友情のアクセサリー
商業ギルドを後にしようとした時、ガルドがあるものを渡してきた。
「これを持っていくと良いよ。困った事があったら役に立つと思うから。」
それは小さな金バッジだった。
「ありがとうございます。また何かあったら来ますね。」
そう言ってギルドを後にした。
3人はそのまま露天商を見て回る事にした。
アリサはそのうちの1つ、宝石商の露店が気になった。
「アクセサリーが気になるのか?」
そう言ってアクセサリー露天のところに行った。
「いらっしゃいませ。飾りから魔力付与された一品まで揃っていますよ!」
ユウキはザッと見て回ると、勾玉がそれぞれ違う色をした3本の首飾りに注目した。
「確かに魔力の痕跡が見受けられるね。特にこの首飾りは・・・」
ユウキが持った首飾りは3本で6銀と格安だった。
それを見て露天商は訝しげな表情をした。そしてユウキの服や魔力をよく観察して、邪悪な笑みを浮かべる。
「お客様、そちらは何も無いただの首飾りでございます。失礼ですがお客様は魔力がないようで・・それならばこちらは如何でしょう?」
そう言って出したのは5金と書かれた指輪だった。
ユウキはその指輪から全然魔力を感じなかったので、紛い物だと判断した。
今度は逆にユウキの口角が上がる。この露天商は目利きの才が全く無い。
「いえいえそれには及びません。この6銀の勾玉が付いた首飾り3セットをください。」
露天商は露骨に嫌な顔をして、取引が成立した。
少し離れるとアリサに茶色の勾玉が付いた首飾りを手渡した。
「俺からのプレゼント。まだ自分で稼いだお金じなゃないけどね。」
アリサは受け取ると、首飾りを抱きしめて嬉しそうにはにかんだ。
「わぁ〜・・・ありがとうユウキ、とっても嬉しい!」
そしてユウキはレナードに向き直ると、緑の勾玉が付いた首飾りを渡した。レナードが思わず聞いてしまった。
「これは?」
「大切にしてくれよな?」
するとこうしたプレゼントは初めてだったようで、レナードは面を食らって呆けたが、直ぐに笑顔になった。
「ありがとう、初めて友達からこんなに嬉しいものを貰ったよ!」
レナードとアリサは早速つけてみた。2人とも良い感じだ。
ユウキは頷くと2人にニヤリとして言った。
「2人とも似合ってるぞ。」
しかし気になる事がある。
「しかしこのアクセサリー、何かの魔法がかかっているけど何だ?3つとも似通った感じなんだけどなー。」
ユウキも赤い勾玉が付いた首飾りを付けてみた。
(なにの力だ?ナックルは風だったけど。)
するとアリサとレナードが同時にユウキを見た。
「「ナックルって?」」
それを聞いてユウキは素っ頓狂な声を出した。
「はい?」
「今ナックルに風がどうのって言ってなかった?」
ユウキは驚愕した。
「こ・・これ!思った事が首飾りを持つ人に聞こえるのか!?」
「「えっ!?」」
2人も驚いた。と言うより焦っている。
『こうかな?聞こえる?やだ私・・』
ユウキは2人に聞いた。
「アリサの声は聞こえたけど、俺の声は聞こえた?」
2人は首を振るった。
「良かった。首飾りの魔力に意識して飛ばそうとしないと大丈夫みたいだ。
最初にアクシデントで飛んだのは、首飾りの魔力のことを考えていたからだろう。」
2人は安堵の息を漏らすと、ちょっとした騒動に幕を閉じた。
「しかしあの露天商はバカだな。本質を理解しないで売るとか。思念魔法が付与されたアクセサリーなんて一個で屋敷が立つほど貴重だぞ。」
3人は笑いながら寮に向かった。大事な友情のアクセサリーをその身につけて。




