オーク族
ー聖都領 モリス森林ー
ユウキ達のダンジョン攻略と時を同じくして、ゴブリンのグライスは単身でモリス森林に向かっていた。
ボキッ
グライスの手は大きな虎の首を持っていた。
「うーむこの辺りのはずだが・・」
ドドドッ!!
するとグライスの足元に矢が射られた。
グライスは慌てず矢が飛んできた方を睨んだ。
「ゴブリンが何の用だ?」
グライスは睨んだ目つきを落ち着けると、声の主に語りかけた。
「グライスだ。オークの戦士グロッサムの友が会いに来たと伝えて欲しい。」
「・・・付いて来られよ。」
そう言うと二体の獣人はオークの集落に向かった。
オーク族の集落はゴブリンとさして変わらない簡易要塞のような形になっていた。
一時共存関係にあったので、構築方法が似通っているのだ。
中に入ると、オーク族はみなグライスに注目する。
しかし中には『ダルカス大森林の獣人討滅戦』前から見知った者もいて、特に気にした様子はない。
オークは巨体で、ゴブリンが通常120cm程度の身長なのに対して、オークは170cmはある。
グロッサムの建屋の前に来ると、一際巨大なオークが見えた。260cmはあり平家の屋根位はありそうだ。
「久しいな、グロッサム。」
声に振り向き、目を見開いた。
「おお、おお!グライスか!良くぞ生きていた、我が友よ!」
2体の身長差は1m近くあるが、力強く拳を打ち合わせても微動だにしない。
「此度はどうした?人族にまた領地を追われたか?」
それを聞いて顔を和らげる。
「それについては問題ない。少し古い話を聞きたくてな。」
グロッサムは建屋に促すと、グライスと中に入って行った。
「難しい話ではなくてな、俺たちが別れた後に妙な事が無かったか?」
「妙な事?」
グライスは頷き椅子に座ると、先を続けた。
「6年か7年ほど前になるが、俺たちの集落で岩石運搬中に魔法妨害を受けた。だが、人族の犯行では無いようなのだ。」
それを聞いてグロッサムはピンと来た。
「それならあるぞ!ここへ来て程なくした頃、集落の柵が軒並み内側に倒れた。
その時は人族を疑ったが、その後は何も無いし人族の気配が一切無かったのだ。」
グライスは顎を手でさすり、必死に考えた。
「俺たちと同じだな。何か良くない事が起きたが、その後はぱったりなんだ。やはり警戒した方が良さそうだ。」
グロッサムも同じだったようで、当時オーク族も集落の防衛強化と戦力増強を急務にしたようであった。
グライスはまだユウキとアリサ、村人達との協定については語らなかった。
協定に反するのもあるが、信頼を崩したくないと言うのもある。
「そう言えば先ほど虎を仕留めた。土産だと思ってくれ。」
そう言って手に持った虎を差し出した。
「これは馳走だな!これでもてなしてやろう。」
そう言って2体は今の事や昔話に花を咲かせて、漢達は語らうのであった。