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王への謁見(1)

 アリサ、レナード、ルイン、バルトフェルド、ガルド、オーギスの6人は謁見の間に向かっていた。


 途中で衛兵や使用人に行き違うが、皆一様として道を開けて跪く。


 彼らの権威が象徴された瞬間であった。


 アリサはどこか場違いな感じがしてむず痒い気分になってきたが、レナードは実家で慣れているのか余り気にした様子は見られない。



 アリサがそんなことを考えていると、大きな扉の前で一同が立ち止まった。


 荘厳な扉にはいたるところに金の装飾が施され、大きな獅子の飾りが扉の中央に凛として来訪者を威圧した。


 そしてバルトフェルドが学生3人に向き直ると告げた。


「お前達は勝手に口を開かないでくれ。俺達が事情を説明するが不足する部分は問われた時にだけ返事をしろ。」


 そう、王とはそういうものだ。


 正規に謁見が許された者でもなければ、事が大きいため無礼を働くのは良い方向には行かないことが明白だった。



 バルトフェルドが扉の前に立つ二人の衛兵に向かうと、軍令をして声を張り上げた。


「王都騎士団団長バルトフェルド・ガークスにある。此度はサウスホープの件にて王への謁見にはせ参じた。」



 そしてバルトフェルドは騎士剣を右手で持ち衛兵に見せた。


 衛兵は騎士剣を確認すると二人頷き、軍令を返すと張りのある声で応えた。


「お付き人は武器類を全てこちらの部屋に預け暫し待たれよ。団長殿の武装はそのままで構いません。」



 5人は武器となる物を全て部屋にいる使用人に預けると、束の間の安息に身を委ねた。


「やはり堅苦しいな。この座についても慣れないものだ。」


 それにレナードは「ふふっ」と笑った。


「お前さんならよく分かるだろう。だが必要な物でもあるし王も大変だとは思うがな。」



 こうして雑談しながら20分ほど待った頃、衛兵が部屋にやってきて謁見の許可が得られたと告げた。


 再び扉の前にくると、衛兵は獅子の口に付けられたドアノッカーを握り三度音を鳴らした。


 コンコンコン



 金属と木材が当たる小気味良い音が静かな空間を支配する。


 そして扉は内側から開かれた。



 中に入るとアリサはその光景に圧倒された。


 長方形の部屋は100mほどの奥行があり、近衛兵が両サイドの壁に直立不動で待機している。


 レッドカーペットは幅20mほどで玉座にまで続いていて、玉座は段差があり2mほど高いところにあった。


 だが玉座に王はいない。



 特に気にした様子もなくバルトフェルド達が進み始めたためそれに付いていく。そして段差から5m程手前で停止すると、跪いて王が来るのを待った。


 まず最初に来たのが近衛兵である。玉座を中心にW型になるように配置され、玉座の横に1人の男が立った。



 近衛兵長ジーザス・ドール。


 その名の通り、歳は離れているがレナードの兄でありドール家の次男だ。彼は四十近くで近衛兵長まで上り詰めた生粋の実力主義者でもある。


 だがここは謁見の間。兄弟の会話など一切なく顔を見ることもなかった。



 最後に王冠をつけてマントを羽織った男がやってきて玉座に着いた。


 五十代前半で、白髪混じりの髪を後ろで縛って腰まで伸ばしていた。髭も逞しく胸まで伸びている。



 ダルメシア王国現国王、ダルメシア3世その人である。



「警護ご苦労、バルトフェルドよ。」


 声には張りがあり声だけで圧倒する何かがあった。


「恐縮至極。民が平穏なのも王の御厚情によるものです。」


 それを聞いて満足そうにすると、真剣な顔つきでバルトフェルドに告げた。


「サウスホープの件と聞いたが獣人同士の抗争のことか?それにガルドとオーギスまで居るが、お前ら参戦するつもりか?」



 商業ギルドでの会話は流れていたはず。知ってて戯言を言っているのだ。


「此度の戦争に裏を感じます。話は先ほどの通りで、ここに居る3名の学生が詳しく知っているようです。」


「ほう?其方達は1人違うが特待生じゃな。して、何を知る?」


 王が鋭い眼光を3人に向けた。萎縮してしまいそうな状況でアリサが声を出した。



「サウスホープ出身のアリサです。この度は貴重なおじかー」


「口上は良い。早く内容を話せ。」


 アリサは目をキョロキョロさせた口が動いている。動揺を感じてヤバイと思いレナードが口を開いた。


「僭越ながら私、レナード・ドールが御説明致します。サウスホープはー」


「そこの娘が話すと申したのぞ?」


 完全に主導権を握っている。これが政治の世界で場数を踏んだ一国の王である。


『アリサ落ち着いて。』



 レナードは首飾りから念話を飛ばした瞬間、ジーザスの手が刀に添えられた。


「貴様ら念話をしただろう?」


 しかし、それを王が遮った。


「良い、大体想像がつく。だがここで無礼を働くな。」





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