学生寮
闘技場を後にした一行は学園と城下町の出入り口、第二門を目指していた。
総勢300名はいた受験生も50名足らずとなった。
ユウキ、アリサ、レナードの3人は一緒に移動しており、ユウキがレナードの綺麗な剣技が気になって聞いてみた。
「レナードさんはいつから剣技を?」
レナードは考えるような仕草をして答える。
「レナードで良いよ。んー、僕は物心ついたら父に教育されてた。」
「俺もユウキで良いよ。お父さんは剣術が好きなんだね。」
それを聞いてぽりぽり顔をかいて、困った顔をした。
「ドール家って知っているかな?武家なんだ。」
アリサが思いついたように答える。
「あ、王都領の最北地!ドールガルス城塞都市っていう名前だわ!」
レナードは頷いた。
「そう、ドールガルス城塞都市を収めるドール家の三男だよ。僕自身はあまり継承権に興味はないけどね。」
アリサが頭を下げようとして、ユウキに遮られた。
「そんな事したらレナードが困るよ?」
そしてレナードは微笑みながらユウキに告げた。
「こんなに嬉しいことはないよ。僕は君と友達になりたいと思って良かった。」
こうして王都ではじめての友人が出来た。
第二門に着くと通用門前の受付に行った。
「すみません、試験合格者ですが寮の申請をお願います。」
すると申請書を三枚出し手渡した。
「後ろの二人も早くおし。」
手早く書くと、名前と合格者を照らし合わせて確認する。
(この合格者名簿はどうやってきたんだ?)
承認印を押すと、通用門から中に入るように言われた。
「入って左が女子寮、右が男子寮だ。
双方異性の入寮は禁止されている。他にも細かい規則があるから後で熟読する事。」
そう言って『王都学園寮の手引き』を各自に渡された。
「それじゃアリサ、ここで一旦お別れだ。連絡手段がないから会うに会えないけど、集団行事のある時にね。」
そう言われてアリサは引き止めた。
「え、あ、ちょっと待って。んーあっそうだ!明日の朝8時にここで会おう!街に買い物に行こうよ!」
チラッとユウキを見て言った。
(僕は遠慮したほうがいいかな?)
ユウキの頭に???がたくさん浮かんだ。
「別にレナードも良いよな。何か問題が?」
アリサを見ると顔が真っ赤になっていた。レナードは苦笑いを浮かべて言った。
「君も大変だね。一緒して良いかな?」
それに間髪入れずにアリサは返事をする。
「勿論よ!何も問題ないわ!」
こうしてアリサと別々の道を進んだ。
寮に着くと眼鏡をかけた女性が声をかけてきた。
「入寮希望者ね。私は寮長のルイーゼです。
ここでは規則は絶対です。守らなければ罰則がありますので、手引きはよく読んでください。」
「それと2人とも同じ部屋に入りなさい。もう部屋の配列は決まっております。」
そう言われて、厳しそうな人だと思った。2人は荷物を置くと姿勢を正した。
「よろしくお願いします!」
それを見てニコリとすると「はい、よろしくね。」と答えた。
建物は3階まであるが、横にものすごく長い。
玄関に入るとロビーの正面に大階段があり2階まで繋がる。3階は2階から別の階段がある。
それぞれの階で左右に分かれて廊下が広がっており、2階が基本的に使う部屋となる。
1階が教師やルイーゼさんの部屋、3階は個室で特別らしい。
ユウキ達の部屋は2階の左側通路の奥だった。通路を見てレナードが呟いた。
「これは移動も大変だね。」
ユウキも同意した。
しかし部屋の中に入るとそんな考えは吹き飛んだ。
セミダブルのベッドが2つ。シャワールームとトイレが備え付けられていた。
それを見たユウキが堪らず漏らした。
「マジかよ・・すげぇな。」
しかし、レナードは気にした様子もなく荷物を置いて手を差し出した。
「ユウキ、これからよろしくね。」
それを見てユウキもにこやかに答える。
「ああ、よろしく頼む。」
2人は握手を交わした。




