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遊撃隊隊長リン

 夜明け、それは日が昇り一日が始まる合図である。しかし今回に限っては違った。


 ボブは密林の隙間から穿つ日の光に、静かに想いを滾らせていた。




 リンもまた同様であった。


 隠れるように密林の隙間から東を望む。


「敵のリザードマンが過ぎた後に奇襲を仕掛ける。布告は済んだから一気に行くよ。」



 それを聞いた部下たちは、リンの意向を奥へと知らせていく。

 情報伝達手段が乏しいのはなんとも歯がゆいものである。



 刻一刻とリザードマンの増援部隊が近づいてくる。時刻は昼過ぎに差し掛かろうとしていた時であった。



 彼らは・・気が付かない。僅か500mほど先を行軍している。その中央には一際大きい個体が確認された。



「む?何が視線を感じぬか?」



 一体のリザードマンが不穏な気配に感づいた。ボブリザードのノーデストだ。


 歴戦の貫禄を伴う初老の彼は、何か殺気のような視線を感じ取っていたが、他の者は気が付かない。



「左様でしょうか。私には感じませんでしたが。」


 部下がそれに応えるが、ノーデストは難しい表情を崩さない。そして判断した。



「いや、ミドラス!隊を分けるぞ。ワシはレクサスの元に向かう。お前はここに残れ!」


 ミドラスと呼ばれた女性のリザードマンが跪く。



「仰せの通りに。」



 それだけ聞くと部隊を二つに分断した。ノーデストはレクサス隊と合流しに、ミドラスはこの場所に待機した。



 それを見ていたリンが怪訝な表情をした。


「何?バレた?」



 距離があり会話までは聞き取れなかった。しかしリンは気が付かれても戦力分散するなら、それで良しと判断した。


 そしてミドラスが森の方を振り向いた。


「さすがノーデスト様ね。さぁ!そこのゴミ共を処分して早急に合流する!」



 ミドラスの号令はリンまで届いた。リンは立ち上がると急襲を告げた。



「全軍!蜥蜴を踏み潰せ!!」



 オオオオオオオォォ!!!



 森からリン隊が飛び出し、ミドラス隊と激突した。


 リンは開幕から飛ばして行った。一気に疾走するとリザードマンの一体を殴り飛ばした。


 ズドォォォォン!!



 ユウキが得意としていた《ファストブロー》に風の補助をつけて改良したものだ。


 吹き飛ばされたリザードマンが後方に吹き飛び、部隊を直線状になぎ倒す。



 それを見たリザードマンの戦士たちは止まってしまった。



 そしてリンは自分の周りに風を纏い砂利を巻き上げながら右手を突き出した。


 そして五指を小指から緩やかに握りしめると、妖艶漂うように宣告した。




「遊撃隊隊長リンよ。痛いのが好きな奴からこっちにおいで・・」




 《真・ストロング》を発動させた。彼女はグライスに教えを乞いマスターしていた。



 迸る魔力の奔流にリザードマンの戦士達は恐怖した。半ば恐慌に近い状態にある者もいる。


 それくらいストロングは相手を威圧する魔力を出す強力な技だ。



「な・・なんのこれしきで!」



 一体のリザードマンがリンに向けて槍を持ち特攻を仕掛けた。それに続くように皆走り出した。


「数で押せぇぇ!!」



 パパパンッ!!


 乾いた音と共に一陣の風が周囲を穿ち、リザードマンが宙を舞った。リンが高速で掌底を放ち上空へ吹き飛ばしていたのだ。



「えっ?あれ?」


 残されたリザードマンから変な声が出た。



 ツインテールで小柄なリンがニヤリと笑うと、残ったリザードマンの頭を鷲掴みにして振り回した。


 遠心力で残るリザードマンを一掃し、最後は後方に投げ飛ばしてリザードマンの部隊を薙ぎ倒す。




 そして跳躍すると部隊のど真ん中にいた、敵の頭を掴んで地面に叩きつけた。


 ズドォォォォン!!



 地面にクレーターが出来上がり、リンは静かにリザードマンの頭を持ったまま起き上がった。



「所詮は蜥蜴ね。」




 それを見ていたミドラスは不快に思った。リザードマンは基本的にプライドが高い。


 それは強ければ強いほど顕著になる。



「小娘が調子にのるな!!」


 頭に来たミドラスは疾走すると、周りのゴブリンを蹴散らしながらリンに疾走した。



 そして二つの強大な力が激突する。


 ガキン!!



 ミドラスの槍がリンに止められられる。


 リンは槍を引き寄せると全力でミドラスを殴り飛ばした。


「家に帰ってなさい!」


 バァァァァァン!


 凄まじい轟音と共にミドラスが吹き飛び、リンは殴った姿勢のままその場に立ち尽くしていた。



 敵味方問わず周りが唖然とする中、異変が生じた。




 リンが口から血を吹き出した。


「がはっ・・何よこれ・・・」



 リンはそのまま片膝をついてしまった。




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