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謎の露店商

 ユウキは人が滅多に来ない雑木林で、風を纏い1つ1つの動きを丁寧に動かしていた。


 一通り終えると、魔力を更に引き上げた。


「はぁ!」



 真紅のヴェールがユウキを包み込む。


(この先に、教会での力がある・・)



 慎重に少しずつ放出する魔力量を引き上げていく。だが本質は近づいてこない。


(何が違うんだ。俺の魔力はどうなっているんだ。)



 そこで以前ホブゴブリンのグライスが暴走した時のことを思い出した。


 そして今まで発動した先の力はどんな時に出たか。



 大事な人が死にそうになって護ろうとした黒龍戦、陥れられて憎しみにかられた闇ギルド戦。



 怒り?憎しみ?確かに間違ってはいない。


 だが違う。あれはただ暴走するだけで本質は違うところにある。


 ユウキは幼少期に身体の限界から無意識にリミットをかけて魔力が引き出せなかった。


「もしかして・・」



 ユウキは《点穴》を行使して自分の魔力を凝視した。ただ静かに魔力の流れを読み解く。



 そして点穴が魔力の発生源に違う所を捉えた。


「これだ!」



 一気に魔力を解放した。



 瞳が真紅に輝き瞳孔は縦に広がる。そしてヴェールには真紅の雷光が瞬いていた。


 バチバチ、ピリピリ。


「これは・・俺は・・何で魔力を創造する場所が二ヶ所あるんだ?」



 ユウキはその状態で風を纏ってみた。


 すると今までとは比較にならない程、圧縮させた空気が自分を包み込むのを感じた。



 試しに腰を落として目の前の木を殴りつけてみた。


 グシャ!バキバキバキ!!




 ユウキは魔力の放出を抑えると、瞳が元に戻る。


「うん、これはマズイ。」



 ユウキが殴った先には放射状に木々がなぎ倒されて粉々になっていた。



「怒られるかな〜」




 ユウキは半ば見当違いな所に困りながら、寮に戻って行った。


 ユウキが部屋に戻ると、レナードは机に向かって魔力を剣に付与する点について考察を考えていた。



 ユウキも邪魔しないように静かに机に向かうと、魔力源についてメモを取り始めた。


 アレコレと考えながら時間を過ごしていると、暫くして部屋の扉がノックされる音が響き渡った。



「誰だろう、珍しいね。」


 それにレナードが反応して言うと扉を開けた。寮長のルイーゼだった。



「ユウキ君に来客が来ています。」


 2人は?が頭に浮かんだが、ルイーゼに着いて行くと玄関のホールに1人の男が居た。


 商業ギルド長のガルドだ。



「あれ、珍しいですね。ガルドさんから来て頂いて恐縮です。」


「何、ちょっと話があってな。街まで行こうか。」



 そのままガルドと一緒に城下町に繰り出した。行き先は宿屋ポークバーグだ。




 街は賑やかで先日のイザコザなど梅雨知らず暮らしている人が大概である。街の平和は沢山の人の手によって守られているのだ。



 そしてポークバーグに着くとミサがやってきた。


「いらっしゃいませ!今日もお食事ですか?」


 するとガルドが「いや、一部屋頼む。」と告げると、部屋まで案内してくれた。



「さてユウキ君、まずはサウスホープの件だ。畑の拡張に成功して産出量と満足度が領内一に輝いたぞ。」


 それを聞いてユウキは心底嬉しくなった。


「皆頑張ったんですね。俺はキッカケを与えたに過ぎません。」



 ガルドは優しく微笑むと、それも大事な事だと述べた。


「まぁ、拡張スピードと収穫方法に謎が残るが、めでたい事には変わりない。

 もう一つあってな、君に来客が来ているのだ。ギルドに突然来て名指しで君を探し回っていたので、一応耳に入れておこうと思ってな。」



 ユウキは考えたが、思い当たる節がない。


「うーん、俺を知っているならサウスホープの人間だと思うのですが、その人はギルドに?」


「いや、この街で露店商をやるようでな。ギルドにはその許諾で来ていたのだが、その際に聞いて回っていた。」



 露店商?尚更分からない。知っているのはこの首飾りを売った商人だけだ。



「分かりました。少し街をブラついてみますけど、特徴は分かりますか?」


「低身長の男で子供のような大きさだから見れば直ぐに分かる。」



 ユウキは頷くと、ガルドとの話し合いは終わった。


 帰りがけに女将に出会った。するとガルドが急に姿勢を正して挨拶をした。


 何だ?営業トークか?でもそれならギルド長が挨拶されるよな・・・やはりこの女将は謎だ。






 こうして露店広場でガルドとは別れた。そして先程の男を探していると、首飾りを購入した露店を見つけた。


 ザッと覗いてみると、同じような水色の勾玉が付いた首飾りを見つける。


(こいつはもしや・・)



「すみません、この首飾りを貰えますか?」


「はいどうも、1金になるよ。」


「ん?前は2銀だったのに何故?」



 それを聞いて露店商が以前に首飾りを買った人だと気がついた。相変わらず商人の才能が皆無だ。


「あの時の!失礼、相場は日々変動するものでして。」


「それでも上がり過ぎでしょ。20銀は?」


 唸りながら商人は渋々20銀で了承した。



 金はあるがボッタクられるのは良くない。首飾りをポーチにしまうと、ユウキは目的の男を探して歩いた。


 すると背後から声を掛けられた。


「失礼、ユウキさんですか?」



 それはガルドから聞いていた特徴に一致していた。


 ただフード付きのローブで頭までズッポリ。商人と言うより不審者だ。



「そうですが貴方は?」



 男は一枚の紙を取り出し、ユウキに手渡してきた。


「火急故に、人目に付かぬところで迅速にお読み頂けると幸いです。」



 それだけ告げると、男は突然消えた。


 否、高速で跳躍して知覚されない速度で屋根をひた走って行った。




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