入学試験(6)
闘技場に弓で用いる的のようなものが5個設置された。
「ルールは単純で5個ある標的の内、2つにファイアボールを当てれば合格だ。」
順次試験をクリアしていく。
ここまで来たものは魔術に関して相当な訓練を積んでいる。魔法文化が垣間見えた瞬間だった。
アリサが前に出ると皆注目した。
アリサは手を左から右に流すと、5つのファイアボールが宙に浮かぶ。
そして右手を前に突き出し、寸分違いなく標的に命中した。
2つの的が吹き飛び、残り3つも燃焼を続けている。
今までの受験生と桁違いの威力だが、アリサはその事に気がつかない。
「標的の強度が低いわ。あれじゃ中級のクラスターボムを使えば一発で粉微塵じゃない。」
アトリアは吹き飛んだ的を呆然と眺めながら、我に帰った。
「ーあぁ、合格!」
「最後にユウキはやるならどうぞ。標的は3つしか残ってないけど。」
そう言われてユウキは前に出る。
「ナーズさん、魔法じゃなくても良いですか?」
腕を組んだまま適当に言い流す。
「合格しているから好きにしたまえ。」
するとユウキはナーズにニコリとすると、バアァァァァン!!と言う乾いた音が辺りに響き渡った。
ユウキは変わらずスマイルだ。
音の方を見ると、的が消し飛んでいた。
苦笑いを浮かべながらナーズは言った。
「・・説明を。的の破壊報告を上官にしなくてはいけないのでね。」
ユウキはあっけらかんとした表情で告げた。
「魔法より速く動いて、攻撃して戻ってきました。
魔法は素晴らしいですけど、使う前にやられたら意味ないです。」
誰もが絶句していた。もはや魔力がないだのと騒ぐ愚か者は居なかった。
そこで男の笑い声が響き渡った。
「ククク、ハハハハ!魔法使えないからって力技で的壊すか普通。ヴハハハハ、お前馬鹿だろう!」
そう言ったのは団長だ。
「おいナーズ、報告はいらん。もっと強度の高い物を買わないとダメだ。」
そういうと、一瞬で闘技場中央のナーズの隣に移動してきた。
ユウキはそれを見て苦笑いした。
(やっぱり本気じゃなかったんだ。)
団長はユウキを見て強面でウィンクすると、腕を前で組んだ。
「諸君、俺は王都騎士団団長のバルトフェルド・ガークスだ。今年は曲者揃いだが、ヒヨッコには変わらない。
入学式は1週間後の朝七時から学園で執り行われる。
それと寮が申請すれば今日から使えるので、第二門の通用門の用務員に言えば良い。寮で制服も貸与される。
制服は大事にしろよ?貸与された日から着用が許される。」
ひときしり眺めた後、団長は満足したように頷くと 騎士剣を抜いた。
そして空に掲げる。
「諸君らの未来はこれからだ。精進せよ!!」
それに全員が武器を掲げた。
ユウキとアリサとレナードが、誰に言うでもなく揃って言葉を発した。
「「「ここからだ(わ)!!」」」
それを聞いて団長がニヤリと笑う。
(信念のあるものはやはり全然違うな。)
こうして無事に入学試験を通過した。




