表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/269

新たな芽吹き

 急にユウキが言葉を切らした事で、獣人達が怪訝な表情をした。


「どうした?ユウキよ。」



 ユウキは首飾りの念話を一時中断すると、グライスの問いに答えた。


「アリサ達が持つ通信機から知らない人物より問いかけがあった。」


 それに皆が余りピンとこない感じで首を捻っていたので、補足する事にした。



「俺たちは魔力で遠くに居ても会話できるものを持っているんだ。だけど所持者とは別の奴から言葉が流れてきた。」



 それを聞いて納得すると、今度は別の問いが浮かんでグロッサムが聞いてきた。


「あぁ、人族はそんな物を持っていたな。ダルカスでも使っていそうだった。だが今の相手は誰だか分かったのか?」


 ユウキは少し考えた。


 今この場で国王直々に通信が来た事を告げる事で、大事にならないか心配したのだ。


 だが今ここに居る者達は信頼しても良い。と言うより自分からまずは信頼しないと、いつかは綻びが生じてしまう。



「ダメルシア国王からだった。」


 これには流石に皆が驚愕の表情を露わにした。


「でも内容をまだ聞いていないし、王都で人族を押さえ込む様に頼んだ俺の友人は無事だ。」



 グライスはふと表情を和ませると、ピリピリした空気を一蹴するように告げた。


「人族が動かなかったのは、やはりアリサとユウキの策略であったか。」



 ダンゾウがそれに続いた。


「我輩も戦時中に人族の漁夫の利を懸念しておりました。しかしそれが無かったのは僥倖と感じておりましたが・・・流石はユウキ様です。」



 そして難しい顔をしていたレクサスは、考えても無駄と言った感じで顔を上げると言った。


「では王都がどう動くか手並を拝見しようではないか。」



 ユウキは頷くと、再度首飾りを手に念話に集中した。


『国王、ご用件はサウスホープの件でしょうか?』


 すると、待っていたかのようにすぐに返答があった。


『不明確だな、戦争の件だ。何がどうなった?』


『ゴブリンとリザードマンの戦いは終戦しました。サウスホープに被害はありません。』



 すると国王の声が変わった。相手を値踏みするような抑揚のない無機質な言い方で宣告した。


『不明確だと言ったはずだが?』


 ここでユウキは察した。


 この人物は国王であるから国王なのではない。この人だから国王なのだと。



 だがユウキもここで気圧される気はない。


 既にサウスホープ村民とアリサ達、そしてゴブリン、リザードマン、オーク達の命を背負っている。


 それはもう一つの国と言えた。そして国の上に立つ人間を国王と呼ぶ。



 だがユウキにはそんな自覚は無かったし、国を起こす気も更々無かった。

 これがまだユウキとダルメシア王国との繋がりを持つ生命線にもなっていた。



『ダルメシア国王、無礼を承知で言いますが俺は沢山の命の上に今立っています。言葉は選ばせてもらいますよ。』


『ふむ、久しぶりに腹の据えた人物に出会ったぞ。知りたい情報は終戦理由と人族への敵意だ。』



 それを聞いて安心した。まずは国王が我武者羅に獣人を否定するのではなく、ただ自国の安否を気にしているのだ。


『理由は和解ですが、それにはそもそも戦争が発生した理由から説明する必要があります。時間を頂けますか?』


 一拍置いて国王から返答があった。


『・・・それなら城に来い。会食場を開けよう。』



 ユウキはグライス達に目を向けた。そしてピクニックにでもいくように告げた。


「皆、国王が俺に説明を求めている。皆も城に来たいかい?」


「えっ?いや?はっ?」


 一番分かりやすい発言をしたのはレクサスだ。他は唸っていた。


 当たり前だ。行き先は過去の戦争相手の本拠地で、しかも今でも殺される確率99%の場所に行こうと言うのだ。


「国王が望むのならオレは構わない。」


 レクサスとグロッサムが、グライスに対して驚いた目で見ると俯き考えに考え尽くした。


「グライスが望むのならばこのグロッサム、道は違えぬ。」


 グロッサムも同意した。


 レクサスは右手を握っていた。あの時重ねた手の温もりがまだある様な気がしたのだ。


「オレも信じよう。ユウキよ、我らの命をお前に託すぞ。」




 ユウキはそれを真剣な眼差しで受け止め、首飾りに集中した。


『国王、同意ですが一つ頼みがあります。』


『なんだ?申してみよ。』


『獣人のネームドクラスを三体同伴したい。』


 流石にこれには国王が面食らった。念話のため思わず心の声が漏れてしまった。


『なんっ!?はっ!』



 自分の牙城に敵であるネームドクラスを三体も引き連れてやって来ると言っているのだ。彼等は単騎でも王都を灰にする力を持っている。


 だがこれは国王が望んだ契機でもあると考えていた。



 そしてユウキが最後のダメ押しとばかりに告げてきた。


『グライス、グロッサム、レクサスの人族の友ユウキ・ブレイクは第1回人獣会談をダルメシア国王ダルメシア3世へ要請します。』



『・・ふふっ、錚々たる顔ぶれでは無いか。貴様が恐ろしいぞ、ユウキ・ブレイクよ。

 ダルメシア国王ダルメシア3世の名において、第1回人獣会談を許諾する。

 街の混乱回避と城の準備に、明日の朝8時まで猶予を貰うぞ。』


『承知しました。英断に感謝します。

 ・・それとアリサ、レナード、ルインの身の安全はお願いします。』



『是非もなし。』




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ