表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/269

点と点

 ーゴブリン司令室ー


 グライスの建屋でダンゾウは情報を整理していた。今ある情報は余りに少ない。


 敵の大将はレクサス、部隊は先の戦いで2万の兵が残っていればいい所で、本人の能力や強さは不明。

 増援はノーデスト率いる部隊、凡そ1万。多くは無いが精鋭だと思われる。


 こちらはボブ隊2万、ゾゾ隊1万5千、リン隊2万、スズ隊5千の総勢6万。



 数では優位で守備力も高い。


 しかし初陣は雑兵が多かったと言うのが本音である。ソリッドフィールドも完全では無い。



「増援の1万が精鋭だとしても少ないな。別働が居るか?王都の動きも気になる・・漁夫の利を突かれたら厳しい。」


 作戦室に居るダンゾウの声だけが響く。増援隊とリン隊が接触するのは時間の問題だ。


 もうじき夜明けが訪れる。リン隊に援軍を投げかけても良いが、別働がいた場合は本陣が丸裸になる。



 そこへボブがやってきた。


「難しい顔をしているな。」


「あぁ、難しい局面だ。主らはこのまま森の防衛に当たってくれ。リンを信じよう。」



 ボブは頷きダンゾウを安心させるように応えた。


「俺が出れば集落に被害は出まい。リンが来るまで持ちこたえてみせるさ。」


 それだけ言うと、ボブは交代で寝ている自分の部隊を起こしに向かった。


 1人残ったダンゾウは不敵に笑う。


「我輩の心配しすぎか。」



 こうして夜明け前までにゴブリンは部隊を再度集結させた。


 彼らは1人1人が思っていた。今までの生活を守りたいと。それくらいにゴブリンとサウスホープは親密な関係になっていたのだ。




 ーリザードマン本陣ー


 レクサスは丘から森の方を眺めていた。


「なぜ、人を背に向けて戦えるのだ?

 なぜ、人の村の近くであれ程の集落を争いもなく暮らしていけたのだ?

 なぜ、あれ程の個体を維持する食料を確保できた?」



 レクサスの疑問の嵐は尽きない。


 交流を持たない獣人は基本的に人族に対して個体数で負ける。故に今まで幾度となく人に領地を追われていたのだ。



「この矢の意味は何だ?戦友は無駄死にだったのか・・?

 いや、平穏を先に崩したのは奴らだ。これは間違いない。」


 だが引っ掛かっていた。何故かゴブリンが正しく、自分たちが間違っている。そんなような気にさせられるのだ。



 レクサスは拳を握りしめた。


「あいつは家族思いだった。あいつは部下を顧みない事もあったが、普段は出来の悪い部下を陰ながら支援していた。」


 他にも沢山の戦死者がいる。


 レクサスはもう引けなくなっていた。リザードマンの平穏が脅かされるのであれば先に矛を取るしかなかった。



「シャァァァァァァァ!!居るのだろう、密偵!

 次は決戦だ。人族に手を出さんから全力でかかって来いと伝えよ!!」


 ガサッ


 音のした方を振り向きもせず、レクサスは東の魔力の渦を一瞥すると天幕へ戻っていった。



 リザードマンもリザードマンで、このままではいつ本拠地が攻められるか気が気でなかった。


 上層部の老人どもは気にしていなかったが、若いリザードマンが心配していたのだ。


 それを汲み取る。彼はそう言った漢であった。




 ー王都騎士団団長執務室ー


「バルトフェルド団長、耳に入れたい事が。」


 そう言う彼女は副団長のメアリー・カイサルである。実力とカリスマ性でここまで上り詰めた生粋の軍人である。


「珍しいな、どうした?」


 彼女は軍令を崩さず報告する。


「南のサウスホープ周辺で獣人同士の争いがあったと報告が上がりました。」



 それを聞いてバルトフェルドは眉をしかめた。


「獣人同士の?珍しいな。と言うか初めてじゃないか?」


 それにメアリーが同意する。そして団長の意向を確認しに来たのだ。


「俺たちの出る幕じゃないな。だがサウスホープの住民はどうしている?何処から情報が上がった?」



 それに回りを確認するとメアリーは告げた。


「匿名の手紙で不明ですが、恐らくあのギルドかと。ドクロに切られた鎖が巻かれたマークがありました。

 サウスホープは今の所情報がありませんし、村からの受け入れ要請も・・」


「ふむ、あの村は大丈夫な気もするが、俺の方で対応する。騎士団は王都の警護を普段より厳重にしてくれ。」


 メアリーは跪き一声挨拶するとその場を去った。



「何が起きている?サウスホープか・・そっちが気にかかるな。」


 一抹の不安を胸に、バルトフェルドは今後の対策を練るのであった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ