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宿屋の女将

 ユウキとレナードは急いで第二門に向かっていた。


「アリサもう来てるかな!?」


 走りながらユウキが答える。


「居たら居たでどうにかする!」



 城門が見えてきた。目標地点に捕捉対象は・・いない!

 2人は到着と同時に「「セーフ!!」」と言った。


「いやー流石に焦ったぜ。この制服の件と鍵の事がなければ忘れなかったんだけどな。」



 すると通用門から1人の人物が出てきた。


「何がセーフなのかしら?」



 自分らと同じ黒を基調としたデザインの女子制服だ。ユウキは冷汗が流れるのを肌で感じた。


 レナードはすかさず挨拶をする。


「おはようアリサ!」


 アリサはレナードに笑顔で挨拶を返した。ユウキもそれに続く。


「やぁ、おはようアリサ。君も特待生だったんだね!まぁあの試験内容なら当たり前か。」



 それを聞いて気を良くしたアリサは腕を前で組み、さも当たり前のように答えた。


「当然よ!それよりさっき忘れてたとか・・」



 ユウキはシレッと言う。


「朝食の話さ。俺魔力がないから鍵の開閉ができなくて、朝飯食い損ねたんだ。」



 腕を組んだままジトーっとした目付きでユウキを黙って見続ける。


「まぁいいわ。私も支度に時間がかかって食べていないわ。城下町で朝食をとりましょう。」



 そう言われて、2人はやれやれといった調子でアリサの後に続いた。


 通用門を出てユウキが思い出したように話した。


「飯なら右手の宿屋に行こう。ポークバーグの女将には良くしてもらったし、合格したから飯食うついでに報告しようか。」



 それを聞いてアリサは頷いた。


「いいわね。レナード、ポークバーグは私たちが前日止まった宿屋なの。料理も美味しいし、応援してくれた良い人がいるのよ。」


 納得したレナードが、それなら僕も是非行きたいなと同意した。



 3人は街並みを見ながら宿屋ポークバーグを目指した。





 街中を歩いていると、背後から元気娘が声をかけてきた。


「特待のお兄さん達ご飯はもう決まった?まだなら美味しい料理が安く出せる宿屋ポークバーグにどう?」


 振り向くと娘は「あっ」と声を漏らした。



 それを見てユウキはニンマリと笑った。


「ミサ、俺たちはこれから朝食なんだ。案内してもらえるかな?」


 ミサは特待生の制服を着たユウキ達に気がつかなかった。そしてビックリした。


 まさか自分が客引きして前泊した客が、王都学園の入学試験をパスして特待生になっているとは思いもしなかった。


「は、はい!ただいま!!」


 ミサも嬉しくなってルンルンで宿屋に案内した。



 ミサは宿屋の玄関を勢いよく開けると、受付にいる母に大きな声で伝えた。


「お母さん!リピーターだよ!」


 それを聞いて女将だと注意しようと玄関を見たら、言葉が出なくなった。


「ユウキさん・・アリサさん・・?その格好はまさか。お、おめでとう!」



 自分の子のように喜んで近寄ってきた。そして2人を抱き寄せた。


「難関なのによく頑張ったわね!しかも数年に1人と言われる特待生に!」



 それを聞いて2人はキョトンとした。特待生など毎年いるのだと思っていたからだ。


 レナードはそれを察して説明する。


「特待生は毎年でないんだ。学長が気に入った人物を指名して特待生として招くのさ。

 学費はタダ。学園への魔術研究などの貢献度でむしろお金がもらえるときがある。」



 ほうほうと2人は頷いていた。そこでレナードに気がついた女将がすかさず謝る。


「ごめんないね、取り乱してしまって。貴方はこの子達の友達かしら。」



 レナードは気にする様子もなく姿勢を正すと、挨拶した。


「友人2人がお世話になったようで、レナードです。お見知り置きを。」


 女将は笑顔で答える。


「貴方もおめでとう。ここの女将と娘のミサです。今日はご飯かしら?奮発するわよ!」



 ミサがレナードを見てポーッとしている。それを見てユウキがつつく。


(おい、ミサ大丈夫か?)



 ハッと我に返ってミサが慌てたように答える。


「だだだ、大丈夫よ!ちょっと皆の制服がカッコいいな!って思っただけだから!」


 そう言って食堂に3人を案内した。



 程なくして女将が食事を運んできて3人は朝食をとり始めた。


 スクランブルエッグにパンに牛乳などだ。だがこのパンで3人は声を上げた。


「おお?これは!」


 女将がユウキにニコリとした。



「貴方の言う通り、サウスホープの小麦を試してみたの。そうしたら大絶賛の嵐よ!

 商会の人がユウキに会いたがっていたから、後で時間のある時に商業ギルドに寄ってもらえるかしら?」



 食事を続けながら女将に親指を立て、それを見た女将は笑顔で奥に戻って行った。




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