固有血技《点穴》
程なくして村長の家に到着した。
ボストンがドアをノックすると、中へ通された。
豪華ではないが広めに作られた木造家屋は、生活する部屋の他に、会議室なども揃っている。
大抵の村民は、勝手に応接用の客間に向かう。
ボストンも例外ではない。
客間で座り2人が待っていると、通路から足音が聞こえて扉が開いた。
「ボストン君よく来てくれた。ユウキ、昨日のクワの調子はどうだ?」
そう言って現れたのは村長だ。初老で白髭を生やしている。
「はい、早速使いましたが土がよく唸ります!」
「それは上々。して、本題だがあの岩を駆除できるかね?かなり硬いぞ。」
ボストンは顎に手を当てて答える。
「おそらく問題ありません。ただし、この子を作業に参加させて下さい。」
それを聞いて流石に村長も驚きを隠せない。
「その子は特異体質だろうに、本当にで・・・」
そこでボストンが遮るようにピシリと言った。
「この子は我々の初代と同等かそれ以上です。この作業でハッキリします。」
村長は上を仰ぎ、唸った。
魔力が全てのこの世界では、歳を重ねるほどそれが色濃くなる。
更に貴族などは子供の教育に魔力の強さを要求している。
「分かった、ユウキの作業参加を許可しよう。
ただし、安全が最優先だ。」
それを聞いてボストンは村長に頭を深々と下げた。
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現場に到着すると、すでに大勢の村人が見に来ていた。
ユウキが岩に寄ると、数人の村人が怪訝そうな顔をした。
かまわずボストンはユウキの肩に手を置き、とある説明を始めた。
「これからユウキに作業をしてもらうが、その前に固有血技について説明する。
固有血技とは稀に見る能力だ。一度発現した場合、その血族にしか同じ効果は発現しない。
その深度は人それぞれで、伝説になるようなのは大抵初代だ。」
一度言葉を切り、暫くしてボストンは続けた。
「ブレイク家でも発現していて名前は《点穴》。
その効果は対象の魔力の薄い所、プラックスポットを見ることが出来る。」
ユウキが質問する。
「つまり、弱点が見えるっていうこと?」
「そう聞いている。だが俺に見えるのは精々少し薄くなっているって言う位で、剣術や魔法でごまかしてきた。
だがユウキは違う。昨日の昼に確信した。」
そう言ってボストンは岩を指差して言った。
「この岩の魔力を見てくれ。俺には一点だけ薄い箇所が見える。」
ユウキは岩の周りを回って見てみた。
そして答えた。
「この岩、普通の岩じゃないよお父さん。マダラに魔力が強弱してる・・」
それを聞いて驚き、ボストンはもう一度見てみるが変わらない。
「因みに何処がプラックスポットだと思った?俺はこの斜め下辺りだ。」
するとユウキは首を傾げてから岩に登った。
「そこは確かに弱いけど周りが硬いよ?
この岩全体を崩すなら広範囲に弱い上から、ポンってしないと。」
ボストンは少し考えてからユウキに伝えた。
「よし、ユウキやってみろ。父さんはお前を信じている!」
それを聞いてユウキは笑顔で答えた。
拳を両手で握り頭の上に振りかぶったユウキは・・・えいっ!と言う声と共に一気に叩き込んだ。
岩は上部から一気に多数の亀裂が入り、そして・・・
ズドオォォォン!!
岩石は大小様々に砕け、土煙が辺りを覆う。
ボストンは慌てて初級風魔法の《ウィンド》を詠唱し、辺りの土煙を晴らしていく。
「ユウキ!大丈夫か!」
ボストンが叫んだ。
そこには無傷で両手片膝を地面につく少年の姿があった。
しかし親には傷が無くとも関係ない。
ユウキを抱きしめた。
「お父さん、大丈夫だよ。
それより何か黒っぽいものが落ちてるよ?」
周りには鉄鉱石が散らばっていた。
それを見てボストンはユウキに言った。
「良くやったぞ!マダラな魔力はこれのせいだな・・」
つまりボストンの言う場所を攻めても、穴が空くだけで岩石は壊れなかった。
すると堰を切ったように歓声が上がった。
ワアァァァ!パチパチパチ!
村人たちはユウキを賞賛した。
もうこの村ではユウキが無能だと思う人間は誰もいなかった。
これで岩石の駆除は無事に終了した。
鉄鉱石を含む岩石が村はずれに落ちた。と言う奇妙な原因を除いては。