王への謁見(2)
少し引っかかる事があったが、アリサは今のやり取りとレナードの声に落ち着きを取り戻した。
「失礼しました。サウスホープは今から6年前にグライス率いるゴブリン達と闘争になりました。」
それは初耳だったようで皆一様に目を見開いた。
「その時に当時8歳のとある少年が戦い、激闘の末グライスと和解しました。ここからサウスホープとゴブリンは共存の道を開く事になります。」
共存の道は商業ギルドで聞いていた。だが1人の少年がネームドを降したという部分は聞いていない。
「その少年が今リザードマンとゴブリンの闘争に参戦したユウキ・ブレイクです。」
「なるほど、サウスホープの近年の発展はここにあったと言うことか。
では、ユウキ・ブレイクは何をしに行ったのだ?リザードマンを倒すためか?」
「ゴブリンを守るためです。王様はサウスホープの方から上がる真紅の渦を見ましたか?」
王は暫く考えた。
渦のことは執務室から窓辺に確認しており、優しく包み込む様な感情を蜂起させた。つまり殲滅に使用したとは考え難い。
「見たぞ。あれはリザードマンを殲滅した技か?それにしては・・」
アリサは首を横に振ると、まだ伝えていない情報を言った。
「首飾りでユウキから終戦和解と来ました。」
ガタッと音を立てて王が立ち上がった。そこには驚愕の表情が現れていた。
「獣人と和解じゃと!?帝国があれほど躍起になっていたリザードマンと!」
鼻息を荒くして興奮した王は、顔に手を当てて椅子に着くと少し独り言を呟きアリサに目を向けた。
「ーして、今の状況は?」
アリサは再度首を横に振った。
「分かりません。ユウキが来れば直ぐに分かると思いますが・・」
王は直ぐに決断した。この機に乗じて何かしらのアクションを起こさないと転機を失する事になる。そんな予感がした。
「ガルドは可能な限り情報を集めよ。
バルトフェルドは騎士団を使いサウスホープの状況を確認せよ。
オーギスは冒険者が単独で事を起こさないように情報統制を図れ。」
「「「ハッ!直ちに!」」」
アリサとレナードとルインは少し心配そうな顔をした。
それを見て王は顔を綻ばせると告げた。
「ただし獣人には手を出すな、騎士団は最小限だ。ユウキ・ブレイクと会話できる物を貸してくれんか?」
アリサは首飾りを外すと、近衛兵長のジーザスがそれを受け取った。そして王に手渡される。
その間、命を受けた3人は謁見の間を後にする。
「ふむ綺麗でセンスが良いの。どれ・・」
王は首飾りの魔力に合わせて目を瞑った。
そこで成される会話は分からない。30分程だろうか念話を終えると、王がアリサの首飾りをジーザスに渡してアリサに返された。
「若き者よ堅くしなくとも良い。あの3人の手前もあったのでな。」
そこでアリサ達は少し安心した。ジーザスに何かを指示して王は立ち上がり告げる。
「ユウキ達は明日ここに来る。お主らは今日客人としてここに泊まってもらうが良いな?」
それを聞いて3人は焦った。ここに泊まるという事は寮に戻れない。
「あの・・この場で恐縮ですが寮の方には・・」
「安心せよ。寮へは通知を出しておこう。」
少し場違いな緊張が逸れると、3人はホッとして謁見の間を後にした。




