リザードマンの将
ーサウスホープ稜丘ー
リザードマンの将軍レクサスは、ゴブリンが潜む森林を一望していた。
「鬼どもめ、よくもぬけぬけとこんな所に要塞を築いたな。」
その呟きに部下が同意する。
「全くですな。あの襲撃は謎が残りますが証拠もありますし、義は我らにあります。」
包みを開けると、そこには折れた矢が3本が大事に保存されていた。
「ふん、我等の領土付近に来たと思ったら、また勝手に移動しおってからに。」
リザードマンは本来東の帝国領にある丘を拠点としている。
グライス達は戦争で帝国領に撤退した後、この森林に来た。その時のことを言っているのだ。
「同胞のジジイ共は人族の謀略だと言っていたが、動かぬ証拠があるではないか。」
「斥候の報告ではグライスが不在のようです。叩くなら絶好の機会ですな。」
そこで報告が入った。
「失礼します。斥候がゴブリンの調査隊とぶつかった様です。その際調査隊を取り逃がしたと。」
それを聞いでレクサスは激怒する。
「何をしているか!斥候が見つかるとは!」
「将軍、明日には攻めた方が良さそうですね。準備を進めます。」
そう言ってホブリザードはその場を後にした。
「相手の戦力はわかったのだろうな?」
「ハッ!凡そ6万が良いところかと、ただ新兵が多いようです。」
それを聞いでニヤリと笑った。
リザードマンは帝国兵と小競り合いを繰り返してきた。
基本的にリザードマンの領土に踏み入った人族と戦いになるのだが、行き過ぎると冒険者ギルドから派遣された討伐隊が結成される。
つまり、サウスホープと協定を結んだゴブリンとリザードマンでは、実戦経験が段違いなのだ。
ただここでリザードマンは勘違いしていた。
・ゴブリンが人族の知見を得ていること。
・グライスが不在でもネームドが五体いること。
・人族の青年が裏で戦力強化の方向を示したこと。
この3点はいくら斥候を放っても得られる情報ではない。故に彼等は知らないし、自分達の力を完全に信じている。
「全軍に通達、朝日が昇る頃森へ進軍する!」
こうして双方開戦の準備に奔走した。