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努力が実る時

 レナードが闘技場に入るとアナウスが響いた。



「特待2人目はレナード・ドール!私の弟だぁぁぁぁ!!」


 そのアナウスにバッ!っと皆が2人を見比べた。



「な・・何だ?私に弟がいては変か?」


「会長!マイクのスイッチが!」



 ザワザワ・・



「んんっ!失礼しました。相手は水属性を得意としたミリスだ!

 これまで彼女の懐に入れた1年は皆無、皆押し流された!」



 そして相対するとゴングが鳴る。


 カンッ!





 ミリスは開幕からウォータージェットで押し流そうとしてきた。


 レナードは詠唱を確認すると、光を刀に纏いただ横薙ぎに一閃を放った。




 すると高水圧の激流を光の斬撃が切り裂き、水分と光の残滓がレナードの周りをキラキラと舞い散り、その美男子を格好良く魅せる。



「きゃーレナード様かっこいいー!!」



 観客席からは黄色い歓声が飛んでいる。やはりレナードの金髪碧眼で優しい目つきは人気がある。



 ミリサは「小癪な!」と高位魔法の詠唱を始めた。


 《アクアブレス!》



 大小様々な水泡が空間を支配する。


 この魔法は上級水魔法で、1つ1つが高圧縮された殺傷力を持つ泡となる。



「大台に入ったか!ここで上級魔法だぁぁ!!レナードどうする?!」




 レナードはクラスターボムを発動させると連鎖で泡を崩壊させ、上空に進路を作ると一気に跳躍して光を纏った。



 両手で長刀と小太刀を持つと、高速で泡を光の刀で両断しながらミリサの横に地面を抉る勢いで着地した。



 ズガァァァァン!!


 着地姿勢のままミリスの首筋に刃を当てる。


 ミリサは瞬間的に首に二本の刀を突きつけられている事に気がつかなかった。



「あ・・う、こうさ・・ぁ」


 首筋に当たる金属の感触に意識を失った。



「レナードォォォ!!良かったぞぉぉぉ!」



 会長のアナウスに会場内から歓声がわく。


 その声に送られながら待機室に戻って行った。



「レナード、ボムも光を纏う必要も無かっただろ?」


 戻るなりユウキが聞いてきた。



「うん、声援がそれを望んでいたから。」



 こいつシレッと言いやがった。アリサと言い、ハードル上げやがる。



「しゃぁねぇな、行って来るわ。」


「ユウキ、期待しているわ!」



 ユウキは右手を挙げて答える。そして右手を見たユウキは呟いた。


「そう言えばあいつ、俺の真似したのか?」



 呟きは歓声にかき消された。






「特待生最後はユウキィィィ・ブゥレェイィクゥゥゥ!!!」


 もはやノリで会場が沸いている。



「彼は魔力が無いのに特待生に抜擢された超新星だ!得意とするのは武闘術という渋さ!!

 過去には剣が邪魔で投げ捨てたと言う逸話もあるぞ!!」



 マジか、これ知ってるのはアリサだけなんだが・・


 アリサを見ると明らかに目を逸らした。




「相手は序列一位のぉ!ノーギスだ!!彼の剣技と魔法センスは群を抜いている!勝つのはどちらだぁぁぁぁ?!」



 ユウキはアナウスに半ば呆れて半笑いしていたが、ノーギスは癪に触ったらしい。



「おい無能。特待にはいくら払ったんだ?」


 ノーギスは鼻で嘲笑してきた。これにはユウキはちょっとカチンと来た。



「おい三下。1分やるから俺を動かしてみろ。」





 このやり取りを知ってか知らずか、ゴングが鳴らされた。


 カンッ!



「調子に乗んなよ!お前の使えない魔法でぶっ殺してやる!」


 すると大仰に両手を広げて上級炎魔法の《ヒートエンドボム》を詠唱しだした。



 ただし、アリサの改良前のやつで、詠唱が丁寧過ぎて無茶苦茶長い。


「3分いるか?遅すぎて魔力ダダ漏れ。」




「おおっと!これはヒートエンドボムだ!ーーけど詠唱がなげぇぇぇ!!ユウキ選手も呆けている!」



 どうやら一般学生から見ても長いらしい。



 汗をダラダラ流しながら魔力を枯渇寸前まで垂れ流している。


「もう・・謝っても止まらねぇから・・な!」



「うるさい三下、早く撃って来い。と言うかそれで自滅しないで下さい。」




 言葉と同時にユウキの僅か右でヒートエンドボムが炸裂した。


 ズドォォォォン!!


 黒煙が上がり、闘技場の地面が大きく抉れる。




「あれ・・これマジで消し炭じゃないの?」


 生徒会長の不安な声がアナウスから漏れた。



 すると黒煙が突風で巻き上げられた。その中央には真紅のヴェールを纏ったユウキが居た。




「1分だ。魔法って言うのはこうやって使うんだよ。」



 指でパチンと音を鳴らすと、空間に多重魔法陣が展開され、クラスターボムが炸裂するとノーギスまでの道が出来た。




 ノーギスは本能が警鐘を鳴らす。手を出してはいけない化け物だと。



 ユウキは地面を踏みつけると亀裂が生じ、亀裂から土塊の棘が幾重にもせり出しノーギス挟まる!


 《アーススパイク(弱)》


 バリバリバリ!!バキンッ!


 ノーギスは近づいてくる棘の嵐に恐怖した瞬間にはもう意識がなかった。



 棘はノーギスを掠め、剣を折るだけで終わった。




「勝者ユウキ・ブレイク!!特待生として最高の試合を魅せてくれたぞ!格好良すぎるぞ!好きだぁぁぁぁ!!」


 なに?


 シーンとなって皆が生徒会長エリザ・ドールを見る。





 パチパチパチパチ・・



 レナードが拍手していた。


 静寂の中、それは響いてアリサも続く。



 そして学園長とバルトフェルドが立ち上がると拍手をした。



 そんな光景に生徒達は皆ユウキに賞賛の拍手を送り、会場は拍手の嵐となった。




 ユウキは真紅の瞳で周りを見ると、それに応えるように拳を高々と挙げた。




 無能と称された者が、誰よりも強力で美しい真紅の魔力を放出していた。



 無能と言われ続けても、鍛錬を毎日行い基礎を高め続けた努力の成果である。



 そしてそれは今、大勢の他者に認められた瞬間であった。




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