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日常〜短編〜

 ー果し状ー


 事件から2ヶ月が経ち、皆2年に昇級していた。



 春の小風がそよめく中、ユウキとアリサは中庭を歩いていた。


「それで会長が無理を言うのよ!」



 アリサは他愛の無い話をしていた。それを楽しそうに聞くユウキは身長が一年前より伸びていた。



「いいじゃない、会長が誰と付き合おうが自由さ。」


「だけどなんで私が仲介しないといけないのよ・・」



 そこでレナードが鍛錬している所に着いた。


「おーいレナード、そろそろ授業だぞ。」



 ヒュ!ヒュ!


 刀が風を切るいい音がする。


「うん、分かった。」



 レナードは汗を拭きながら、3人で校舎に向かって歩き出した。



 すると突然ユウキの後ろから抱きつかれた。


「ユウキ〜ボクだよ!」



 ルインだ。あの事件の後から妙にユウキに引っ付いて回る。


「ルイン、気配を消して背後から寄るのはやめてくれ・・間違って襲っちゃいそうだ。」


「へへっ〜ユウキなら良いよ?」



 それにアリサが反応する。


「ちょっとユウキ君、ルインさん?」



 バチバチと目から火花が散っている。


 最近はいつもの事なので気にも留めない。



「はいはい、遅れるぞ。」


 レナードはやはり優しく見守るだけだ。





 玄関に着いて下駄箱を開けると、レナードの箱からはドサドサッと手紙が落ちてきた。


「お前人の事言える状況か?」



 レナードは困ったように手紙を拾い集める。


 そしてユウキが開けると、ドサドサッと同じように手紙が落ちる。


「ユウキも同じじゃないか。本当に大変だよね。」



「・・・全部果し状だ。」


「・・・ははっ」


「おい、乾いた笑い方をするな。まぁ焼却だな、アリサ!」



 呼ばれてやってくると、手紙の山2つに驚いた。


「「なにこれ?」」


 アリサとルインが揃って声を上げた。



「(レナードのは)ラブレターだ。」



 瞬間、ユウキの手紙の山が燃え上がった。


 アリサは笑っているが目が笑っていない。



 レナードとルインが若干引き攣っていると、ユウキはすかさず述べた。


 延焼回避だ。



「いや俺のは果し状で、ラブレターはレナードだ。」



 すると危うくレナードの手紙を燃やしそうになり、焦って炎を消した。



「やだ、ごめんなさい私ったら!」


 レナードはユウキを横目で見ながらアリサに告げた。


「大丈夫だよ、悪いのはそこの人だから。」



 言うが早いか、全速力で教室に逃げた。







 ー授業中の落し物ー


「であるから、上級は魔力消費が一際大きい。しかし昨年ユウキとアリサにより論文が提出され・・」


 カチャン・・


 ユウキが羽ペンを落とした。


(しまった。)



 すかさずアリサは風魔法で羽ペンを拾ってあげた。



『ありがとうアリサ。』


『どういたしまして。』



 授業が進み、今度はアリサが教書を落としてしまった。


 ドサッ!



 ユウキが魔力を解放したのが見えた。


「ちょちょ待って!」


 ブワッ!


 重い教書が持ち上がると、アリサの机に置かれた。



「何をしているのですか!手で拾いなさい。」



 怒られた。



 アリサは謝り椅子に座り直すとある事に気が付き、青筋が立った。


 机に置かれた用紙は風圧で粉微塵だった。



(ユウキー!!)


 パチンと指を鳴らすと、ユウキの用紙が燃え上がった。


「おわ!先生、火事です!」



 それを見たルインが焦ってウォーターボール(大)を落とした。



 バシャャャャン!!



 教室中水浸しである。


 レナードの机を除いてだが。



 レナードは察知して光の翼でウォーターボールから身(教書も含む)を守った。


 自分だけを守った所はわさとだ。



 クスクス笑っていると、ユウキが瞬時に背後に回り翼に蹴りを入れて、風を纏うと思いっきり殴りつけた。


 ビシッ!ガシャァァァン!!


「わわわ!」



 アリサがすかさずウォーターボール(圧縮)をレナードの上で炸裂させた。



 ザバァァァン!!


 ピチョン、ピチョンー



「ナイス連携!」



 そこでアトリア先生の堪忍袋の尾が切れた。


「お前達は・・・才能の無駄遣いをするなぁぁぁ!!」



 こんな事は日常茶飯事であった。


 実戦訓練としてバルトフェルドに高く評価されていたのは内緒である。



 ただ、固有血技もないただの優等生である、ザックとシンシアには良い迷惑であった。





 因みにルインは《サイレントミスト》と言うと水属性の固有血技を持つ。


 暗殺教育の過程で極限状態から6歳で発現した初代発現者である。


 その効果は自分の魔力と気配の一切を消し去ることが可能。さらに霧から残像を作り上げることができる。


 更に深度を増すと残像はミスト分身となり、実態を持つようになる。


 進入時にユウキに気付かれず、ユウキに抑え込まれても背後を取れたのはこれによる。




 ともあれ、4人は様々な過去や現在を経て学園生活2年目を満喫していた。







 ーサウスホープの危機ー


 お爺ちゃん、ユウキから手紙が来たよ。


「彼奴らも頑張っておるな。そう言えば拡張の話は送ったか?」



 村長に言われ、ガラスが首を横に降る。


 届いた腐蝕液のサンプルを試して効果の良かったものを使い、畑の拡張に成功したのだ。



「後で手紙を書くよ。それより中身を読もう。」



『拝啓、空気が暖かくなりそろそろ植える季節でしょうか。

 腐蝕液の具合はどうですか?森の状態は良好ですか?

 こちらは論文を出して卒業要件を満足しましたが、まだやりたい事があるので在学します。

 どうか健康には気をつけて下さい。


 追伸、アリサと付き合う事になりました。」



「・・・何じゃと?」


「爺ちゃん、ヤバイよ!」



 2人は焦っていた。サウスホープの危機に。



「ガラス、直ぐ農作物研修として他村に出してやる。女子(おなご)を・・見つけるのじゃ!!」



 そうサウスホープの子供で女児はアリサだけだった。


 彼女が一緒に外に出た男と繋がったら、サウスホープの世継ぎがいなくなる。



 単純にして最大の危機だった。



「あぁ、爺ちゃん・・嫁を探してくる!」



 もはや農作物研修なのか嫁探しなのか分からない。



 だがしかし、確かに言える事は1つ。サウスホープに女がいない。



 こうしてガラスは隣の農村に研修に出る事になった。







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