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1つの結末

 商業ギルドを出たのは朝日が昇る頃だった。


 奴隷制度自体は昔からあるため、廃止すると逆に裏で動く者が現れる危険がある。


 奴隷の待遇改善は迅速に行い、制度はそのままにされた。



「あー疲れた。」


 ユウキのつぶやきに皆が頷いた。


 しかし依頼であったことを思い出した。



「やべぇ、護衛任務の完了通知受けてない?」



 するとレナードが一枚の紙をヒラヒラさせた。


「ユウキはこう言うところが抜けてるよね!」



 朝日に彼らの笑い声が木霊した。そして冒険者ギルドに着くと、忙しそうに冒険者達がウロウロしていた。


「相変わらず朝が早いんだなぁ。」



 ボヤきながらユウキ達は受付に行くと、受付嬢が営業スマイルを炸裂させてきた。



「おはようございます!今日も雲1つない良い天気ですね!」


 そう言われてユウキは冷や汗が流れた。


(やべぇ、雲消し飛ばしたのって俺だ。)




 それを見たアリサ、レナード、ルインはクスクス笑っていた。


 受付嬢は頭に?が浮かんだが、直ぐに気を取り直して内容を聞いてきた。


「昨日の護衛任務の完了手続きを。それとギルド長に挨拶がしたいのですが。」



 書類を確認して受付嬢は後ろに下がって行き、暫くすると奥に案内される。



「一先ず任務御苦労。ガルドから情報は来ているが、お前らやってくれたな。これでやっと元の街に戻る。」



 どうやら冒険者ギルドの長も一枚噛んでいたようだ。


 すると3人に袋が手渡された。


「依頼主の当主から特別褒賞が出た。中は一袋800金貨で、一袋につき200金貨をギルドが預かっている。

 今回の依頼に大変満足頂いたようで、お前らのゴールド推薦も来ている。」



 王都騎士団下級騎士の年収が大凡200金貨である。破格の褒賞と見て良い。


 ただゴールドの壁は簡単に倒れる物ではない。



「だがゴールドは一握りしかいない。それも地道に任務をこなして着実に信頼を勝ち取った者達だ。

 実力と推薦があっても、まだ成れるもんじゃねぇ。」



 それには納得がいく。突然現れた新星にゴールドをあげます。なんて言ったらギルドの信頼はガタ落ちだ。


「当然です。地道な活動がなくて貰っても手に余ります。」



 それを聞いてギルド長オーギスは大層大きな声で笑い出した。


「ガハハハ!やはりお前らは好きだ。学園が嫌になったらいつでも来い。」



 そしてルインを見たオーギスは申し訳なさそうな顔をした。


「ルイン、俺はお前を知っていた。闇ギルドとしてお前の家に賊討伐に向かった1人だ。

 あの時・・お前しか助けられなかった。本当にすまない。」



 これには驚愕した。先ほどガルドが言っていた別の情報ルートとはこの事なのだろう。



 そしてもう一袋取り出すと、ルインに渡した。


「これはお前に関わった全ての大人達からの懺悔だ。受け取ってはくれないか?」



 中を確認したルインは声を上げた。


「こんな大金・・」



 中は1000金貨、そして紙が一枚入っていた。


 その紙を広げてルインは口を手で覆った。


「金はついでで、そっちが渡したかったものだ。

 俺が家から内密に持ち出せた唯一の物だ。渡す機会がなくて遅くなった。」



 そこに書かれていたのは4歳ほどの子供と一緒に笑う男女が描かれた絵だった。



「ーお母さん・・お父さん・・やっと顔が思い出せた・・・うぅっ」



 ルインの鳴き声が木霊する。落ち着くのを皆が見守った。




 そしてユウキは窓から空を仰ぎ見て呟いた。


「もうすぐで春だな。なぁ、俺たちは守れるほどに強くなれたか?」



 アリサが答える。


「まだまだね。」



 レナードが続いた。


「だけど救えた者も確かにあった。」



 ルインがそれを聞いていて、涙に濡れた顔を上げた。


「ボクもこれから弱者を守れるようになる!」



 それを見ていたオーギスは「ふっ」と不敵に笑った。


「お前らに負けない大人にならないとな。」





 ーこうして7年前に始まった哀しみは、新たな芽吹きとなって一幕を閉じたー



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