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グライスの憤怒

 ーサウスホープ平原ー


 主戦場となった平原では巨大な穴が空き、川から流れ込んだ水が湖を形成しつつあった。


 森の東側ではスズの魔導師隊とゾゾの弓隊がレクサスと激突した為、木々は薙ぎ倒され森の一部が焼失し地面が隆起して新たな崖を形成している。


 東側の離れた位置で別働隊であるリンとミドラスが激突した戦場では、約2kmにも及ぶ巨大な地割れが形成されて通行が困難な場所となった。


 そして今この時に限っては、何より異様なのが平原の中央に立ち昇る成層圏まで上昇した真紅の渦である。


 それはユウキが作り出した物で、戦場で全ての哀しみの戦士達を癒すように優しくゆっくりと哀愁を吹かせていた。



 この驚異的な惨事を引き起こしたゴブリンとリザードマンによる獣人同士が激突した歴史上初の戦争は、多数の犠牲者を生みここに終焉を迎えた。



 ユウキは全軍が落ち着いたのを確認すると、ゆっくりと地上へと舞い降りていきリンを降した。


「ユウキ様・・信じていました・・」



 ユウキはそれに頷くと、レクサスとノーデストへと向き直った。


「ありがとう、納得出来るか分からないけど説明するから場所を変えよう。」



 レクサスはそれに応えた。


「うむ、だが本当に・・お主は何者なのだ?」


「派手にやってくれたな!」


 そこでグライスが到着した。それを見たレクサスとノーデストは目を見開いた。


 若干バツの悪そうな顔になるが、そこは一介の将で直ぐに表情が真剣になった。


「グライス・・それにオークはグロッサムか。」



 グライスはレクサスを無視して辺りを見回すと、大勢の戦死者が目に入りこめかみに青筋が浮かぶ。


「ぐぅ・・ユウキよ、今は我慢の時だな?」



 ユウキは真剣な表情でそれに応えた。


「うん、ここでグライスがリザードマンに暴れたらまた振り出し。」



 そんな事は分かっている。


 分かっているが同胞を、家族を殺された事には変わりない。そんな状況でグライスは極限まで踏ん張っていた。


 それを察してユウキは右手を前に突き出すと、魔力を放出して真紅のヴェールがユウキを覆い雷光が瞬いた。


 そしてグライスに笑みを向けると一言。



「らしくないな、我慢するなよ。」



 グライスはユウキの一言に全てが吹っ切れた。


「ガアァァァァァァァァ!!」


 グライスから魔力の奔流が吹き荒れ、身体からは青色の蒸気が吹き出している。


 ユウキはかつてここまでの魔力を目にした事は一度もなかった。


 グライスから溢れ出す魔力が大量に吸収されていき、筋肉が隆起していく。


 彼が極限の状況にあり弛まぬ鍛錬によって身につけた技。《ストロング・極》



 リンも使用していたが元々の魔力量が比ではないため、全く別物と言っていいほどである。


 リンの場合は別の方向に向いて《デスゲイル》を発現したが、彼の場合はこれ一つで下手な固有血技を凌駕して力で捻じ伏せる。



 ズドォォォォン!!


 グライスは地面を殴りつけると巨大な岩を抉り出した。ユウキに向かってそれを投擲した。



 ユウキは岩に向かって加速すると突然岩が砕けた。グライスが投げた岩を殴り壊したのだ。


 ユウキは手に風を纏うと、両手を左右に突き出して風圧で破砕された岩を吹き飛ばした。


 ドス!


 すると、ガラ空きになった胴体にグライスの豪腕がめり込む。そのまま回し蹴りをユウキに見舞い吹き飛ばされた。


 ガン!!


 凄まじい勢いで飛ばされたユウキは、スズが作った巨大な岩にぶつかり円形状に亀裂が入る。

 間髪入れずにグライスが岩に突っ込み、ユウキを力の限り殴り続けた。


 次第に亀裂が大きくなると10mはある岩がけたたましい音と共に崩れ去った。



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