの光はユウキなのか?」



 ユウキは頷くと断言した。


「本当だよ。父さんにダルカス大森林の獣人討滅戦について聞きたい事があるんだ。

 紹介するよ、オーク族のグロッサム。討滅対象だったもう一つの獣人だよ。」


 玄関から3m近い巨体が姿を現した。リースとボストンはその異様な佇まいに呆けてしまった。



「グライスの友でユウキとは盟友のグロッサムだ。敵意はないので安心して欲しい。」


 それを聞いてボストンは落ち着かせると呟いた。


「そうか、もう終わったんだな・・それで聞きたいこととは?」



 リースが家に入りお茶の用意を始めた。グロッサムが大きいため家の中は手狭なので庭で話をする事にしたのだ。


 それぞれが石や椅子に腰掛けると、先程まで話していた獣人サイドの討滅戦の話をボストンに聞かせた。



「なるほどね。だが王都から出た命令は一つだ。獣人をこの地より殲滅せよ。

 だがグライスに大敗を喫した俺らの部隊は追撃する気力も命令もなかった。」


 ユウキは考えた。


 ボストンの部隊はグライスと交戦になり、部隊長が殺されてボストンとガルシア、それに数名の下級騎士が残っただけだった。


「バルトフェルドさん達はどうしたの?」


「なに?団長を知っているのか。団長は戦場に居なかったぞ。それどころか戦線の指揮を取っていたのかも怪しい。」


 どうやらミーティングや初動演説にも団長の姿はなかったらしい。国を挙げての戦争なのにだ。



「闇ギルドと団長は別々に動いていた・・そこから想定されるのは、団長クラスが王都から動けなかったか、もっと強大な敵に対応する必要があったか。」


 ボストンはその考察を聞いて当時を思い返していた。



「そう言えば戦争直前だが、王都の防衛と街の規律が厳しくなった。

 当時は獣人との戦争間際でそうなったと思っていたが、もしやあの戦争は別の行動を起こす副産物だったのか?」



 このボストンの考察でピースがはまった。ユウキは突然立ち上がると叫んだ。



「それだ!王都は魔族の攻撃に備えていた!

 魔族の紛れ込みを防止するのに防衛力の強化を図ると同時に、近くにいる獣人が魔族の関与を否定できないから排除したかったんだ!」



 パチリとピースが組み合わさっていく。だがグライスには疑問が残った。


「それなら警告した闇ギルドが説明つかない。」



 ユウキはそれに対して即座に反応する。


「そこが割れた所だよグライス!強硬派と可能性で獣人を殺す事を躊躇った穏健派で、行動が分かれたんだ。

 王がどちらかは明白だ。意見が割れた家臣相手に威厳を維持して、闇ギルドを動かせるのは彼しかいない!」


 だがその強硬派が誰だか分からない。しかもこの推測では魔族の目的も行動も不明のままだ。



 そこでボストンは諭すようにユウキに告げた。


「確かにユウキの言う通りであれば辻褄が合う。だけどな、中枢にいた人物に聞かないことには確定がしないぞ。」


 ユウキはボストンにニヤリとすると頷いた。


「うん、明日ダルメシア王に直接聞いてくるよ。」



 うん?この息子はなにを言っているのだ?


 そんな表情でユウキを見ていた。グライスは肩を竦めて補足した。


「お主の息子は明日に王と会談する。たった一年で呆れたやつだよ本当に。」


 リースとボストンは唖然としていた。そんな事は梅雨知らず立ち上がると、戦後処理の手伝いに森へ行くと言い出した。


「ありがとう父さん、何となく王への切り口が見えてきたよ!」



 リースは立ち上がるとユウキを抱きしめた。


「無茶はしないでね。」


 抱きしめ返してそれに応えた。そして晩餐会のことを告げるとユウキは踵を返した。


「あ、学園の卒業要件満たしたけどまだ帰らないからね!」



 後には手を振りながら帰る息子に呆れながら、しかし誇らしげに見守る両親が残された。





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