城下町の異変
実力検定試験から1週間、結果が発表された。
Sクラスは残留、優勝したユウキとアリサには100金貨、暫定三位のレナードは60金貨が贈呈された。
レナードはユウキと朝の紅茶を啜っていた。
「金が入ったし、今日は街にでもでるか。」
「いいね!」
ユウキは首飾りに集中するとアリサに話しかけた。
『アリサ、街に出ないか?』
すぐに返答があった。
『良いわよ、それじゃぁ第二門に行くわね。』
ー第二門前ー
「アリサ、ポークバーグに行こう。」
早速行き先を決めて3人はポークバーグに向かった。
「お兄さん達、朝ごはんは・・・あ〜」
ポークバーグのミサが声をかけてきた。相変わらず頑張っているらしい。
「久しぶりだね、ミサちゃん元気だった?」
レナードに聞かれて真っ赤になった。
「ちょちょちょ、大丈夫よ!元気元気!!」
明らかに挙動がおかしい。
ニヤリとしてユウキは助け舟を出した。
「ミサ、いつものを頼む。」
ビシッと敬礼すると、ダッシュでポークバーグに走っていった。
「ミサちゃん可愛いわね。」
「あぁ。」
レナード1人訳がわからず、ミサの後をついていった。
ポークバーグの食事は久しぶりだ。
サウスホープの懐かしい味に舌鼓を打っていると、女将が話しかけてきた。
「あんた達、良かったわね!最初に泊まった時からそんな気がしていたけど。」
3人は???が頭に浮かんだ。
「やだわぁ、試験で大仰にやらかしたでしょ。情報アンテナは商人の命よ。今日は報告??」
それを聞いてユウキとアリサの事だと察した。
「あはは、まだ実感ないですが両想いでした。」
アリサは嬉しそうな困ったような表情で告げた。
それを聞いて女将は満足すると、小声で忠告してきた。
「試合で貴方達お金持っているでしょう。最近ちょっと物騒な話があるから気をつけてね。」
それは初耳だった。何でも貴族の屋敷で窃盗や殺人が相次いでいるのだとか。
「ちょっと気になりますね。」
「その件で実は相談があって、冒険者ギルドに行ってもらえないかしら。ギルド長のオーギスさんに会ってもらえる?
私からだと言えば通じるわ。」
それを聞いて3人は顔わ見合わせた。
この女将は只者じゃないと。
一介の宿屋の女将が商業ギルドと冒険者ギルドのボスから頼みを受けるとは。
それを察して女将がはぐらかした。
「やだわぁ貴方達が有名で、ここに来るから私に話があるのよ。」
本当かどうかは別にして、ユウキ達は礼を言うと支払いを済ませて宿屋を出ようとした。
「また来ますね。」
「いつでもいらっしゃい!」
レナードはミサを見つけて笑顔で手を振った。
「ミサちゃんまたね。」
何もないところで躓くと、ブンブン手を振っていた。
「やっぱり可愛いわね。」
ふふっと笑いながら、3人は宿屋を後にした。
ー冒険者ギルドー
扉を開けると、ギラッとした目付きで皆が注目した。
学生が来ることは珍しい。
そこで1人の男が話しかけてきた。
「よう、久しぶりだな!」
それにアリサが笑顔で答える。
「ガルシアさん、お久しぶりです!」
ユウキの父ボストンの旧友、ガルシアだ。
「しっかし見ない間にでかくなったな!あそこも成長したか?」
相変わらずのガルシア節である。
「父さん位にはなってるんじゃないですか?」
「ガハハハ!それなら問題ねぇ!」
受付に向かいながらレナードを紹介した。
「ユウキの友人でレナードです。よろしくお願いします。」
「おう!いい男じゃねぇか。アリサちゃんこっちでも良かったんじゃねぇか?」
どうやらここでも知られているようだ。
「レナードはいい友達ですが、ユウキ一筋です。」
言い切った。ちょっと嬉しいユウキがいた。
受付嬢が挨拶してくると、ポークバーグの話をした。
こうしてギルド長が来るまでガルシアとたわいも無い話で花を咲かせた。




