少女の向かう先
初めて森に入ってから数日が経過した。
あれから順調に狩りと鍛錬を行い、確実に地力をつけて行った。
そんなある日の朝、元気な声とともに玄関がノックされた。
「おはようございます!アリサです!」
栗毛ポニーテールの幼馴染だ。
あの岩の事件の後から半年、あまり遊んでいない。
鍛錬が忙しかったのもあるが、アリサも忙しそうであった。
「アリサ!おはよう!」
「あらアリサちゃん、おはよう。」
「おはようアリサちゃん、そろそろだと思ったよ。」
それぞれが挨拶を返す。その中でボストンだけが悟っていた。
「はい!鍛錬を積むことを両親が許してくれました!半年間、勉強と家事をずっとやり続けて・・」
それを聞いてボストンは頷いた。
「よく頑張ったな。しかし俺で良いのかい?
中級魔術程度しか使えないぞ。」
アリサはさも当然とばかりに答える。
「この村で中級魔法の扱いはボストンさんが一番上手ですし、魔法は反復が大事です!」
それを聞いてボストンは苦笑いした。
(独学だとしたら天才か。そう言えば以前ウォーターボールが弾けて虹を作ったな。)
世間で言う上位魔法を行使する膨大な魔力量も大事だ。だが、アリサが言う反復で慣れればが、少ない魔力で効率的に運用できる。
これは学園ではあまり重要視されていない。
前線で魔物や獣人と戦い続ける冒険者の知恵であって、師を仰がなければ通常考えたりもしない。
「分かった。だがユウキとは方向性が異なる。
アリサちゃんの魔法鍛錬の間、ユウキは自己鍛錬をしてくれ。」
それを聞いてユウキは和やかに答えた。
「もちろん!だけど僕もたまに聞いて良いかな?」
ボストンは訝しんだ。
「見たり聞いたりしても恐らく使えないぞ?」
「うん、分かってる。だけどアリサと戦う時にアリサを知らないと上手く出来ない気がするんだ。」
天才はもう1人いた。
ボストンはユウキの単騎能力の高さに、連携は追々実戦で積ませるつもりだった。
だが、パートナーの魔法を知る方がもちろん良い。
「それじゃ、今日は庭でアリサと魔法の鍛錬を積んでくれ。俺は今日から少し家を離れる用事があるんだ。」
そう言うボストンはここ最近家を空けることがあった。
2人は笑顔で「分かった!」と答えた。