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サウスホープ森林の異変

 ーサウスホープ森林ー


 時を遡ること数日前。


 サウスホープ森林の東側に川が流れており、ゴブリン達はそこで水や食料の供給を行っていた。



 ザバッ!


 桶に水を汲み、魚を採るゴブリン達。



 ガサガサ


「ガッ?何か音がしなかったか?」



 ゴブリンは音の方を振り向き確認するが何も見当たらない。


「ラピッドだろう、早くしないとボブ様に怒られるぞ。」



 彼等は気にすることなく、自分の仕事をこなして集落に戻った。




 この時もう少し調べていれば分かったかもしれない。


 リザードマンの斥候が隠密行動をしていた事に。



 集落に戻ったゴブリンは特に報告することもなく、日々の業務を遂行していった。





 事が起きたのはそれから数日後。


 集落防衛部隊のボブ隊に異変があった。周辺警護の巡回に行った者達が戻らなかったのだ。



「おかしい。我等の部隊は時間を厳しく律してきた。おい、ダンゾウに使いを出してくれ。周辺に不穏な空気ありと伝えろ。」



 するとそれは直ぐにダンゾウに伝えられた。


「確かに妙だ。隠密部隊から偵察を周囲に派遣する。

 それとリン、スズ、ゾゾにもこの事の連絡を頼む。」




 こうしてゴブリン集落の5体に異変が知らされることになる。



 だが事の大きさを見誤っていた。長のグライスが不在の状況でもっと迅速に対応すべきだった。


 しかし、ここ十数年は争いもなかったから仕方のない事なのかもしれない。






 翌日、朝日が昇り始めた頃にダンゾウの建屋が騒がしくなった。


「報告!リザードマンと思われし個体を確認!数は5体ほどですが交戦となりました。」




「なに?交戦しただと?戻ったのはお前だけか・・」



 すると音もなく四体の影が現れた。


「お前らは直ぐにリン、スズ、ゾゾに通達し、緊急族長会議を長の建屋で行うと伝えろ。

 我輩はボブと打合せをしてから向かう。」



「「「ハッ!」」」


 出現した時と同様、音もなく消えていった。


 そして残った一体に指示を出す。


「貴様には聖都領に行きオークの所にいる長に会え。迅速だが貴様が道中で倒れたら連絡がつかん。

 命令だ、蜥蜴どもを欺き死なずに行け。」


 すると何も言わずに姿を消した。



 ダンゾウは部屋にいた人物に呟いた。


「人手が足らん。ユウキ様にこの手紙を渡せ。

 人に決して看破されるな、お前はその為の訓練を一年続けてきた。」



「分かりました。私にお任せください。」


 彼だけは歩いて外に出ていった。人に溶け込む事を訓練した者だ。


 だが建屋の外に出ると、魔力を最小限に疾走していった。



 そしてダンゾウもボブの元へと急いだ。





 ボブは防衛部隊に装備と防衛設備の点検をさせていた。


 そこにダンゾウが付くと事の次第を告げた。


「ボブ、リザードマンが現れた。斥候と戦闘になり2名が戻らない。」


「分かった。防衛部隊の配置などを打合せたい。」



 ダンゾウは頷き、ボブも来るように促した。


「既に族長には伝えている。長の建屋で会議だ。」



 ボブは2、3部隊に指示を出すと、その場を後にした。





 ーグライス建屋ー


 ボブとダンゾウが着くと、既にほかの族長は集まっていた。



「何かあったの?」


 魔導師のスズが聞いてくる。



「リザードマンが侵攻してきた。会議をする。」


 ダンゾウは簡潔明瞭に答えた。



 皆が座ると、ダンゾウはここまでの経緯を説明した。


「ボブから異変の報告があって斥候を出したが、戦闘となった。長とユウキ様に連絡を出した。」



 そこでボブが反応した。


「何?ユウキ様にも出したのか?」


 そこで建屋にダンゾウの部下がやってきて跪いて、報告した。昨日出した斥候の一体だ。


「族長様、リザードマンの戦力が分かりました。

 その数約3万で森林の外の丘に陣営を築き、ホブクラスも見受けられます。」



 皆が立ち上がった。驚愕の表情向けている。


「3万だと!リザードマンは戦争をする気か!」



 ダンゾウは即座に部下に指示を出した。


「サウスホープに急ぎ人の長に伝えよ。現状を伝え避難を促せ。」



「ハッ!」



 皆一先ず黙り考えた。


「ユウキ様来てくれるかな・・」



 実は皆願っていた。だが考えてはいけない事だとも認識していた。



「リン、我々だけでやるのだ。ユウキ様はユウキ様の立場がある。」


 諭すようにボブは言った。



「まずは現状の戦力を把握しよう。我輩の隠密部隊は少なく、300はいるが当てになるのは5体程だ。」



 続いてボブが答える。


「守備隊は新兵を含めて2万だ。」



 次にスズ。


「アタイの魔導師部隊は5千よ。ただ戦術クラスを使えるのは一握りだわ。」


 次にゾゾ。


「オイラの弓兵は1万5千。人と協力して開発した弩があるから戦力になるよ。」


 次にリン。


「あたしの前衛は遊撃隊として2万。新兵は不安だわ。」



 ダンゾウが取りまとめた。


「総数6万の兵をどう使うかだな。敵部隊は森林の外だが、主戦場をどこに持ち込むか・・」



「敵は斥候がやられて気がついているはずだ。オレの部隊が平原に展開する。

 その後はーー」



 大凡戦略が決まり、各自持ち場に戻り戦争の準備を開始した。


 予想では明日に進軍が開始されると思われた。


 その前にゴブリンは部隊を展開させて森への侵入を阻む事にした。



 理由は単純で森に部隊が入ると、漏らした敵が集落に急襲する可能性があるからだ。



 作戦司令は情報収集に優れるダンゾウとなる。





 その日の晩は森と丘から灯りが消えることはなかった。





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