上級魔法(1)
学園での授業は、主に初級から中級魔術の反復練習や武術の指導であった。
また、基礎トレーニングのやり方と算術や戦術の座学を行っている。
そのまま基礎を徹底して訓練し続け、ある程度の水準まで皆高めることができた。
ユウキは魔法の時間を基礎鍛錬や、皆の魔力反応を見ていた。
そして1カ月が過ぎようとしていた頃、内容に変化が訪れた。
ユウキ達は修練場に向かっていた。魔術訓練である。
バルトフェルドとアトリアが到着すると皆慣れたもので、ビシッと整列した。
「貴様らの力は見せてもらった。個々の能力は突出しているが、決定打に欠ける!まずは上級魔術を覚えろ。」
バルトフェルドがそう言って、アトリアが前に出ると皆注目した。
「初級から中級が対個人戦を想定したものなら、上級からは戦術的な規模になります。
使用する魔力量も多ければ上手く発動さえしないでしょう。」
最も攻撃的な炎の上級を今から見せると言うと、アトリアは精神統一して詠唱を始めた。
「未知なる深遠から賜りし怨嗟、紫炎の名の下に隔絶せし混沌を、時の狭間に道を開けば、終わりの炎が全てを爆ぜさせん。」
《ヒートエンドボム!》
すると空気がビリビリと振動するのが分かる。そして魔力が収縮されていき、一気に解放された魔力は広範囲に爆炎をもたらした。
ドガァァァン!!
けたたましい音を鳴り響かせながら黒煙が上がり、爆炎は辺りを破壊し尽くして収縮していく。
地面は抉れ、置いてあった標的は跡形もなくなり破片は燃え上がっている。
皆呆気にとられていた。
「すごい・・」
誰ともなしに呟く声が聞こえた。
しかしそんな中で1人だけ違う反応を示すものがいた。ユウキだ。
(4節からなる詠唱で、1節で魔力を増幅させ、2節で座標を決定し、3節で魔力を転送、4節で解放といった感じかな。)
ユウキは1人ブツブツと呟いているがアリサはいつもの事などで気にしていない。むしろその考察を聞いていた。
(ストロングと同じで増幅されているだけで、固着を行なっていないから魔力が使われずにだだ漏れだ。
3節の転送は座標固定と同時に行えば無駄がなくなるから、増幅→固着→座標と転送→解放がベストだ。)
アリサはそれを聞いてニヤリと笑っている。レナードが何のことかさっぱりで頭に???が沢山浮かんでいた。
するとバルトフェルドが全員に告げた。
「よし、教書に句が書いてあるから先ずは詠唱してやってみてくれ!
中級まで使えるし、青の反応があったお前らなら一発なら打てる・・・かもしれない。」
各々は我先にと詠唱を始めるが、発動した者は居なかった。
1名、アリサを除いて。