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この世界のエゴ

 リンが倒れたのはダメージもあるが、魔力切れが主な原因だ。


 ユウキはそれを見て一先ず安心すると、リザードマンが殺気立っている事に気がついた。



「あ、ごめん、もう帰ってもらっていい?」



「我々にもはや戦意はなく、この戦いには参戦しかねる。

 それより人族が一人でノコノコと何用だ!殺されても文句はあるまい!!」



 それを聞いてユウキはニコリとすると魔力を解放して真紅の瞳となった。



「お前らが攻めた戦いだろう。納得いくまでそっちにいろ!俺はゴブリンの友だ!」




 至極最もな意見であった。


 だがリザードマンは帝国と仲が悪く人族に良いイメージがない。瞳に威圧を受けながらも引き下がらない。


「人族が信用できるか!目が合えば殺気立って来て口で言うても分からんだろうに!」



 またここでもこの話か。こいつらは両方が円卓に着く気がないだけだろうに。



 ユウキは頭に来て地面を思いっきり蹴り付けた。


 ズガァァァァン!!



 リンが作った亀裂をが更に伸びて直径1kmになった。更に亀裂からは真紅の魔力が溢れ出している。



「円卓に着く前から殺し合いをしてればそうなる!何故俺たちのようにやれないんだ!!」



 リンより更に強烈な一撃を目の前に茫然としてしまった。



「なっ何を・・俺たちのように?」


「俺の友はお前らが攻めているゴブリンの長、グライスだ。」


 それを聞いてリザードマン達は驚きを隠せない。それもそのはずで、従来より獣人と人族が和解したことなど聞いたこともない。



「何故攻め入った?」



「我等の本拠地にゴブリンの矢が射られたことが発端だ。殺らなければ殺られる、そう言った状況であると聞いている。」



 ユウキはダンゾウの部下に一瞥すると、直ぐ様ダンゾウの元へと向かった。



「分かった。戦う気がないのであれば戦場から離れておくんだ。この戦争は無意味だ。」



 それだけ言うと、リンの部下に向き直り右手を上げ宣言した。


「リンの勝利だ!リン隊は拠点へ戻れ!」



「「オオオオオオオォォ!!」」




 リザードマンはリン隊の士気の高さと、ゴブリンが人族の青年に何の違和感もなく言葉を受け取った事に驚愕した。


 それだけ彼はゴブリンに慕われ、彼もゴブリンを信用しているのだと分かった。



 するとその時、森の方から爆音と共に土塊が隆起しているのが見えた。



「なっ!あの方角は!リンを頼む。俺は先に行く!」


「はっ!」


 応答するとユウキはリンを預けて森の方へと飛翔して行った。リン隊もあとから続いて増援に向かった。






 後に残されたリザードマン達は静かに森へと入り、残存部隊の食料探しや夜営の準備を開始する事にした。


 そこで周囲の散策部隊がある物を発見した。


「向こうに大量の袋を見つけた。今運搬しているが中身はまだ不明だ。」



 そうして暫くすると、大凡20袋の麻袋を抱えて兵士がやって来た。



「・・危険な物かもしれない。慎重に確認しよう。」



 中を確認したリザードマンが驚愕の表情を露わにした。


 そこにはサウスホープ産小麦で作ったパンや水、森のいちごジャムが入っていた。



「これは・・美味い・・・あいつらがこれを置いていったのか?俺たちは一体何と戦っているのだ・・」



 リザードマン達は自分たちの過ちに気が付き、食糧の美味さとゴブリンへの感謝、そして虚しさで涙を流した。


 これがまだ他の部隊に知られることはなかった。





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